第55話 学園長
いつもより、少し早いですがよろしくお願いします。
「あ、えっと、ごめん! 寝起きだったから、勘違いしてたわ! カムレアっていう子が知り合いにいてね、」
……こ、これで誤魔化せるか……?
「あ、へぇ〜! その、カムレアって方、名前からして男の人ですよね? 仲良いんですか?」
ハズキさんは目を輝かせる。
……あれ?
「は、はい……。それなりには仲がいいと思いますけど……」
「! そうなんですか!」
ハズキさんは嬉しそうだ。
「……?」
「というか、起きませんね、ノア……」
「はい……」
「な、なら、わたしがノア様を介抱しておくので、レイラさんはお先に食堂に行って、ご飯を食べていてくださいますか?」
ハズキさんは言う。
「……え? あ、大丈夫ですよ。ノアのことはよく知っていますので、私に任せてください!」
私は笑う。
「……な、そ、そう言わずに……!」
でもなぁ、起きたカムレアが寝ぼけて『アーノルド様……』とか言っちゃったら、普通に終わるじゃん。アーノルドとか、知名度的にも知らない人いないんじゃないかなぁって感じだし。
「いやいや、ここは私が……!」
な、何で譲らないの、この人!?
すると、カムレアが目を覚ました。
よ、よかった!
「……おはよう、リーン」
カムレアはこちらを向いて笑うと、そのまままた、眠りについた。
「……な、」
お、おのれ、カムレア! なぜそう言う風な爆弾発言だけ残して消えるの!?
やっべぇ、絶対、『リーンって誰です?』ってなるじゃん!
私はおそるおそるハズキさんの方を見る。すると、とても驚いていて、それどころではなさそうだった。
「……ハズキさん? どうしたの……」
「い、いえ、別に……何でもないんです〜!」
ハズキさんはそう言うと、走って行ってしまった。
「…………???」
ど、どうしたのかな、ハズキさん。……いや、今はとりあえず、カムレアを起こさないと!
「カムレア〜、起きて〜!」
すると、案外、あっさりとカムレアは目を覚ました。
「……」
「起きたね〜、疲れてたの? 結構寝てたよ」
私は言う。
「いや……別に……」
カムレアは頭を押さえる。
「……あのさ」
「なに?」
「もしかしてだけど……カムレア、ずっと寝てなかったの?」
私は言う。
「……っ、いや、ずっとってほどではないけど……」
カムレアはしどろもどろする。
「……ずっと、1人で頑張ってたんだね」
「……それは……」
すると、また、屋上の扉が開いた。そこにはサペとナミとハズキさんがいる。
「こんなところにいたんですの? 探しましたわ!」
「ほんとだ! 心配したぞ!」
2人は口々に言う。
「あはは、ご、ごめん……」
私は言う。ちらっと、カムレアの方を向くと、
「……ありがとう」
と、そう、つぶやき、3人のいる方に歩いて行った。
「……うん!」
私も自然と笑顔になる。すると、
「おーい、レイラさんも行きますわよ!」
と言う、ナミの声がした。
「あ、はーい!」
私たちは食堂へ急いだ。
「おい、お前らぁ! 遅かったじゃないか!? もう、朝食時間は終わっている!!」
いかにも熱血そうな先生が食堂の前で立っていた。
『すみません!』
私以外の4人が、一斉にお辞儀をする。
え、えっ? 私だけ置いて行かれた……!
そのまま、「失礼します!」と言って、カムレア以外の3人が走っていってしまった。
な、な!? 逃げられた〜!
私があたふたしていると、先生と目があった。
あ、まず、これ、私死んだ?
すると、
「……あ、貴女は……!」
と言い、目を見開いた。
「……?」
「……いや、何でも……ない。忘れてくれていい。知り合いに似ていたものでな」
先生はうつむく。
「は、はい……」
「というか、お前、誰だ?」
やっぱそうなるよね!? うん! どうしよう!
「あ、いや、レイラは……」
カムレアは言う。
「お前には聞いてねぇ! レイラと言ったな、お前だ! お前は何しに来たんだ?!」
先生は言う。
いやぁぁぁぁぁぁあ!
「え、あ、えっと……その……」
その時、ふと、思い出した。
この剣、どこかで見たことがあるような……。
「……」
なんだっけ、まあ、今はとりあえず……!
「私は、レイラ。今日からこの学校に入学を希望する者です」
私は言う。
「そうか。なら、学園長のところに行くといい。俺も着いて行ってやろうか?」
「……え? いや、大丈夫です〜」
私はそう言うと、カムレアの腕を掴み、ダッシュで逃げた。
「ちょっ、ちょっと〜! リ……レイラ! 離して!」
カムレアは言う。
「うるさい! えっと、学園長室ってどこ!?」
私はそう言うと、カムレアの腕を離す。
「もう……。えっと、学園長室は本館の2階!」
カムレアは言う。
「分かった! じゃあ、ここからは歩いて行こっか」
「……うん……」
「あのさカムレア、あの先生、見たことない?」
私は聞く。
「……どういうこと?」
カムレアは言う。
「なんか、見たことあるんだよね、あの人。どっかで会ったこととか、覚えてない?」
「……そうだね、オレは初対面だと思うよ?」
カムレアは言う。
「……そう? そうならいいんだけど……」
私は頭を捻る。
「そんなに気になるような人なら、オレがいない時に会ったことがある人とか……?」
「うーん、そうだね……。まあ、いっか、なんか、会ったことがない気がしてきた!」
「……それでいいの?」
「うん! まあ、縁があったらまた、会うでしょ!」
私たちは学園長室の扉をノックする。
「どうぞ」
と言う声がして、部屋の中に入る。
「失礼します……」
私は扉を開け、中に入ろうとする。すると、
「っ! リーン!」
私は後ろにいたカムレアに、肩を掴まれ廊下に戻された。
私は廊下で尻もちをつく。
「カムレア! 痛かったんだけ……ど……?」
すると、カムレアが、中にいるまま扉は閉まった。
「ちょっ、」
私はドアノブをガチャガチャとする。が、開かない。
「……な、に……?」
扉をどんどんと叩く。
「カムレア!? どうしたの!?」
返事はなかった。
「……っ! 『黒炎』!」
私は手をかざし、杖を出して唱える。
黒炎は殺傷能力が高いけれど……やむおえない……!
すると、扉と近くの壁が灰になって消えた。
「カムレア!」
幸い、カムレアは眠らされているだけのようで、床で縛られていた。
「……よかった……」
そのまま、ふと、前を見た。そこには机の後ろで私に背を向けて、窓の外を見ている男がいた。
その姿を見たとき、
「あ、あぁ……」
私は動けなくなった。威圧というものなのか、なぜかは分からなかったが、ただ、動けなくなった。コイツはなにかがまずい。と、そう思った。
「……久しいな、リーンよ」
そいつは喋る。
アイツは……!
「おい、人に物を話すときは、そいつの方を見ていえ、こんなの基本だろ、クソ野郎……」
私はそう言いながら、逃げる方法を考える。
カムレアを抱えながらは無理だ。せめて、カムレアを起こさないと、総戦力でいかないこいつには勝てない……!
ありがとうございました!