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第73話 財布

遅くなりました。ごめんなさい!

翌日


この日から暇になった私とローガンさんは、先に村に帰ることにした。


「ガルダさんって言う人が居ないと村からの出入りができないので、ある程度この街を満喫したら私が通信魔法でガルダさんを呼びますね」

リーンは言う。


「ありがとうございます」

「いえいえ!」

そんなことを言いながら、私とアリアナが幼い頃に暮らしていた街並みを歩く。国が変わったからと言って、そこまで変化はなかったことが嬉しいような、アリアナとの思い出を思い出して、寂しいような……


「リーン様」

「どうしました?」

「この……クッキーとやらを食べてみたいです……」

ローガンさんは恥ずかしそうに、お店のクッキーを指さした。


「……え? クッキー、食べたことないんですか?」

私は驚く。


「はい……恥ずかしながら……」

ローガンさん……いや、中性顔の美青年は照れながら言う。


「……………………いいですよ……たくさん食べてください……」

ダメージがデカイ顔だぜ……と思いながら、私は顔を逸らし、お金の入った小包を渡そうと……


「……あれ?」


「どうされましたか?」

ローガンさんは言う。


「お金が入った小包が……ない、です……」

私はポケットやカバンの全てのポケットをあさる。が、いつも入っているところにもなければ、ポケットにもない。


「ごめんなさい、落としちゃった見たいで……」

すると、ローガンさんは言う。


「…………リーン様、おかしいと思いませんか?」

「え?」

「あの者です」

ローガンさんの目線の先には1人の男がいる。その男に目をやると、ほりが深い顔立ちの背の高い男だった。


「……どう思います?」

ローガンさんは言う。


「そうですね…………やけにキョロキョロしていますね。おまけに前屈み重心でポケットに手を突っ込んでいます」


「あの方、さっき私たちの前にやってきたのです。もしかしたら、リーン様の財布はあの方にすられたのでは……?」


「そうかもしれないけど、流石になんの証拠もなしだと逃げられちゃいますよね……」


「はい。なので、次にあの方が犯行を行う時まで、彼を尾行します。そして、犯行に及んだ瞬間、私たちが取り押さえる。まさに、『現行犯逮捕』というやつです!!」

ローガンさんは目を輝かせる。


……なんか、ローガンさんって可愛い……


「? リーン様?」

「はっ、はい!!」

「それでよろしいでしょうか……」

ローガンさんは不安そうに聞く。


「ええ、もちろんです! なんとかなります!」

私は笑って言った。





***





「動きませんね……」

私はレンガの家の影から例の男を監視しながら言う。


「そうですね……」

ローガンさんはレンガに手をかける。

「……もう出ていっていいですかね??」

私は痺れを切らす。


「ちょっ! だめですよ!」

ローガンさんは止める。


すると、

「…………あ」


男は、キョロキョロとするのをやめ、人をかき分けながら右に進み始めた。真っ直ぐに、ある女の人に向かっていっている。


「これ来たんじゃない!?」

「さっきもリーン様のような女性を狙ったわけですし、あり得ますね。でも、あの時は私もいたのですが……」


いや、多分あの人、ローガンさんを女の人だと勘違いしたんじゃないかな……

そう言おうとしたが、気づいていなかったようなのでぐっと抑える。


「さ、いきますよ!」

「はい!」


すると、男はさも当たり前のように、女性の服のポケットから手早く財布を抜き取った。


「っ!!」

私は人をかき分け、男の元に行く。ローガンさんは女性をその場に留める。


「すみません、お財布ってなくしていませんか?」

ローガンさんが聞いているのを横目に、私は財布を握っている男の手を取る。


「……は?」

「確保っ!!」

私は男を地面に叩きつける。我ながら警察官っぽかったかも……なんて思っている。

「がっ!」


用意しておいた縄で手足を縛り、女性の財布を取り上げる。

「あっ、おい!」

「おいじゃないでしょ! これ、あなたのじゃないよね?」

私は言う。


すると、ローガンさんが女性を連れてきてくれた。

「これ、貴女のですよね?」

私は言う。

「はっ、はい!! ありがとうございます!!」

おしゃれな女の人は、顔を真っ赤にして言う。


まあ、恥ずかしいよね〜


「ではどうぞー」

私は財布を手渡す。

「ありがとうございます!」


女の人はお礼を言うと、そのまま帰って行った。


「…………さて、貴方、なんでこんなことをしたの!」

私は言う。


「うるせぇな!」

男は怒鳴る。


「……リーン様、少しお下がりください」

ローガンさんは前に出る。

「おっ、ありがとうございます……」


久しぶりに貴族扱いされた! 珍しい!


「貴方の事情などどうでもいい。とにかく、ほかに取った財布を出しなさい」

ローガンさんは言う。


「…………ちっ、俺の服の裏側のポケットに入ってるぞ。俺は手足が縛られてて取れねぇんだ。取ってくれよ、そこの女ぁ!」

男はローガンさんを見て言う。


「……え?」

ローガンさんは言う。


あちゃー……


「い、今、私を見て、女……と?」

ローガンさんは動揺する。


「…………いや、あの……」

私は否定しようとする。


「…………………………」

ローガンさんの顔は暗い。つか、暗すぎて表情がわからない。


一応この人、奥さんも息子もいたんだよね……。れっきとした男の人だよ……





***





「やはり、“私”ではなく“俺”とかの方がいいのでしょうか……」

ローガンさんは項垂れる。


「まっ、まあ、さっきあの男の人を差し出しに行った時に対応してくれた憲兵さんは、ローガンさんのこと男性だって解ってたっぽいですし、大丈夫ですよ……」

私は言う。


「……やっぱり、一人称を変えるべきかもしれません……。喋り方も、敬語ではなくアーノルド様のような喋り方に……」


いや、それはそれで、キャラの個性がアーノルドと同じになるからやめてーー!!

同じ個性のキャラが出ると扱いづらいんだよ!!


「いや、ローガンさんは今のままでいいんじゃないですか? 奥さんも、今のままのローガンさんが好きだったんだと思いますし!」

私は笑う。


「…………そう、ですね。ありがとうございます」

ローガンさんは意表をつかれたような、少し驚いたような表情を見せてから、微笑んだ。


あっ、相変わらず美形……!

ありがとうございました! 続きは明日です!

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