第31話 新たな村
「うん、じゃあオレも協力することになったわけだし、遠慮なく言わせてもらうけれど……」
カムレアは肉をナイフで切りながら言う。
「まず、復讐って言ったって、この3人だけで行くんじゃ、絶対に無理」
「だ、だよねぇ〜……」
いや、分かってはいたんだけど、でも、やっぱり無理か……。
「でも、もぐもぐ 人を もぐもぐ 集める方法がないぞ?」
アーノルドは肉に噛みつきながら言う。
……よくあの作法で王妃に怒られなかったな……。
「たしかに、人に『叛逆軍に加わりませんか?』って聞くとか、自分から捕まえてくださいって言ってるようなものだよね」
私は言う。
「ああ、普通の人が聞いたら、すぐ国に報告するだろうからな。なんか方法あるのか?」
アーノルドは一旦、肉を置いて言う。
すると、『コンコン』と扉を叩く音がした。
「あ、近所の人かな? 私、出てくるね」
私はそう言い、席を立つ。
「おー、ありがとー」
アーノルドは言う。
(変な気配がする。おかしい。これは、殺気……?)
カムレアは思う。
「……リーン、下がって!」
カムレアは急に鋭い声で言った。
「う、うん!」
私は急いで居間に戻る。
「おい、ちょっと、大丈夫なのかよ!?」
アーノルドは急なことで驚いている。
「……オレが出る」
カムレアはそう言い、立ち上がり扉に近づく。
ゆっくりとカムレアは扉を開けた。すると、そこにはおじいちゃんがいた。
「迎えにあがりました。遅くなって申し訳、ありません」
その発言で、私はこの村に来る前のことを思い出した。
私たちにこの村で身を潜めるようにと言った、あの、猫背のおじさん……ガルダさん。
(詳しくは『番外編2 前日談』を見てね!)
あの人だ。
『貴女様をお助けしたく思います。ですが、あいにく老ぼれの身ゆえ……。この近くに、ヴェルソビエ村という村がございます。そこに行き、身を潜めてください。準備が出来次第……おそらく数年後に、貴方達を迎えに行きます……』
と。つまり、そのガルダさんが迎えにきてくれたのだ。
「あなたは……!」
カムレアも合点がいったようで驚いている。
「お久しぶりです」
私は玄関まで近づいて言う。
「??」
一人だけ分かっていない、アーノルドを横目に話は進む。
「それで、私の村に来ていただきたいのですが……」
「少しお待ち下さい」
急に、カムレアが話を遮った。
「……はい?」
「こちらにも王妃様がいらっしゃります。どこの方かもしれない相手に勝手に身を預けるわけにはいきません。なので、貴方にはついていけない」
ちょっとカムレア、失礼なこと言わないで! と言おうとしたが、考えてみたらそれもそうなので少し黙る。
「……そうですか。ならば……」
ガルダさんは目を閉じる。
「お願いします」
ガルダさんは土下座をした。
「っ!」
土下座!? なんで、そこまでして、私たちに来てもらうメリットがあるの? 尚更怪しいような……。
「や、やめてください!」
私は言う。
「いえ、来ていただくまで、止めることはできません!」
ガルダさんは固い意志を持っているようだ。
「……いいでしょう。ならば、まず、オレだけあなたの言う村にいきましょう。そして、大丈夫なところかを調べさせていただきます。よろしいですか?」
カムレアは目をつむり、ため息をつきながらそう言う。
私はすかさずガルダさんに手を貸した。
「ありがとうございます……」
「いえ、」
「では、貴方だけ、ついて来ていただければ……」
「はい。じゃあ、また。レイラたちはここで待っているんだ。いいね?」
「は、はい。気をつけて……!」
すると、急に二人が消えた。
「!?」
「な、何が起きたんだ?」
アーノルドも驚いている。
「……分かりませんが、転移の魔法でしょうか……。ふふ、面白いものを使いますね……」
私は笑う。
これで、ガルダさんたちの追跡はできなくなったと……。
おかしいと思ってたんだ。反乱軍を掲げているのに全く国に認知されていない点も。
「おい、義姉様、どういうことなんだよ!? カムレアは……?」
「それはですね……」
***
私はこの村に行き着いた経緯を話した。
「……そうか。そんなことが……」
「王城で聞いたことあります? こういう反乱軍がいると」
「いや、やつらは少なくとも俺の前でそんな話はしていなかったな」
「……そうですか」
やはり、まだ把握できていないというのが現状なのだろう。
「カムレア、大丈夫かなぁ……」
1時間後
案外、カムレアはすぐ帰ってきた。
私たちが彼の安否で気が気ではなかった時に、普通に扉から家に入ってきた。
「ただいま」
『!?』
「無事だったんだな!?」
「よかったぁ〜」
私たちは言う。
「うん。しかも、あそこ、凄かったよ。きちんと整備されている村に沢山の人々が暮らしていた。ガルダさんはそこの村の村長の立ち位置なんだそうで……。
ここよりも幾分は安全だろうね」
「ってことは、その村に住むってこと?」
私は聞く。
「うん、それがいいと思う」
「よし、じゃあ早速、準備するぞ! 何か持っていった方がいいものとかあるか?」
アーノルドはすぐに準備を始めた。
「あ、」
私は自分の部屋に行った。そう、手紙だ。『君が幸せになれるように、僕も祈っているよ』
そう書いてあったのが目に入る。
「……」
すこし、目頭が熱くなる。が、今は泣いている時間はないと、そのまま必要なものを布に包んで家の外に出た。
***
「皆さん、準備はできましたか?」
ガルダさんは聞く。
「……はい」
私たちはうなずく。
「では、行きます」
ガルダさんは右手で持っている杖を少しだけ上に掲げた。すると次の瞬間、周りがピカッと光った。
私は反射的に目をつむる。
そして、目を開けた時にはもう、知らない土地に立っていた。
「ここが……」
「はい。ここが儂たちの村でございます!」
家が並んでいて道の先には広場のようなものが見える。けれど、それ以外には特に何もないような、小さい村だった。
「ここには、サルバドール国に迫害を受けた人々が暮らしているのです。つまり、皆被害者であり、サルバドール国を憎んでおります」
「憎んで……」
「まあいいでしょう。とりあえず貴方達の家に案内いたします。儂についてきてください」
「……はい」
私たちは道にそって、ガルダさんについて行く。
「流石に、3つの家を準備することはできなかったのですが、なんとか2つの家は確保しました。よろしいでしょうか?」
「いえいえ、むしろ1つの家でもいいくらいです」
私は言う。
「いえ、王妃様にそんな我慢をしていただく必要はございません。安心して2つの家をお使い下さい」
「は、はぁ……」
そして、案内されたのは村の1番北側に位置するとても大きい2つの家だった。
「こ、こんな大きいところを……」
「いいのです。当たり前ですので。あと、何かございましたら、この村の中央に儂の家がございますので、来ていただければ幸いでございます。では、失礼します」
ガルダさんはそういうと、そのまま去っていった。
ありがとうございます! また、月曜日に投稿です!




