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第62話 ソレイア

総合ポイントが200を越えました。ありがとうございます! これからも、よろしくお願いします!

 その日から、アシヴァルは毎日、この資料管理室に訪れるようになった。

「やっほー! シヴァルくんがやってきたぞー!!」

 アシヴァルはアーノルドに扉を開けてもらい、るんるんとスキップをしながら部屋の中に入る。


「また来たのか、シヴァル……」

 アーノルドは呆れるように言う。そのまま、手をアシヴァルの方に突き出す。


「まあまあ、まだ三日前と一昨日と昨日しか来てないじゃないか! ……ん? この手はなんだい? アルくん」

 アシヴァルは言う。


「お土産。昨日も持って来たじゃん、有るだろ?」

 アーノルドは笑う。


「……っ、い、一応、君のことだから、そう言うだろうと思ってね、持っては来たけれど……」

 アシヴァルはそう言い、ポケットに手を突っ込む。


「おー! やっぱ持ってきてるよな〜、気がきくじゃん!」

 アーノルドは言う。


「……うーん……」

 少し尺なのか、アシヴァルは渋々とポケットの中に入っていたチョコレートを手渡す。


「チョコレートじゃん!? 珍し、久しぶりに見たわ」

 アーノルドは目を輝かせる。


 この時代のチョコレートは貴重で、お金持ちしか食べれなかったのだ。


「? アルくん、食べたことあるんだ。没落貴族なのに?」

 アシヴァルは言う。


「!」

(やっちまった〜! つい、王室時代の話を……)


「まあ……な、あれだ、まだ没落する前、よくお父様が買ってきてくれたんだよ……」

 アーノルドは懐かしそうな顔をする。


(まあ、嘘はついてねぇ! 買ってきたのは王様(お父様)じゃなくて、使用人だけどな!)


「……へえ、いいお父さんだね、その、お父さんは、もう……?」

 アシヴァルは言う。


「ああ、もうとっくの昔に死んじまってるよ」

 アーノルドは笑う。


「……そうかい。ウチもね、特殊な家系だから、もう父はこの世にはいないんだ」

 アシヴァルは壁に寄りかかる。


「そうなのか……」


「うん、それにね、()()()()()()()()()()()


「そ、それは……?」


「ウチの家系はね、代々が受け継ぐ……いや、()()()()()()()()()()()()職業があって、それを親から受け継ぐ時、先代を殺す決まりがあるんだ」


「な、なんだよ、それ……」


「はは、でも、結構あり得ることさ。先代を殺すことで、『完全になる』とか……。馬鹿だよね」 

 アシヴァルは笑う。


「……」


「さぁて! 暗い話になっちゃったね! チョコレート、食べて!」

 アシヴァルは言う。


「お、おう……」

 アーノルドは言われたままに、チョコレートを口に運ぶ。


「……! うまい……」

 久しぶりに食べた好物は、とても美味しかったけれど、それを素直に楽しめるような気持ちではなかった。


(……それにしても、この味、なにか懐かしい……)


「うんうん、美味しいだろう、そうだろう! このチョコレートはね……」

 アシヴァルはひたすらチョコレートについて語っている。


「……そう、なのか……」

(俺も甘いものは好きだが、こいつは重度だな……)


「うん!」


「あ、もうすぐ担当が交代の時間だから、バレないように、早く帰れ」

 アーノルドは言う。


「もうそんな時間か! わかった! またね、アル!」

 そのまま、アシヴァルは帰って行った。





 ***




「つっっかれた〜」

 アーノルドはベッドに倒れ込む。

(でも、明日も仕事あるんだよな……それに、明後日は初の、アイツの付き人……。絶対重労働だろうな。早く寝よう……)




 ***




 夢を見ているのだろうか。見覚えのない館の周りを14歳ぐらいの少年が走っている。誰かを探しているのか。


 すると、その少年は薔薇が咲き誇る庭園でお茶をしている女性に声をかけた。


「お母様、明日で俺も、15歳ですね!」


「……ええ……そうね……」

 母と呼ばれた女性は俯く。明らかに顔色が悪い。

「おかーたん!」

 母と呼ばれた女性の下には5歳程度の子供もいた。


「……お母様?」

「いえ、なんでもないのよ……ただ、私がこの館と名前を捨てて逃げると言ったら、貴方は嫌かしら?」


「……嫌です……。だって、今まで練習も、頑張ってきて、明日、やっとです……捨てるなんて、嫌です!」

 少年は言い、何処かへ走って行ってしまった。


(なんだ……これ……)

 アーノルドは思う。ここはどこで彼らは何者なのだろうか。


 急に、空がオレンジ色になって、すぐに暗くなり、青くなった。


(……もしかして、1日経ったってことか……?)


 すると、先程の少年が着飾って、馬車に乗り込んで行くのが見えた。


 そのまま、目の前に写っている場所がぐにゃりとして変わる。

(な、なんなんだ……?)


 そこは、人がたくさん注目している舞台の上だった。舞台といっても、木で出来た周りより少し高いだけの代物だ。人々はざわざわと話している。


 すると、王冠をかぶった者が出てきた。青い色の髪の高身長の男だった。すると、人々からは歓声が溢れる。


『ワーリ様〜!』



(ワーリ……って、サルバドール国の現在の王のことじゃねぇか……なんでワーリが……)


「では、これをもって、戴冠式を開始する!」

 ワーリは叫ぶ。


 すると、先程着飾って馬車に乗っていた少年が出てくる。隣には顔が似ている男がいる。父親だろうか。


 よく、人々の中を観察すると、先程の母親と5歳程度の子供も緊張した面持ちでこちらを見ていた。母親の目からは涙が流れ落ちそうだ。


(なんなんだ、これ……意味わかんねぇ……)


「……見ててね、お父様……!」

 少年は涙を堪えている。それを、ワーリは横目で眺めている。『決して、人前で泣くな』と言っているような……


「ああ、今までありがとうな、愛しているよ……」

 父と呼ばれた男も、決して涙は流さないが、もうすでに、泣きそうであった。


 父親は手足を縛られて、膝立ちをさせられる。息子は、王から剣を授かっている。


「ごめんな……()()()()()

 父親はつぶやく。


(……! アシヴァルだって……!?)

 夕方、彼が言っていた言葉がフラッシュバックする。


『父親は僕が殺した』


「まさか……

 おい、やめろよ……おい、おい……!!」

 アーノルドは叫ぶが、その言葉は誰にも届かない。


 すると、息子は剣を振りかざし……

「待って!」

 声の主は母親だった。乱入してきたのだ。5歳程度の子供とは手を繋いでいた。


「貴様! 神聖な儀式を邪魔するとは……! 死罪に値する!」

 ワーリは怒鳴る。


「待ってください……お願いです……せめて、夫を殺さないで……」

 すると、ワーリは母親を殺した。皆の目の前で。家族の目の前で、子供の目の前で。


 残っているのは、未だ子供と繋いでいる片方の手だけ。


「あ……あああああああああああああ! 早く、早く殺してくれ……!」

 父親は懇願する。


 息子は少し躊躇うように周りを見回す。

「早く殺してくれと言う、お前の父親の最後の望みも聞いてやらないのか? お前は」

 ワーリは息子の目の前でぼそりと言う。


「……あ、ああ、あ……そうだ……」

 息子はもう一度、剣を振りかざす。


「おい、やめろ! やめろ!」

 そんなアーノルドの叫びも虚しく少しした後、『ドス』『べちゃ』という音が聞こえた。

ありがとうございました! 続きは明後日です

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