第56話 圧倒的な実力
遅くなってごめんなさい!最近色々あって、送れました!
「おい、クソ野郎……なぜお前がここにいるんだ?」
私は言う。圧倒的な威圧感に少し、手が震える。
「はは! 貴様もそのような言葉を使うようになったか! 俺は今でも忘れんぞ、貴様と初めて出会った時をな! あんなやつは初めてだったからな!」
そう言うと、奴はゆっくり振り向いた。
「……ラールド……」
私は身構える。
どうしよう、どうしようどうしよう! このままだと、絶対に助からない。絶対に奴に、私もカムレアも殺される……!
頭の中が真っ白で、何も考えられない。
「おお、そう戦闘態勢に入るな。今日は俺は戦う気分ではないんだ……」
奴はそう言う。
「……!」
いや、ダメだよ私……。きっと、油断させたところで襲いかかってくるんだから。少しでも緊張を解くな! ほんの少しの気の緩みだけで、こいつには十分な隙ができる……!
「ふむ、本心なのだが……。まあいいだろう。このままでも。では一つ、本題に入らせてもらおうか。貴様ら、何故こんなところにいるのだ? そこまでして戦うべきことがあるのか?」
ラールドは疑問そうに言う。
「……っ!」
こいつ、こいつこいつ……! 分かってないんだ。こいつ自身がどんなに酷いことをしたのか、私たちがどんなに辛い思いをしたのかが……!
「……ふむ、だんまりか。ではもう一つ質問しよう。……アーノルド・アークリーはどうした」
「……っ!」
しまった。そうだった。だってこいつは私がアーノルドを攫って行ったことを知っている。なのに、ここにいないのはおかしい……!
……まずい。ここで変な失言をして、アーノルドが城に潜伏していることがバレたら、やつは城に行って、アーノルドを殺すだろう。こんなことは容易に考えられることだ……。
「貴様のような、人の気持ちも分からないようなやつに教える義理はない……!」
私は言う。これでどうか、お願い、帰って……!
「……ふむ、まあいいだろう。いずれ貴様とはまた、合間見えそうだからな」
ラールドはそう言うと、そのまま窓から下に飛び降りて消えた。
「……はぁ、はぁ……」
私は座り込む。
「か、む、れあ……大丈夫?」
すると、目の下が黒ずんでいるカムレアは口を開く。
「ああ、命に別状は……無さそうだよ……」
「……あれ、足が動かないや……。なんだろう……。助けを呼びに行かないと行けないのに……足が……」
すると、誰かが駆け足で何か叫びながら、部屋に入ってくるのが見えた。
ああ、よかった……。
そこで、私は意識を失った。
***
「ラールド様! おかえりなさいませ!」
兵士の1人が言う。
「ああ」
俺は椅子に座る。
「……俺も、人の悲しみは理解しているつもりだがな……」
そう呟くと、
「俺は寝る。何もなかったと王に報告するのはお前だ。行ってこい」
と、その兵士に向かって言うと、そのまま眠りについた。
***
私は目を覚ました。いるのは保健室。隣のベッドにはカムレアがまだ寝ていた。
「……無事でよかったぁ……」
私はつぶやく。すると、「おお、起きたか」と言う声と同時に、あの熱血先生と保健教諭が出てきた。
「あ、こんにちは先生。もしかして、私たちを運んでくださったのって、先生ですか?」
私は上半身だけ体を起こす。
「……ああ、驚いたぞ。お前たちに声をかけたら逃げられたから追って校長室に行ったら損壊していて、何者かがいた跡があって、お前たちが倒れていたんだからな」
熱血先生は言う。
「ああ、心配おかけしました……。ありがとうございます」
「それはそうとして、あの、扉とかが焼けていたのは、その、謎の侵入者のせいなんだよな?」
あー、この質問きちゃったかーーー。どうしよう。これって賠償問題とかになるのかなーーー。
「ああ、はい。その、侵入者が燃やしていきましたよ。はは」
私は言う。どうせラールドだし。そのくらいは許せ!
「そうか、そうだよな……! くそ、許せねぇ!」
先生は自分の太ももを叩く。
「俺がもう少し早くに着いていれば……! ごめんな……」
先生は今にも泣きそうだ。
「落ち着いてください先生。こうして2人とも無事だった訳ですし……」
保健教諭の女の人がなだめている。
いやぁ、先生がいても殺されてたかもだし、先生も守りながら戦うとかの方が辛かったかは、下手に先生がいない方がよかったかもです……。
内心はそう思ったが、ぐっと心に留めて置いた。
つーか、先生めっちゃいい人やん……。(ほぼ)初対面の私のためにここまでしてくれるとか……。
「それで、その侵入者の特徴を教えてくれないか?」
「はい」
えっと、下手に『名前知ってます』とか言ったら、ラールドに『なぜうちの生徒を襲ったか』って聞く話になって、『じゃあ、あのラールド様が倒そうとした相手ってことは、こいつら怪しくね??』ってなる可能性大だ!
「えっと、結構貴族のような格好をしていました。腰には剣があって、服もなんか、キラキラしているようなやつでした。ちょび髭を生やしていました」
めっちゃ私の中の『貴族のイメージ』を語ってみた。
「そうか……」
先生は頭を悩ませる。
うんうん。情報が少ないよね。これじゃあ、犯人はわかるまい。ごめんね、先生。
「それって……! もしかして、あれじゃないですか!?」
保健教諭の先生は手で口を押さえる。
「? どうしました?」
「あれですよ! 2年前ぐらいに滅びたあの、隣国の……」
「!」
私たちの国のことだ!
「その、隣国の、元貴族たちが隠れて反乱を起こす準備をしているって聞いたことがあるんです! もしかして、そこの刺客が現れたとか……!」
保健教諭は震え出す。
「……たしかに! それなら、『剣の学校』という、次世代の実力者たちが集まるところに攻め入るのは納得できます!」
保健教諭は大声で言い放つ。
「……は?」
私は言う。
「……え? レイラさんだったかしら。どうしたの?」
保健教諭は言う。
「……いえ、なんでもないですよ、別に。単純かつ馬鹿げた考えだなぁと。そう思っただけですが」
私は笑顔で言う。
「そ、そう……?」
保健教諭は言う。
すると、
「ですが、隣国の貴族たちは、2年前に全員処刑したはずです。生き残りなど、いるはずもないのではないでしょうか?」
と、先生が言った。
「……そ、そうですよね! いやだわ、私ったらなんてことを考えていたんでしょう!」
保健教諭は大声で言う。
「そうですね……」
先生は俯いた。
「……ごめんなさい。保健の先生。後でお話しがあるのですがよろしいですか?」
私は笑顔で言う。
「あら、別にいいけれど、先生がいらっしゃっては出来ないお話かしら?」
「ああ、はい……。すみません……」
「なら俺は出て行きますよ。じゃあ、後でまた、その時の状況の話を聞かせてくれ」
そう言うと、先生は部屋から出て行った。
「それで? お話って何かしら? あ、ノア君がいるわね。ノア君がいても出来ないお話?」
「いえ、彼はまだ寝ているので大丈夫です」
私は笑顔で言う。実の所、カムレアはさっきから起きているのだが、彼女は気づいていないようだ。まあ別に、カムレアならここにいても問題ないだろう。
「では、一つ聞きますね……」
ありがとうございました! 続きは明後日出します!