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最終話 結末

それから5年後、事態は最悪な方向へと動き始める。


「タシ! 今回も視察に…………」

皇子が目にした光景は、いつもと変わらない、のどかな農村……ではなかった。


そこには剣や槍で一方的に殺戮をする者たちがいた。


「皇子様! お逃げください!!」

皇子が来るたびに飴をくれた、優しかったお婆ちゃんは後ろから槍を突き刺されて殺された。


皇子は固まる。剣の鍛錬はそれなりにしてきたし、腕力にも自信はあった。が、実際に実戦としてその場に立つと、なんとも言えない恐怖が襲ってきた。


「あ……あ……」


目の前で顔馴染みの人々がどんどん殺されていく。男の人も女の人も、次々、次々に……


すると、遠くでタシの母親が殺されたのが見えた。

「……っ!」

そうだ、まだタシがきっと生きている。きっと……きっと……!


皇子はタシの家に向かう。早く……早く……!


「タシっ!!」

皇子は家の扉を勢いよく開ける。

すると、剣を持った男と尻もちをついて怯えているようなタシの姿があった。


「っ! やめろ!」

とっさに、皇子は持っていた剣で、男の背中を刺した。

男は血を吐いて倒れる。

「あ……ああ……」

タシは怯えていた。震えてこちらを見ている。初めて人が死んだところを見たのだ。当然の反応と言えるだろう。


「タシ……! 大丈夫か……?」

皇子は手を差し出す。

「は、い……大丈夫……です……」

タシはやはりまだ震えながらも、皇子の手を取る。


「……とりあえず逃げるのが先決だ……そうだ、逃げなければ……」

皇子は言う。初めて人を殺してしまったと言うショックで気が動転していたが、不安がっているタシをもっと怖がらせることがないように、必死に平気なふりをする。


「で、ですが……お父さんとお母さんが……」

タシは言う。


皇子の頭には、刺されたタシの母親の姿が目に浮かぶ。

「…………むりだ……」

「え?」

「お前の父上と母上のことは諦めろ。今はお前が助かることだけを考えるんだ……」

皇子は言う。


「っ! そんなの嫌です! お父さんとお母さんが死んでしまうなんて……それなら私も……死んでしまった方が……」

タシは言う。


「! お前! 馬鹿なことを言うな!!」

皇子は怒鳴る。

「っ!」

「誰に助けてもらったと思っている! この国の次期国王だぞ!? 国王に助けてもらったその命、そんな簡単に捨てるのか!」


「……すみま……せん……」

タシはまだ、怯えている。


「いい加減に……!」

皇子がそう怒鳴った時、近くで爆発のような音がした。


慌てて2人は家の外に出る。すると、近くの家々には火がついていた。

「……火災だ……」

周りには火をつけたらしき人々が騒いでいる。

「向こうに気を取られている間に……早く逃げなければ……」

そう、皇子が言う。

「はい…………」


すると、目の前に走ってくる者がいた。皇子の護衛の者である。くる途中に撒いてきたため、やっとの合流だ。

「あいつ! やっときたか! よし、タシ。このまま逃げれるぞ!」

「はい……」


そのまま、ふと目線を落としたタシには少し前方、地面に伏している父親が映った。


「あ……あぁ……あぁぁぁぁぁあ!」

タシの目からは涙が溢れた。


「ちょっ、おい!」

すると、奴らが振り返ってこちらを目視した。


「くそっ!」

「皇子様! お逃げください!」

護衛がやってくる。

が、それと同時程度のスピードで奴らもやってきた。血がついた槍や剣を手にして。


護衛の頭には、あまりの人数差から、戦っても長期戦にもつれることは明白であり皇子を守るだけならば、ここは即座に撤退すべきだと言う信号が出ていた。


「っ、失礼します!」

護衛は泣き崩れている少女をよそに、軽々と皇子を持ち上げる。


「おい! まて! タシも連れて……」

皇子は言いかける。

「無理です! 今は貴方様だけを逃すことを先決します!」

「おい! 貴様、命令が効かぬのか!」

「はい、聞けません! なのでここは逃げさせて頂きます」

「くそ、離せ! おい、タシ! 早く逃げろ! タシ!」

が、タシは絶望に暮れた顔をしていて声すらも届いていないようだった。


「タシ!!」




***





聞けば、あの殺戮をしていた軍団は皇子の命を狙った犯行だったらしい。だから、あの日、あの時……そもそもあの場所に、王子が来なければ……もしくはあの少女がいなければ、あんな惨劇は起きなかったそうだ。


あの惨劇での生存者は皇子と護衛2人のみだったと言われていた。




それから、大人になったワーリ・サルバドール王は国中の勢力を集めて、ただ1人の女性を探した。国中の力を持ってしても見つからなかった彼女はある時、忽然と姿を表した。


「お前は……」

ワーリは咄嗟に、弔いのため、手に持っていた白い花束を隠す。


ここはいつかの()()()。そこに、足枷と手枷をつけ、ボロボロの服を着た少女はいた。


「……なんで……ここにいるんですか、王様……もう、来ないでほしかったのに……」

少女は涙をこぼす。


「生きて……いたのか!」

ワーリは手枷の存在に気づく。

「これは……」

これは知っていた。ワーリが王に着く前から、ずっと前からあった、奴隷制度の象徴。奴隷の証だ。


「……なんでも……ないんです。別に……なにもないんです……」

少女は手を後ろに隠す。


「……決めた。俺が君を救う」

王は奴隷の少女を正妻にした。たくさんの批判が寄せられたが、暴君は、それを批判した全ての人を処刑した。


その後に正妻は一児を出産するが、ワーリ王はその子供と正妻をのちに追放している。理由は定かではないが、子供が生まれる前に母体にかけられた“魔法に関する呪い”が関連していると言う。


(その後は、きっとキャスリーンさんたちが聞いた通り。わたくしではない方を愛しただけのこと)



妊娠中、タシ・サルバドールは何者かに襲撃を受けている。護衛がいたため、無傷で済んだが、ワーリ王はそれを聞いた途端、大層激怒し、急に、一切とらないと言っていた側室を娶ったと言う。その後、正妻であるタシとその子供を追い出したのだ。



(王様は、多くを語ってはくれなかったから、分からないことも多いけれど、今はこれでいいのではないかと思ってしまう。


彼が暴君だったのは事実。横暴なことをして、たくさんの人を殺したのは事実です。

……けれど、彼が初めて人を殺してしまった、()()()までは、きっと、彼の誠実な心があったと、私は思うのです。私のために、人を殺すまでは……いえ、わたくしは、そうであってほしい……)



「母様……? 大丈夫ですか?」

カムレアがイザベラに寄ってくると、心配そうに言う。


「…………ええ。ありがとう、カムレア」

「はい……」



「おーい! カムレアー! お菓子、グラウが挑戦したんだって!」

「早くしねぇーと、俺たちだけで食っちまうぞー!」

遠くからリリシアとアーノルドの叫ぶ声が聞こえる。


「……まったく。ごめんなさい母様、行ってくるね」

「ええ。いってらっしゃい」


「うん!」

ここまで呼んでいただき、ありがとうございました! こんなに長編を書いたのは初めてで、書けたのも皆さんの応援のおかげだと、改めて思いました。


さて、本日、午後6時ごろに裏話も兼ねた、オマケも投稿するつもりですので、そちらも是非、よろしくお願いします!


面白かった! などと、思っていただけましたら、ブックマーク、星5評価、感想などをしてくださると次回作への励みにもなるし、とても嬉しいです! 特に感想はめっちゃ喜ぶので、一言だけでも是非!!


本当に、ありがとうございました!

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