第39話 武器
「……出来上がりました」
『北の魔女』もといグラウは私たちのもとにやってきた。手には布が被されていて、全貌ははわからないが、三つの武器が載せられていた。
「まず、カムレア様の武器です」
グラウはカムレアに剣を手渡した。
「ありがとうございます……。うわ、軽っ!」
カムレアはとても目を輝かせる。
うん、分かるよ。こう言ういい武器って、見るとたぎるよね。
「次に、アーノルドの武器。はい」
アーノルドに手渡した。
『!?』
私とカムレアは驚く。
「おーさんきゅー」
「……はい」
【え、まって、なんで!? なんでアーノルドだけ、『様』付けの呼び方じゃないの!?】
【……わからない。さっきなんかあったのかもしれないね……】
【はぁ!?】
そんなことを目で話していると、私の武器も渡された。
「キャスリーン様、こちらを」
「あ、ありがとうございます……」
グラウの手元を見ると、武器は杖だった。
「え? 杖ですか?」
杖とか、U○J以来だよ……まあ、あれは偽物だけど……。
「はい」
で、でも、杖って無くても魔法は打てるし……。どちらかと言うと、私もカムレアみたいな剣が欲しかったなぁ……。
ま、まあ、作ってくれただけでありがたいんだけどね!
「……では、それぞれの武器の説明を致します。まずカムレア様。その剣は『魔法を断つ魔法』がかかっております。ぜひ、お役立てください」
「魔法を断つ!?」
カムレアは驚き、その後に事の重大さに気づいたようだ。
(こんなの、刃をダメにしたら終わるじゃん!!)
そう。この世に一つしかないような、とてつもない剣。こんなのをまともに振れる人はそうそういないのである。だって勿体無いし。
「そして、アーノルド。貴方は戦闘力が皆無なので、槍です。せめて遠くから戦い、犠牲になりなさい」
「犠牲!? なぜ!?」
アーノルドは理不尽だと言わんばかりの顔をしている。
グラウ……もしかしてSだったりする?
「キャスリーン様」
「あ、リーンでいいよ?」
「……はい。リーン様」
「リーン様は杖でございます。剣も併用するスタイルと聞き及んでおりましたが、今回はあえて杖でございます」
「へぇ……」
「はい。杖のみで、もしも、剣が必要になったら魔法で剣を作成してください。それも魔法の練習になるのです」
「そうなんだ。わかった。ありがとう!」
今あったばっかりの私たちにここまでしてくれるなんて、グラウはいい人だな!
「では、早速訓練に取り掛かります。ここから少し、離れたところに行って、武器を慣らすことも考慮して、我との疑似試合を。よろしいですか?」
『え??』
***
「ではまず、リーン様。お手合わせを」
「は、はい……ありがとうございます」
「アーノルド、カウントを」
「あ、うん、3...2...1...初めっ!」
間合いを見てジリジリとグラウに迫っていく。
「『黒炎』!」
私は杖を振る。
すると、『ブォオオ!』という音とともに、この辺り一帯を全て焼き払った。木々も全て、無くなっている。
う、そ……。こんな強力な魔法になるなんて……。この杖、やっぱりすごい。
後ろを振り向くと、アーノルドはカムレアが守ってくれたようだ。
「……ほっ」
すると、
「戦闘中によそ見は良くありませんよ」
という声が間近で聞こえた。
「っ!」
咄嗟に間合いを取ろうと後ろに下がるが、グラウの目が深い青色に光る。
「『シールド』!」
グラウはそう言い、私の後ろにシールドを張った為、私の身体は前に弾き飛ばされた。
「がっ……!」
やば、前に倒れる……!
すると、
「『アクアサザリア』!」
私は前から来た水魔法によって、結局後方に飛ばされた。
「ごほ、ごほ!」
私は咄嗟に飲み込んでしまった水が気管に入ったため咳き込む。
「だ、大丈夫か、リーン……」
アーノルドは駆け寄ろうとする。
「だめです。アーノルド様。まだ試合は終わっていません」
カムレアがアーノルドの肩を掴んで止めた。
「……あ、ああ」
「……これで終わりですか? 貴女は大きすぎる魔法の才能に溺れているだけ。それこそまさに、宝の持ち腐れですよ?」
グラウが言う。
「ま、まだだ!」
私は立ち上がって、杖に力を込める。
「『物質強化』!」
「……なるほど」
「まだ、負けない!」
私は物質強化で杖を強化した。剣がないならば、これを武器に変える……!
「はあっ!」
私は杖をグラウに振りかざす。
「少し甘いですね」
グラウはそういうと、自分の足で私の足を蹴った。
「あっ……」
私は足を蹴られた反動で後ろに尻もちを付く。
「はい。では、我とリーン様の試合はここまでです」
「あ、ありがとうございました!」
「はい」
グラウはそう言うと、にっこりと笑い、私に手を貸してくれた。
「さて、では……カムレア様」
「はい……」
「あなたの場合だと、魔法では我は太刀打ちできないので、短剣を使わせていただきます」
グラウは鞘を抜き捨てた。
そっか、カムレアは魔法が効かないもんね。でも、剣技だけなら、カムレアには勝てないんじゃ……。
「では、リーン様、カウントダウンを」
「は、はい! 3...2...1...初めっ!!」
私が言うと、カムレアは一気にグラウとの距離を詰める。
「お、おい……。あんなに一気に距離なんて詰めて、大丈夫なのかよ……」
アーノルドは言う。
「……多分カムレアは、魔法を使われると形勢逆転しかねないから、すぐに距離を詰めて、使えなくしたんだと思う」
「な、なるほど……」
「うん。でも、グラウは短剣だけでどう長剣を相手にする気なんだろう……」
「普通はどっちの方が有利なんだ?」
「うーん、場合によっても違うけど、長剣が届く、ギリギリの間合いで剣を振ったら、もちろん、短剣は届かないでしょ? だから、圧倒的に、長剣が有利だね」
「はー、なるほどなぁ」
すると、ここにきて急に、グラウは特に氷系の魔法を使い始めた。しかも、毎秒一回ぐらいのペースで打っている。
ひ、ひぇ〜。魔力量エグ……。冷たすぎて、氷から煙出ちゃってるし。
「お、おい。なんでアイツ、氷魔法なんて使ってんだ? カムレアには効かないだろ?」
「うん……。でも、カムレアも効かないって言っても、触れたら無効化するような感じだし、多分だけど、あれは……!」
すると、この周りを煙が包んだ。
「な、なんだ?!」
「やっぱり、あの氷はドライアイスだ!」
「ど、ドライアイス……?」
あー、やっぱり知らないか。
「えっとね、ドライアイスっていうのは、温かいものとかをかけると、蒸発して、煙を発生させる冷たい塊のことだよ」
「? まあ、よく分からんが、煙が発生する個体ってことだな?」
「う、うん……」
急に理解力が高い……。
「で、でも、流石に普通なら、こんなに煙は発生しないはずだから、多分魔法とかで強化してるんだと思う」
「まじか……。凄いな、アイツ」
「うん……」
すると、一瞬にして煙が消えた。
そこには、倒れているカムレアと立っているグラウがいた。
「や、やっぱり、グラウ、めっちゃ強……」
はい、実は毎日週間は今日まででしたが、予定を変更して、明日まで投稿します! つまり、明日は投稿して、次は18日と言うことになります。
今後もよろしくお願いします!