第2章~直前で加入した登山経験者の仲間
富士山に行ってから2か月後、今度はメンバーを変えて御殿場口新5合目からの登頂を、再び挑む事にしました。
メンバーは、以前に同行した基樹君はいいとして、勝也君より体力がありそうな人はいないかと探してみました。
すると、同じクラスの中に登山経験のある体育会系の進君がいました。
進君は、高校の時に何回か登山に行った事がありましたが、富士山は初めてだと言っていました。
それで、ぼくが富士山登頂に向けたメンバーを勧誘すると、興味を示してくれたのでした。
勝也君には悪いけど、彼はもっと低い山に行く時のメンバーにしようと考え、今回は外す事にしました。
進君を今回のメンバーとして基樹君に紹介すると異論はなく、その3人で今度の週末に富士山に行く事になりました。
メンバーが強化して浮かれ気分でいると、登山の4日前に進君がぼくの実家に電話をしてきました。
「今度行く富士山なんだけどさ~」
「何、都合が悪くなって行けなくなったとか?」
「いや、そうじゃないんだけど、もう1人連れて来てもいいかな?」
「別に構わないけど、登山経験がある人?」
「うん、去年の夏に富士山に登頂したんだってさ」
「それは凄いな!」
「でしょう!」
「ところで、どんな知り合い?」
「バイト仲間の亜沙美さんって人だよ」
「へ~、進君の彼女なの?」
「そういう訳じゃないけど、週末に富士山の登頂を目指して登山に行くって言ったら話が盛り上がっちゃってさ~」
「連れて来るのはいいけど、車の中が狭くなるよ」
「その辺は大丈夫だよ、じゃあ当日よろしく頼むよ」
「了解、次は必ず登頂したいね、じゃあこれで」
そう言って、電話を切りました。
登山前日の夜、基樹君とぼくは初めて亜沙美さんと会いました。
背が高くてスラっとしていて、ショートヘアーでくりっとした目をしていました。
お互い初対面の挨拶をすると、基樹君は入れ込むように、
「明日は必ず登頂しましょう!」
と、言うと、皆は気合いが入りました。
前回の時と同じように墨田区にあるぼくの実家から、登山前日の夜に車で出発して深夜1時位に御殿場口新5合目の駐車場に到着しました。
この駐車場の時点で、標高1440メートルありました。
つい最近1回来たのもあって、朝の6時迄の仮眠が前に来た時より1時間長く出来ました。
軽食を取ってから、いよいよ登山を開始しました
皆が登頂目指して登山をしたところ、体育会系の事だけはあって進君はかなりいいペースで登って行きました。
亜沙美さんは登山経験が豊富なので、荷物が多いのに進君のすぐ後ろを登って行きました。
逆に、基樹君とぼくは付いて行くのがやっとでした。
8合目で、各自が持ってきたお弁当を食べたので、大分荷物が軽くなりました。
食事をしたので、多少なりとも皆元気を取り戻しました。
「でも、ここで落ち着いちゃダメだよな…」
「あと10分休んだら先に進もう」
ここまでは、予定時間を上回っていいペースで進んできました。
しかし、8合目に差し掛かった辺りから、かなり空気が薄れてきたので、そこからは4人共同じペースで登って行くことにしました。
8合目から9合目迄は何とか気力で登って行きましたが、9合目から先は少しでも息が上がると、すぐに休憩しないとかなりキツくなってきました。
そこで、亜沙美さんが持ってきていた何本かの酸素缶を、皆で吸い合って何とか高山病になるのを免れました。
足元も崩れやすい石が多く、不用意に石を落としてしまうと、下の方にいる登山者に当たってしまう恐れがありました。
なので、下にいる登山者の進み具合を見ながら慎重に進みました。
それでも、9号目の上の方迄登ると、登頂した登山者の歓喜の声が聞こえて来ました。
それを聞いて、ここまで来たら何としても登頂したいと思いました。
途中で何度か苦しい時がありましたが、この日は念願の登頂に成功しました。
そこで、何枚も記念撮影をしました。
ここは、お正月に富士山からの初日の出をテレビ中継する時に映っていた場所でした。