第76話 前夜
最近、少し夜遅くに投稿してしまうことが増えます。ごめんなさい!
「……え? どう言うこと……?」
私は言う。カムレアの言ったことが理解できない。『オレはカムレア・ミルトレイではない』? 意味がわからない。今まで私が見てきたのは、紛れもなく、カムレア本人だった。
「嘘……だよね?」
カムレアは何も喋らない。それどころか、罪悪感に満ちたような顔で俯いている。
「…………なに、なんで喋らないの? 否定してよ……ねえ! カムレア!!」
私は思わず感情的になり、カムレアに掴みかかる。
「……正確に言うと、君が幼い頃からずっと会っていた、あの少年はオレだ。オレのままなんだ。けれど、もともと、最初からオレは『カムレア・ミルトレイ』と言う人物ではなかったんだ」
「……なにそれ……」
意味がわからないし、脳が追いつかない。頭がぐるぐると回る。
「……うまく理解ができないんだけど……でも、私と一緒にいてくれた貴方はずっと変わっていないってことはわかる」
私は真っ直ぐに正体不明のカムレアを見つめる。
「……そうだね。でもオレは君と初めてあった時から偽物だったんだ。だから……」
カムレアは続けようとするが、私はその言葉を遮った。
「…………っ! 勝手に偽者って決めつけないで! 私は貴方の言う本物のカムレアを知らない! だから、私やアーノルドや皆の中では、貴方が本物なんだよ……!」
私は言う。
「! はは、本当にいい仲間を持ったな。オレは……。でもいいの? これからも誰かもわからないやつと一緒に行動することになるんだよ? 君は。オレだったら追放とか、するけどなぁ〜」
カムレアは笑う。
「別に構わない。だってカムレアは絶対に私たちに危害を加えたりなんかしない」
私は言う。
「……本当にそう思ってるんだ。君ってつくづく馬鹿だね……」
カムレアはため息をつく。
「なっ、ばっ!?」
「はははは、じゃあやっぱりオレも、手伝うよ、一緒に王城にも行ってあげる」
「あ、ありがとう……」
「ん、じゃあ、またね〜」
カムレアは去ろうとする。
「え!? ちょっ!」
「……ん?」
「偽物の意味と経緯とかは教えてくれないの!?」
「…………教えるねぇ。うん、いいよ、城から無事に生還した後になら話してあげよう」
「え、えぇ!?」
気になるんですけどーーー!
「まあ君たちはともかく、オレは足を踏み入れた以上、絶対に城で死ぬのは確定しているからね……」
カムレアはボソリと呟いた。
「なんか言った?」
「いーや、なんでも〜」
「ただ……その選択を後悔しないでね」
「??? 意味がわかんないんだけど、大丈夫だよ。絶対、後悔しない!」
私は胸を張る。
「はは、リーンってやっぱり面白いね」
「なっ!? どういうこと……?」
私とカムレアは家に戻る。
「あー戻ってきたな。お前ら2人で何話してたんだよ〜」
アーノルドは言う。
言わない方がいい……んだよね?
「いや……別に何も……」
私は目を逸らす。
「そうだよー。ただ雑談をしただけさ」
カムレアは笑顔で言う。
「そっか、………………え!?」
アーノルドはカムレアを二度見する。
「ね、姉さん……。カムレアが……俺に敬語を使わなくなった……!」
アーノルドは目を輝かせている。
「ヨカッタネェ……」
「ああ! な、何があったんだ? カムレア?」
「心境の変化というやつだね」
「??? まあ、意味わからんけど、よかったー」
カムレアはニコニコしている。
いつものカムレアなんだけど少し違うような……もしかして今まで本性を隠してたのかな……というか気になる……! なに? 幼い頃から偽者って! 死ぬほど気になること言うのやめてくれないかな!?
私が真相を知るためにも、絶対に城の中でも生き残らないと……。
***
「後、3時間後はもう明日なんだ……」
私はご飯を食べながら言う。
『今日は最後の食卓になるかも』と、不穏なことをガルダさんが言い出したため、私たちは皆でご飯を食べることにした。
「信じられないね、明後日、城に攻めるつもりだったけれど、明日の準備が終わり次第だから、明日に攻めると言う可能性も十分あるわけで……」
カムレアは言う。
「そうだな〜。俺は弱いからただの足手纏いにしかならないけどごめんな」
アーノルドは言う。
「いえ、アーノルド様がいらっしゃったら、王族としてワーリ王と話ができるかもしれません。なので同行されるべきかと私はは思いますね」
ローガンさんは言う。
「そうですよ……! とにかく、儂は本当に足手纏いにしかならないので貴方達を届けたら城前で村人たちと待機をしていますが、アーノルド様ならば少しは戦えるでしょうし……」
ガルダさんは言う。
「一ついいですか?」
グラウが手を挙げた。
「どうしたの?」
「その……もしも城に、聖騎士団の3番隊の隊長……レーンワイズ家の者がいたら、我に相手をさせて欲しいのです」
「……別にいいけど……1人で大丈夫?」
私は言う。
「ええ。彼女らの弱点ならば我が一番よく知っています。確実に殺して、この手で償いを……」
グラウの手が震え出した。目は虚で顔は青ざめている。
「…………」
なんと声をかけていいのか分からなくて、私たちは少し躊躇う。
「……失礼しました。なんでもありません。では、やはり我にお任せください」
「…………うん、よろしくね」
「……はい」
皆、どこか疑問を抱えながら、最終決戦の当日へとなった。
続きは明後日です!