第42話 次にする事
「……なるほど。ってことは、ガルダさんが4歳のころから、グラウに魔法を教えてもらっていたと……
って! じゃあグラウは何歳なの!?」
私は聞く。
「ええと、正確に数えるのはだいぶ昔に辞めてしまいましたが……。ざっと300歳は超えています」
グラウは言う。
「さ、さんびゃく……」
「はい」
「ガルダさん、なんで言わなかったんだ?」
アーノルドが聞く。
「……『北の魔女』の元へ行くとは聞いておりましたが、元々師匠は、儂の出身地の近くの森に住んでいたもので……。別人かと……」
「へぇ、拠点移したんだ、グラウ」
「はい。ここは人もあまり訪れないので、とても住みやすいです」
グラウは言う。
「……して、弟子よ。あなたの魔法で村を異空間に閉じ込めている。ということですか?」
グラウは続ける。
「いいえ、師匠。少し前、見知らぬ女性がやってきて、このように匿ってくださったのです」
「……そうですか。それは少し妙ですね」
「何がですか?」
カムレアは聞く。
「ええ、そんな、異空間に閉じ込めるような魔法など、存在しないはずですから」
「そ、そうなの? グラウ」
私は聞く。た、確かに聞いたこととかはないもんね。じゃあ、尚更、そんな魔法を使えた女の人が怪しい。
「ぐ、グラウとは……?」
ガルダさんは聞く。
「ああ、あなたの師匠の名前ですよ」
私が言う。
「し、師匠の名前……?」
ガルダさんはとても驚いている。
「……ああもう! 名前など、今は関係ありません! ……そうですか。ガルダがいるならば、我も同行しましょう。よろしいですか?」
「……え?」
え、今、同行してくれるって……。つまり、ガルダさんも村に住むってこと!?
「い、いいよ? って言うか大歓迎だけど……。いいよね、みんな」
私はそう聞くと、皆は頷く。
「ならば、我も連れて行ってもらいます。ガルダ、魔法を発動しなさい」
「は、はい! では、行きます」
ガルダさんが杖を少し上に掲げると、また光が周りを包んだ。あまりの眩しさに、反射的に目をつむり、開けた時には、いつものあの村があった。
「……うわぁ」
私は思わず感嘆を漏らす。
「いつ見てもすごいなぁ‥…」
「はい。あっという間ですからね」
すると、グラウも驚いていた。
「弟子よ。だいぶ、魔法も上手くなったな。初めてこの魔法を使ったときなど……」
そう言いかかる。
「やめてください! 恥ずかしいので……」
ガルダさんは言う。
(かっ、可愛い……)
一同に、『おじいちゃんをマスコットキャラにする』という女子校のあるあるが芽生えた瞬間だった。
***
「さて、戻ってきて、グラウを仲間にできたはいいけど、次は何をしようか」
私は言う。
「では、提案なのですが……」
グラウは手を挙げる。
「ん、グラウ、いいよ」
「はい。我がここの住民を鍛えようと思ったのですが、よろしいですか?」
「え! 逆にいいの?」
正直、教官役はありがたい。まだ、軍隊としてあまり成り立っていなかった、ここの村人たちには、まだまだ、実践が必要だからだ。
「では、さっそく行ってきます。今度また、どこかに行くようでしたら、サポートもさせていただくので、お声かけ下さい」
グラウはそう言うと、席を立ち、ガルダさんの家を出て行った。
「……さて、んでやっぱり、次はどうする?」
私は聞く。
「うーん、また、人収集する?」
カムレアが言う。
「いや、でもグラウが、人ならいくらでも紙で作れるから、もう要らないって言ってたぞ」
アーノルドが言う。
「え? なにそれ。紙で作る人?」
式神みたいなやつ?
「師匠ならば、念を込めた紙を幻術として、人に見せられることが可能なのです」
ガルダさんが言う。
なんでも出来るじゃん。……やっばグラウ怖……
「そうなんですか。ってことは、今、私たちに必要なのは……」
『敵の内情探りと味方の強化!』
私たちは声をそろえる。
「そっか、だからグラウはさっき……」
「うん、味方の強化の方を引き受けてくれたんだね」
「グラウ凄くない……?」
「まあ、師匠は伊達に何百歳も生きていませんからなぁ」
何故か、ガルダさんが自慢げにニコニコしている。
(可愛いっ!)
3人は思う。
「じゃあ、」
「残りは……」
「敵の内情探り。つまり、潜入捜査!」
***
潜入調査の鉄板と言えば、カムレアだったら騎士団とか、私だったら、薬の調合室とかでもバレなそうね。
でも、王族から情報を聞き取るとかなら、あまり好ましくないかも。執事とか?
……でも、
「潜入捜査って言っても、私とカムレアとアーノルド、3人とも、顔がばれているんだよね」
私は言う。
「……それは、リーンの魔法でなんとかしてもらうって言うのはどう?」
カムレアは言う。
リーンの魔法とは、多分、前まで金髪にしていた、あれのことだろう。
「あー、まあいいけど、そこまで隠せるかなぁ」
私は言う。
「でもさ、私たちも強くなりたい〜」
私は言う。
「そうだね……。俺たちの戦力不足も、グラウさんに、痛いほど味合わされた」
カムレアは言う。
「どうしよっか……」
選択肢が二つ。戦力強化をするか、敵の内情を知るか。
「……なら、俺が、潜伏捜査っていうのをやる」
アーノルドが手を挙げた。
『え?』
「アーノルド、どこの部署で潜伏をするの?」
結構な才能がないと出来ない部署が多いのに……
「俺、踊り子になる……!」
『お、踊り子!?』
次は明後日の投稿です。お楽しみ!