第50話 優しさ
50話です! やったー!
とても、ノア様がかっこよく見えた。
「……」
「どうしたのですか、ハズキさん?」
ナミさんは言う。
「あ、いや、えっと……」
どうしよう。胸のドキドキがおさまらない……。
ノア様がふと、こちらを向いた時、もっと胸の鼓動が高くなった。
「……」
なんでしょうか、これは……!
***
女子寮 2階 個室内
「それは、『恋』ですわよ、きっと!」
「こい?」
「ええ、そうですとも! おそらく貴女は、ノア様に恋をされているのですわ!」
ナミさんは食い気味に言う。
「恋……」
不思議と嬉しい気持ちになった。
「さて、では早速、アプローチいたしましょう!」
「あ、アプローチ!?」
「はい! まずはおしゃれですわ!」
そう言って、彼女がタンスの中から引っ張り出してきたものは、ふりふり過ぎるドレスだった。
「……な!」
「これを着るのです! そして、明日はノア様と一緒に朝食を食べるのですわ!」
「……え、えぇ! そ、そんな……」
「……そうなると、サペが邪魔ですわね……。ちっ、不本意ではありますが、わたくしたちがサペの自慢話を聞くとしましょう」
「え、いいんですか?」
ナミさんたちはサペさんが嫌いなはずでは……。
「ええ。友達のためですわ」
ナミさんは笑顔で言う。
……ノア様のおかげで、サペさんへの態度も変わってきている。よかった。皆、心底嫌っていたわけではなかったんだ!
***
昼
昼。前半の授業が終わり、寮の中で休憩していたところ、サペではなく、いかにも貴族のような服を着た女の人が訪ねてきた。
「……あ、あの、ノア様……。お食事など、一緒にいかがですか?」
(……貴族か……)
(というか、素性がバレてはいけない今、下手に関わるのも、良くない気がする……)
「すみません、オレは一人で食べますので……」
「いえ! そ、そんなことはおっしゃらずに……!」
と、彼女は言ってきた。
(ええ、これって行かなければいけない感じ……?)
カムレアは渋々、昼食に付き合うことになった。
「こ、この、ブレット、美味しいですね……」
少女はぎこちなく言う。
「は、はい……」
(っていうか、サペくんはどこに行ったの?!)
「あの……」
「ぴゃいっ!」
少女は驚いたようで飛び跳ねる。
(やりづらい……!)
「すみません、君の名前を知らないので、教えていただいてもよろしいですか?」
「あ、ああ! すみませんでした……。私はハズキと申します!」
「ハズキさんですね。よろしくお願いします」
「っ! は、はい〜」
ハズキは顔を真っ赤にしてうつむく。
(……というか、彼女はなんでオレと一緒に朝食を食べようとしたんだろう……。他の女子たちが沢山いたじゃないか……)
カムレアはそんなことを思いながら、朝食を済ませた。
***
授業後 夜
(疲れたぁ……。なんで今日、ハズキさんは一日中ついてきたのだろう……。やっぱり、大人しい女の子は話ずらいから困る……)
カムレアはベッドに倒れ込む。すると、朝食と夕食時にはいなかった、サペが帰ってきた。
「あ、サペくん。どうしていなくなっていたんだい?」
「あ、いや、ぼくってばモテるからね! 女の子たちとお話ししていたのさ!」
(サペくんもこういう態度を治せたらなぁ……。あれ? ってことは、あの、ハズキさんがオレに近づいてきたのは、オレとサペくんを遠ざけるため……!? つまり、その、今サペくんの言った女の子たちの中に、サペくんのことを好きな子がいるんじゃ……!?)
カムレアは目を輝かせる。
(頑張ってね! その女の子。オレ、君のこと、応援しているよ!)
と内心で言った。
「おーい、どうしたんだ?」
サペくんは言う。
「ああ、いや……あはは」
(ここで、サペくんにバレるのはまずい……! だって、彼のことが好きな子がいることを知ってしまうわけだから……! なんとしても隠し通さなければ……!)
***
翌日
「おはようございますわ!」
いかにもと言ったような貴族の少女が言う。
「おはよう!」
サペくんは堂々と返事をする。
「……!」
(もしかして、この、肩までの長さの茶髪の女の子。この子がサペくんのことが好きな子では……!?)
「き、君、名前なんて言うの?」
カムレアは聞く。
「ナミですわ、ノア様」
ナミと言った少女は笑う。
「ガーン!」
ハズキはショックを受けている。
(私は名前を聞かれるのに、あんなに苦労したのに、ナミさんは一瞬で聞かれるなんて……!)
と。
「ナミさんか、よろしく。可愛い名前だね」
カムレアは笑う。
「……っ、そ、そうかしら……、あ、ありがとうございますわ……」
ナミは顔は赤く、目はぐるぐるにして言う。
「? うん」
(そうだ! ここら辺でサペくんとナミさん、二人にしてあげるべきな気がするぞ!!)
「ごめん、ハズキさん、少し、一緒に来ていただけますか?」
カムレアは手を差し出す。
「……へ?」
ハズキは頭が爆発音を立てて四散する。
「い、いや、ご、ごめんなさい、二人きりは、ちょっと……」
(ちょっと心臓がもたないです!!)
「そうですか……」
(ごめんね、ナミさんとサペくん)
「あ、す、すみません〜!」
ハズキはそのままどこかへ走り去ってしまった。
(な、なんなんだあの子は……。今までリーンが普通の女の子だって思っていたけれど、リーンは優しくて、いい子だったんだね……。ごめん、リーン……。2ヶ月後から、もっとオレも優しくしよう)
カムレアはそんなことを思った。
***
「……では、一週間後からは直々に騎士団の団員様たちから剣術を教わる、いい機会だ。しっかりと備えるように!」
先生は言う。
「き、騎士団だって……?」
カムレアは呟く。
(サルバドール国の騎士団って言ったら、たしか、運営している上層部にはあの、ラールドがいたはずじゃないか!? ……と言うことは、ラールド直属の部下に素顔を晒すってこと!? むり、絶対に無理だ……!)
(ど、どうしよう……。とりあえず、リーンとアーノルド様に報告したい……! でも、アーノルド様はスパイとして潜入しているわけだし、余裕がないかもしれない。だとしたら、まずはリーンだね……。
かと言っても連絡手段がない……。リーンからなら、遠隔魔法とかなんとかで通信が取れるはずだけど、オレからは連絡手段は皆無! まずい……)
50話、ありがとうございました! 次回投稿は明後日です!




