40話 反省 (アーノルド視点)
今回はアーノルド視点でお話が進みます!
「ちょっ、ちょっとカムレア、大丈夫?」
義姉様が言う。
「う、うん……。なんとか……」
カムレア、痛そうだなぁ……
あいつ強……。
「さて、最後はアーノルド。貴方。全力で来なさい。手加減は、しない……!」
グラウは言い放った。
「……あ、いや、俺、ちょっと腹痛くなってきたかも…」
読者諸君、今絶対嘘だろって思ったな? 嘘じゃない。ガチで痛い。
「ちょっと……今日は訓練、無理、かなぁ……」
(ガチの方で体調が悪そうだな、アーノルド。大丈夫かな?)
リーンは思う。
「そうですか。ならばしょうがないですね……」
グラウは悲しそうに目を伏せる。
「ああ、ちょっとすまないな……」
俺は言う。
***
『また、逃げるのか?』
俺自身の声が聞こえる。
『はは、逃げるよ。だって俺には勝てっこないしな』
『いつも、逃げてばかりだな、お前は』
『っ! うるさいな!』
『兄様と王権争いをしていた時もそうだった。王妃の後ろ盾もあった。圧倒的に、お前の方が有利だったのに負けた。敗因は、お前が臆病だからだ』
『うるさい、うるさいうるさい!』
『俺だって嫌だよ、こんな性格! でも、だって、どうしようも無いじゃないか!』
『この性格を直したいと? ならばもう、答えは出ているじゃないか』
『……それは……』
***
俺は拳を握りしめる。
「では、今日はここまでですね。もう日も暮れるので、お泊まりになっていってください」
グラウは言う。
「……待て」
「はい?」
「どうしたの、アーノルド?」
「やっぱり……やる。俺も、やる……!」
俺は言い放った。
「アーノルド様、体調が悪いのでは……?」
カムレアは心配そうに言う。
「いや、もう、治った!! よぅし、こい、グラウ! 爪弾きにしてやるぜ!」
俺は言う。
「……ふふ、いいでしょう。我が相手です」
グラウはニコリと笑った。
「で、では行きます。 3...2...1...初めっ!」
義姉様が言ったところで、戦いの火蓋は切って落とされた。
「『雷』!」
グラウはそう言う。
……いかずち? なんだそれ……って!
上を見上げると、俺の真上にとても小さな雷雲ができていた。
急いで左に避ける。
すると、数秒後にさっき俺がいた場所に雷が落ちた。
「ひぇ……」
落ちた場所には小さい穴が空いている。
……俺からも仕掛けないと!
すると、
「『アクアサザリア』!」
と言う声とともに、グラウが杖を振った。
「っ!」
これは、さっきの義姉様の時の水魔法……!?
逃げないと……。
俺は必死に左側に転がり、受け身を取った。
すると、水魔法が隣に発射された。
「……ふむ」
グラウは何か少し考え込んでいるようだ。
「……! 今だ!」
俺は急いでグラウに近づき、武器で刺そうとした。
が、人なんて、カムレアたちみたいに沢山殺したことは愚か一人も殺したことのない俺の恐怖心が、結局、グラウを手で押すことを選んだ。
「きゃっ!」
グラウは地面に尻もちをつく。
「……くそ!」
そして、まだ杖を振ろうとする。
「諦めろ!」
俺は使い慣れていない槍を彼女の首前に近づけた。
「勝負あり!」
義姉様が言い放った。どうやら俺の勝ちらしい。
「やっ……やったぜ〜!!」
俺は地面に倒れる。
いやぁ、めっちゃ怖かったぁ……。
すると、2人が寄ってきた。
「おつかれ、アーノルド!」
「凄かったです! まさか勝てるなんて!」
「おお、さんきゅーな……」
チラッと後ろを見ると、グラウは悔しそうにしながらも、さっきのように、何か考えているようだった。
「どうしたんだ? グラウ」
「……いえ、少し思い当たる点がありまして。我は少し用事があるので皆様は部屋に戻って休憩していてください」
グラウは言う。
「え、私たちも手伝うよ?」
義姉様が言う。
「そうです。オレたちはまだ1試合しかしていませんが、グラウさんは3試合もしているでしょう? お疲れではありませんか?」
カムレアも言う。
「……いえ、大丈夫です。今日はもう日も暮れますので、我の家に泊まって行ってください。それと、反省こそこの試合をやった意味。皆さんで反省会をして、紙にまとめておいてください。後で見ます。では、後で戻ってくるので、失礼します」
グラウはそう言うと、すっと姿を消した。
「うわっ、消えた……」
俺はつい、驚いたので口に出す。
「……では、私たちは家に戻っていましょうか」
「うん、そうだね」
「ああ、戻るとするかぁ〜」
*** リーン
19時 グラウ家 リビング
俺たち3人はリビングの椅子に座る。
「じゃあ、さっきグラウが言ってた、反省会しようか」
義姉様は言った。
「まず、私から……今日の試合、反省点が多くあった。まずは、そもそも魔法使いと戦うことがそんなになかったため、魔法使い同士の戦いに慣れていないこと。
剣術のみで戦うならば、警戒する範囲はその人の、広くても1メートル圏内だ。けれど、魔法はどこから打ってくるか分からないし、もっと、広い視野を持って警戒しなければならなかった。
次。次は、逆に、魔法以外の警戒も怠っていたことだ。彼女が『魔女』と言う異名を持つほどの魔法使いだったためか、私は魔法のみを警戒していた。もちろん、魔法使いにも手足はあるわけだから、やっぱり、視野を広く持つことが大事だと思った」
『パチパチ』
「えへへ、次はカムレア!」
「まず、オレの魔法が効かない体質は、便利だけど全能ではないと言うことだ。オレの体質だと、『体に触れた魔法を無効化』。つまり、先程のように、周りだったり、触れられない場所ならば、オレにも魔法は効くと言うことになる。
今度からは、そこも考えて動かないといけないな……と、思った」
『パチパチ』
「うん、ありがとう。じゃあ最後、アーノルド様」
「ん、おう。……えっと、俺は……」
ありがとうございました。明日は投稿がなく、明後日に投稿です!
けれど今日は、もう1話投稿します!