第57話 クラスメイト
今日は少し早めの投稿です!
私は口を開く。
「では、一つ聞きますね。貴女が先程おっしゃっていた、『隣国の貴族が反乱を目論んでいる』といううわさはどこで聞いたものですか?」
「それは……割と最近よ。たしか、私の出身地の町だったかしら。近くの村にそう言う連中が住んでいるとか……」
「!」
ということは、私たちのことではない……? もしかしたら、行ってみる価値があるかも知れない……!
「その、村って……」
「あ、ええ。ナリソア村っていう村ね。ここよりずっと南にあるところよ」
保健教諭は言う。
「そうですか。ありがとうございます」
私がそう言うと、タイミングを見計らっていたようで、カムレアが目を覚ますようにベッドから降りた。
「あらノア君。目が覚めたのね」
「はい先生。ありがとうございます」
カムレアはにっこりと笑うと、私の手を引っ張って保健室の外に出た。
「あ、ちょっと……先生、ありがとうございました!」
私がそう言い残したのと同時にカムレアが扉を閉める。
「どうしたの?」
私は小声で言う。
「君たちの話、聞いていたんだよ! リーンは聞いたことあった?」
「叛逆軍がいるって言う話? ううん。聞いたことない」
私は首を振る。
「だよね。オレもなんだけど、おかしくない?」
「なにが?」
「だって、近くの町で噂されるぐらいには有名な話なんだから、誰かが憲兵とかに通報してもおかしくないし……というか、普通なら通報するだろ……?」
「た、たしかに。近くに叛逆軍が潜んでいるとか、怖すぎるもんね……」
私は言う。
「そう……。だから、なにか、通報させないようにしているんじゃないかなって思ったんだけど……」
カムレアは頭に手を当てる。
「ってことは、近くの町の人々を全員脅している……とか?」
私は言う。
「でも、そうだったとしたら、彼女がペラペラと話すのはおかしいじゃないか」
「あー、たしかに。口止めされているなら私たちにも言わないよね?」
「だから、きっとおかしいのは、その村ではなくて、彼女の出身地のあの町の方なんだ。あくまで予想でしかないけれどね」
カムレアは言う。
「たしかに。町っていうならそれぐらい大きいところなわけだし、そんなに大勢いる中で、1人も通報とか、他の町とかに情報を話さないのはおかしいもんね」
「今度行ってみようか」
「うん。私も気になってきた!」
その時、あの三人衆がやってきた。
「心配したぞ!」
「大丈夫でしたか?」
「ご無事のようでなによりですわ!」
「あー、ありがとうございます」
私は言う。
「さて、ノア、クラスの皆は教室に集めておいたぞ。話すなら今だ」
サペは言う。
『?』
なんのこと? と、私とカムレアは目配せする。
「もしかして、お忘れになられましたの!?」
ナミは驚いている。
「あ! そっか! オレの家の事情を話すんだった!」
カムレアは思い出したようだ。
あー、なんかそんなことあったね。
「じゃあ、行こうか!」
カムレアは言う。
『おー!』
あ、そういえば入学手続き、まだしてねぇや。ま、いっか。
***
「皆、オレの話を聞いて欲しい」
カムレアは言う。
「なんだアイツ」
「大して偉い貴族なわけでもないのに、でしゃばってやがるぜ」
男たちは気に入らなそうにカムレアを見て嘲笑っている。
やっぱりそうなるよね、だってイケメンだし。貴族って口外してないし。『でも、勘違いしないでね。カムレアはアンタたちよりも、もっと凄い家柄だから』と言う言葉が口から出かけたが、グッと堪える。
「ごめん! 私からのお願い! 皆、静かにノア君のお話を聞いて、協力してあげて欲しいの!」
私は言う。
「だ、誰だあの子!」
「可愛い!」
「あの子のためだ! 聞かないと!」
男どもはざわつく。
はぁ、高階級のやつらってホントに単純……。
「ありがと、リーン」
カムレアは小声で言う。
「うん!」
「……オレは代々騎士をしている、自分の家から逃げてきたんだ。だから、明日から来る騎士たちに会いたくない。会ったらきっと、連れ戻されてしまうからだ。だから、明日はオレじゃない奴がオレのフリをしてやってくる。それで、君たちは知らないふりをしてくれないか?」
カムレアは言う。
クラスの人々は顔を見合わせる。
「……俺は賛成」
1人の男が手をあげる。さっきから、端っこに座っていた、一匹狼感がすごいイケメン君だ。
「じゃ、じゃあ俺も……」
「僕も……」
ぞくぞくと手が上がって行く。そして、全員の手が上がった。
「皆、ありがとう!」
カムレアは言う。
私も自然と笑顔になる。
よかった……!
後は、面白がって告げ口とかするやつがいるかどうかだけど……。
私はカムレアの方をチラリと見る。すると、彼はそんなこと、全く気にしていないようだった。
はぁ、私の心が汚れすぎなのかなぁ……。
まあいっか、バレたらバレた時!
「いやぁ、よかったね。皆、賛同してくれて」
私は言う。
「うん、それもリーンのおかげだよ。ありがとう」
カムレアは笑う。
「……うん、私こそ、ありがとう……」
私たちは顔を見合わせて笑い合う。
「3人もありがとうございます」
カムレアは言う。
「ああ、いいってことよ!」
「は、はい……」
「わたくしも構いませんわ!」
いやぁ〜、平和だなあ……。
すると、急に、私の頭に雷が落ちたような感覚に陥った。
「あ……!」
次は明後日です