第27話 火の海
なんと、この小説が『なろうのホームにある、あのランキング』にのりました! 266位でした! いつも応援してくださっている皆様、ありがとうございます!
「義姉様、久しぶりだな。アーノルド・アークリー、ここに参上した!」
アーノルドは相変わらずの高身長イケメンっぷりを見せつける。
えっと、第2皇子アーノルド・アークリーについて端的に説明すると、乙女ゲームの第一攻略対象者で、凄いチャラチャラしたやつ。という感じだ。
「お、お久しぶりですね、アーノルド。で、これはどういうことですか……?」
「ああ、おじさんになってたことか? あれはな、逃げられないようにって、サルバドール国の奴らが魔法で俺をおじさんにしてだな。まるまる太ってただろ? あれな、腹の肉のせいで歩けないんだ。本当に不便だったんだよなぁ……」
アーノルドはいじけている。
いや、そういう問題……?
「ええ、普通に手錠とかでよくないですか? おじさんの意味、あります?」
「そうだよな、俺もないと思った。けど、多分だが屈辱的な要素も含んでるんじゃねぇか?」
「ああ、なるほど……?」
「というか、私と話した時も、敬語でしたし……完璧に違う人かと思っていました」
「ふふふ、まぁ、騙そうとしていたのは少しあるな」
「はぁ!? こんな時に!」
「ごめんて」
「でも、生きていて良かったです。あなたの弟、第3皇子などの行方はわかりますか?」
「……それは……」
アーノルドは目を伏せる。
「……」
そのまま、演説が終わり、帰ろうとしている人の波をかき分けて、やっと王都の外付近までやってきた。
「なあ、義姉様」
アーノルドは私の手を掴んだ。
「な、なんです?」
「身内もたくさん死んだ。だからとは言わねぇが、アイツらが許せない。だから、俺はアイツらに復讐する。義姉様、俺はやめろって言われても、もう止まらないからな」
「……!」
アーノルドも私と同じだ。
「それは……私もです。私も、貴方の兄様や私の妹を殺した奴らが憎いのです。だから……協力してください!」
「協力?」
アーノルドはようやく手を離す。
「はい。彼らの国を落として、私たちの国を再建するのです」
「それを? 何人でやるんだ?」
「……それは、まだ……」
そもそも、この国に恨みを持っていることを告白すること自体、危険なことなのだ。なかなか同志を探すのは難しい。
「ふ〜ん。まあ、どうせ、俺も行く場所なんてないわけだし、手伝ってやるよ」
アーノルドは笑顔になる。
「ありがとうございます!」
「じゃあ、とりあえず義姉様の家を拠点とするか……。よし、義姉様の家、入っても大丈夫か?」
「あ、それが……」
私はアーノルドに、今日王都に来た経緯を知らせた。
「ああ、じゃあ勝手に抜けたら、その家族心配してるんじゃねぇの?」
「そ、そうですよね……」
「じゃあ、俺も一緒に行ってやるから、その家族を探そうぜ!」
「はい、ありがとうございます!」
私たちは、王都から出てくる門の前であの家族を探した。すると__。
「あっ! 居ました! あのちっちゃい女の子達です!」
私は奥の方に、人の波に呑まれながらも周りをキョロキョロしている3人を発見した。
「おー、人が多すぎて誰のこと言ってんのか分からんが、とりあえずそいつらがこっちきたら一緒に帰ればいいんじゃね?」
アーノルドは目を凝らしながら言う。
「あ、ありがとうございます」
……あれ? 私は彼らと一緒に帰る。なら、アーノルドは?
「……アーノルドはどうするのですか?」
私は聞く。
「あ〜、俺? 俺は……そういえばどこにも行くところねぇな」
「き、気づいてなかったんですか!?」
私はびっくりして叫んでしまった。
「おう。忘れてた。じゃあ、義姉様と一緒に、勝手にその家族について行かせてもらうぞ?」
「あ、はい。それがいいと思います。なんなら私の家に住んでも大丈夫ですよ」
私はニコリとする。
「え? それ、義姉様が言うのか? 腹違いの兄の嫁と一緒に住むとか、おかしいでしょ」
アーノルドは苦笑いする。
「あ、いや、言ってませんでしたっけ? 家にはカムレアもいますよ……?」
「はっ? はぁぁあ!?」
アーノルドは叫ぶ。
(なんだと!? 一国の王妃が臣下と2人ぐらし!?)
「え、そんなに驚きますかね?」
私までびっくりしてしまった。
「あ、義姉様、話は後にしよう。あの家族が近くに来たぞ」
「へ? ああ! レベッカちゃ、ん……?」
私はそう言いかけた時、体が固まってしまった。
彼らの後ろ側。つまり、私の真正面に見える王城。そのベランダに、大砲のようなものが見えたのだ。大砲の後ろにいる兵士は火を持っているようにも見える。
一瞬にして、顔が青ざめていくのを感じた。
……この地を爆発、する気なの?
あり得ない。自国の民がこんなにも大勢いる中で、私たち2人のために、あんなに大きい砲弾を打つなんて。
……違う。そうだった。ここは元々、私達の国があった場所。つまり、ここに居る民たちは、遠くから来ている者以外、元々は、私達の国の__。
そんなの、そんなのって……。
「あれって……」
どうやら、アーノルドも気付いたようだ。
「大砲……ですよね?」
私は振り向いて言う。
「っ、逃げるぞ、義姉様!」
アーノルドは私の手首を掴む。
「っ! 待ってください! 皆は、この国の、いえ、私達の国の民は!」
「そんなのいいんだよ! まずは自分たちが助かることが先決だ!」
「嫌、嫌!」
私は民衆をかき分けていく、アーノルドに手を引かれながらも民衆に叫ぶ。
「逃げて! 貴方達も、早く……!!」
涙が溢れる。
「はは、何言ってんだあいつ」
「なにかの劇の演目か?」
「馬鹿じゃねぇの?」
民達は笑っている。
「レベッカちゃん! おじさん! 奥さん!」
私は大声で叫ぶ。
彼らと目が合った。
「後ろ!」
私は叫ぶ。
どうやら3人は気づいたようで、急いでこちらに向かってくる。
ああ、よかった……。
相変わらず、民衆は笑っている。けれども、一人でも、多く救えるならば……。
私とアーノルドは門の外に出る。
「大丈夫だな!?」
「はい。ここまでくればひとまずは……」
「お姉ちゃん!」
後ろから、声が聞こえたとともに、小さい手が背中に当たった。声からしても、レベッカちゃんだろう。
「あ! レベッカちゃ……」
後ろを振り向く。
すると、もうそこは火の海で、何もかもが燃えていた。木でできた家も、門にまで火が移っている。
「……え?」
周りを見渡す。
ちょうど、燃えている部分と被害が出なかった部分の境目。さっき声が聞こえた場所で、焼けて千切れたであろう、少女の片腕が落ちていた。
「……っ、いやぁぁぁぁあ!」
1日ぶりに、こんにちはです! また、投稿は明後日なので、お楽しみに〜!




