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第36話 山賊

 おじさんが二人、やってきた。片方は弓矢を、もう片方は短剣を持っている。


 これで、山賊に太刀打ちできるのかなぁ……。やっぱり、私たちも一緒に行って、正解かも。


「よろしくなぁ、余所者。儂はナイルじゃぁ」

 短剣を持っている方が言う。


「私はアイルだ」

 弓矢を持っている方が言う。


 双子かな? って……、よく見ると、顔の造形が似ているなぁ……。兄弟なのかも。


「よろしくです!」

 私は言う。

「よろしくお願いします」

 カムレアは言う。

「よろしくな!」

 アーノルドは言う。


 そのまま、2人はその山に向けて歩き出す。私たちはその少し後に着いていく。


「え、『ヒール』が使えなかったの?!」

 カムレアは小声で言う。


「……そうなの。どうしてだろう……」

 私は凹む。


「なんで急に山に行くんだろうって思ったけど、そういうことだったんだね」


 ……あれ? カムレア、山に行く理由、分かってなかったの? なら、アーノルドなんて尚更……。


 私はそもそも『ヒール』について打ち明けていなかった、少し前を歩く誰かさんを見る。


 頭の上に?マークでもついているのかと思いきや、特に何も考えていなさそうだった。


 ……よかった。


「もしかしてリーン、まだアーノルドに『ヒール』を使えること自体、打ち明けてないの!?」


「しー! 聞こえるから!」

 私は口に手を当てる。


「……うん。実はまだ言ってない。いつかは言おうと思ってたんだよ!? でも、なんか機会がなくて……」


「そっ、そっかぁ〜」


「め、面目ない……」

「じゃあ、また今度、アーノルドにも喋らなきゃね」

「う、うん!」


「おーい! 何二人でイチャイャしてるんだ〜? 俺が寂しいだろうが!」

 アーノルドが後ろを振り返って私たちに言った。


「っ! イチャ……。ゴホン! なんでもないよ!」

 私はごまかす。


「は、はい。なんでもありません……」


 私たちはアーノルドの方に追いつく。


「おーい、大丈夫か、オマエらぁ?」

 ナイルさんが言う。


「あ、はい、すみません!」




 ***




「ぜぇ、はぁ、ぜぇ……」

 アーノルドは息が荒くなっている。


「だ、大丈夫? アーノルド」

「へ、平気だぁ……」


 だいぶ山奥まできた気がするけれど……まだなのかな……?


「お前、余裕そうだな」

 えっと、なんだったかな……。ナイルさんじゃない方……。ミイル? いや、違うな、マイル? それはお金だ。……誰だっけ?


 えっと、とりあえず、ナイルさんじゃない方が言う。


「え、私ですか?」

「ああ」


 たしかに、ナイルさんじゃない方もナイルさんも、ついでにアーノルドも、だいぶ疲れている様だ。まあ、だいぶ登ったしね。


「……いや、毎日山は登っているので……」

「! すごいな、お前」

「あはは……」


「おいアイル、オマエも見習うんじゃな」

 ナイルさんが言う。


「!」

 アイルさんって言うのか!!


 すると、遠くから何か音が聞こえてきた。『ピュー』というような音だった。


「? ………………っ! みんな、走って!!」

 私は叫ぶ。


 皆は動揺しながらも全速力で前に進んだ。

「も、もう、止まっていいよ……」

 私は言う。


「急にどうしたんだよ、リ…………」

 アーノルドたちは振り返る。だが、意味はすぐに分かった様だ。みるみるうちに、顔が強張っていく。


 振り向くと、後ろには大量の弓矢が刺さっていたからだ。


「こ、れ、は……」

 ナイルさんが言う。


「っ、山賊です!!」

 私とカムレアは瞬時に剣を抜く。


 すると、右の木々の中から、男たちが一斉に出てきた。なにか、ボソボソと言いながらこちらに向かってくる。


 な、に……?


 すると、体が動かなくなった。そういう魔法だったのだろう。

 目だけは辛うじて動くため、周りを見回す。皆、金縛りにあった様に動かなくなっている。


「よし! 金目のものは全て取っていけ!」

 一人の男が叫ぶ。


「せっかくだから、女は闇市に売らせてもらうぜ!」

 一人の男が私に袋を被せた。

 真っ暗で何も見えなくなってしまった。


 ……手際がよかった。明らかに常習犯だ。ってことは、こうやって、私みたいに売られた少女もたくさんいたんだろうな……。


 私は前を見る。


 ……許せない。なんとかして、この状況から打破することを考えろ……!


 すると、「ぐぁぁぁあ!」という悲鳴が聞こえた。


「……!」

 悲鳴……。誰の? カムレア? アーノルド? ナイルさんかアイルさん……?


 嫌、皆がやられてるのに、何もできない。


 すると、急に、袋越しに手首を掴まれた。

「!」


 すぐに手は離されたが、私の体に変化が起こった。

「……動ける……」


 私は袋を剣で破る。状況がよく分からなかったから、急いで袋から出た。


 カムレアは立っていた。

「……え?」


 男たちも動揺しているようだ。


「……!」

 驚いている場合じゃない!


「貴方達は山賊ですね? 今後、一切市民に危害を加えずに、憲兵に出頭するならば、ここは見逃して差し上げましょう」


 私は言う。

 なるべく、戦闘は避けたいし。


「う……うるせー!!」

 激昂している男たちは、それでもこちらに向かってきた。


「……もう一度問おう。……いや、これは()()だ。私達に殺されたくなければ投降せよ」

 私は襲いかかってくる男たちを動かずに見据える。


「と、投降? するわけねぇーだろーが!」

 男たちはそのまま、襲いかかるのをやめなかった。


「……ならば、殺して差し上げます」

 まず、向かってきた相手の首を切る。硬い骨を切るから、反動がくる。その反動の後ろに少し飛んだのを利用し、腰を(ひね)りもう一人の首を刎ねる。


 一旦着地して体の重心を真ん中に戻す。そして、向かってきた男の腹部を右から左へと切り裂く。


 すると、右側に切りかかってくる男がいた。

「……っ!」


 まだ、体制が整っていない状態で首を刎ねるのはできない。……ちっ、やむおえないな。


 私は右を向いて手をかざす。『黒炎!』


 正直、魔力をあまり使いたくはなかったのだが、しょうがない。それに、彼らが悲惨な死になってしまうから……。  


「……ごめんね」

 すると、黒い炎が周りを飲み込んだ。


 周りにいた男たちはバタバタと倒れる。


 ふう……。って……! カムレアがいるじゃない! 他の3人は少し離れたところでまだ固まっているからいいとして、ちょっと、カムレアは大丈夫!?


 周りを見回すと、ケロッとした姿のカムレアがいた。

「……え、だ、大丈夫なの、カムレア……?」


「あ、うん」

 カムレアは、一人の男の胸ぐらを掴んで剣をかざしていた。が、その男も黒くなっている。焼けてしまったのだ。


「え、本当に大丈夫なの?」

「うん。オレはほら……」

 カムレアは顔をしかめる。言いたくないのかもしれない。


「っていうより、みんなを助けに行かないと!」

 私はわざと遮り、皆のところへ向かった。

明日も投稿します! よろしくお願いします!

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