第66話 警戒
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「……ん?」
アイラが目を覚ますと、そこは見慣れぬ木の天井だった。
「あ、起きたか?」
アーノルドがこちらにやってくる。
「お前な……いいか? 今度から、できないことはちゃんとできないってはっきり言うんだぞ!?」
「……へ?」
(そうだ、そう言えば僕は……)
「ごめんなさい……」
アイラは言う。
「僕が女だからって、家族は昔から戦わせてくれなかったんだ……だから、その……」
アイラは泣きそうな顔で言う。
「……はぁ、まあ無事だったんだし、別にいいけどな、こいつがいなかったら、俺たちボコボコにされてたな」
アーノルドはそう言って笑う。
「こいつ……?」
アイラは上半身だけ起き上がり、アーノルドの後ろを見る。するとそこには、あの時襲われていた少女がいた。
「あ、君はあの時の……!」
アイラは言う。
「あー、こんにちは……、その、ごめんなさい、私あの時、今日の宿に泊まるお金を考えてて、周りを見てなかったんです……だから、知らぬ間に男の人たちに囲まれて、いつもならもっと迅速に対応できたんですけど……危険に晒してしまい申し訳ないです……」
リーンはおどおどとしながら言う。
(義姉様がおどおどしているのって珍しいな……)
アーノルドは思う。
「……もしかして、あの男たちを倒したのって、貴女なのか?」
アイラは言う。
(なんか、この人、軍人さんみたいな格好だな……そういうコスプレ? いや、この時代にコスプレはないのかな?)
リーンはそんなことを考えていた。
「え? あ、はい」
リーンは言う。
「……凄いな! かっこいいじゃないか!」
アイラは目をキラキラさせて言う。
「そ、そうですかね?」
リーンは少し、満更でもなさそうだ。
「なあ、義……」
姉様と続けようとしたところをリーンに遮られる。
「あの、ここで様とか使うと結構やばいやつだと思われるし、姉さんでいいよ、つーか普通に名前で呼んで欲しいんだけど……」
リーンは小声で言う。
「というか、こう言う潜入とかしている時は、偽名使ってるから、そっちで呼んで!」
「……わかった、レイラ……」
少し不服そうにアーノルドは言う。
「じゃあ今度からは姉さんって呼ぶな!」
今度は小声で言い、にっこりと笑った。
「……あー、うん」
(結局、姉呼びかい!)
「……アルフィー、この人とは知り合いなのか?」
アイラは聞く。
(アル? もしかしてアーノルド、アルフィーって名乗ってるの……? なんでアルフィーなのよ……! なんか笑えてくる……)
リーンは少し笑う。
「あ、ああ、こいつは……えっと、レイラって言うんだ」
アーノルドは言う。
「レイラと言います、よろしくお願いします……」
リーンは言う。
「……ふぅん、そうか」
「……なんでここにいるのよ、アーノルド」
リーンは小声で言う。
「ここに調査に来たんだよ、仕事でな! 姉さんこそ、どうしてここにいるんだよ? ガルシア邸に行くんじゃなかったのか?」
アーノルドも小声で言う。
「ここの剣闘場で出会った人と、この街で待ち合わせしているのよ、あと二日でね!」
「へぇ、そういえばたしかに、ここは剣闘場があったらしいもんな。でも最近潰れたって……もしかして姉さんがやったのか!?」
「ぎくっ! じ、実はね……」
リーンはバツが悪そうに目を逸らす。
「目立つような行動はなるべく避けろって言われただろ?」
「あはは、」
2人でこそこそ話していたのが癇に障ったアイラは、少し強めの口調でリーンに聞く。
「お前、アルフィーとはどのような関係だ」
「……………………え?」
(まって、まずいどうしよう! 『もと旦那の弟です!』って正直に言う? いやだめだ! 絶対に引かれる! となると、これしかない!)
「え、と、お友達です!」
渾身の嘘をついたリーンは、『ごまかしてやったぜ!』と言わんばかりにアーノルドを自慢げに見つめる。
「……」
(姉さん、『誤魔化してやったぜ!』って言いたいんだろうなぁ〜)
アーノルドはそんなことを考えながら、呑気に2人の会話を眺めている。
「……そうか、ご友人とは。これは失礼を働いた。僕は彼の同僚、アイラ・シュリデンだ。よろしく頼む」
アイラは言う。
「……しゅりでん……?」
(………………え、シュリデンって、あのシュリデン!? 昨日カムレアが言ってた? 聖騎士団の一番隊隊長の苗字じゃん!? ……ってことは、もしかして、この人が、聖騎士団の一番隊隊長……!)
「……アーノル……うそ! アルフィー? だっけ、その人から離れて!」
リーンは言う。
「え? なんでだ?」
(昨日に続いてまた今日も隊長に会うなんて……! まずい、聖騎士団の二番隊の隊長でさえ、あの強さだったんだもん、戦えないアーノルドを抱えて一番隊の隊長と戦うことになってしまうなんて……! とりあえず、ここは逃げないと……!)
「おい! 離せって! レイラ!? なにか勘違いしていないか!?」
(どうすべきか……あれ? そういえば、この人、さっき男の人たちに、瞬殺されていたような……? もしかして、隊長だけどめっちゃ弱い? 漫画とかでよくあるやつ?)
「え、あの……」
「いいから! 一旦落ち着いて話を聞け、レイラ!!」
アーノルドが制する。
「あ、ごめん……」
「まあいいけど、どうしたんだよ」
離れてなんて言われたショックで、アイラは固まっている。
「え、だって、この人聖騎士団の1番隊隊長なんじゃ……」
***
「ごめんなさい! まさか隊長の妹さんだったなんて……」
リーンは謝る。
「ああ、別に構わない。君には助けてもらったわけだしな」
アイラは言う。
(……あれ? 隊長の妹だとしても、危険なのは変わりがないような……まあいっか)
「では、僕は少々、外に出て聞き込みをしてくる」
アイラは言う。
「じゃあ俺も言ったほうが……」
「いいんだ、久しぶりの再会なのだろう。積もる話でもしていてくれ」
アイラはそう言って、そのまま部屋を出て行った。
『……いや、まだ別れてから一週間とちょっとしか経ってないんだけど……』
リーンとアーノルドはそう思ったが、ぐっと心にしまう。
「……なあ、聞いてくれよ姉さん」
アーノルドは言う。
「どうしたの?」
「俺な、聖騎士団の一番隊の隊長と友達になったんだ!」
アーノルドはキラキラした目で言う。
「……え!?」
(マジなんだ……私はあの人とわかりあうの、難しそうだな……)
「実は私も二番隊の隊長に会ったんだよね……」
「え、まじで!?」
「そう! めっちゃ強かったの!」
「いきなり手合わせしてるし……そっちは血気盛んだな……」
「えへへ」
「おい姉さん! 今のは褒めてねえぞ!?」
ありがとうございました! 続きは明後日!