第25話 秘密の潜入
ありがとうございます!
翌日
今日はカラッと晴れた、晴天だった。
「ん〜! 今日は練習びよりだ! 頑張るぞ〜!」
私は家から出る。カムレアはまだ、部屋で眠っている様だ。
「おはよう、リーンちゃん」
隣のおじさんが声をかけてきた。
「おはようございます!」
「今日は都に行かないのかい?」
「え? 都ですか?」
おじさんは遠出をするような服装をしていた。
「ああ、今日、我が国の王様、ワーリ・サルバドールの演説があるじゃないか。この国の国民ならば、見に行くのが道理だろう」
「そんなことが……」
ワーリ・サルバドール。私たちの国を略奪した王……。
「カムレアくんに昨日言ったんだが……聞いていないのかい?」
聞いてない。カムレアは気を遣ってくれたんだな。
「……はい。忘れていました。昨日、カムレアに言われていました」
私は嘘をついてニコニコした。
「あ〜そうなんだね」
カムレアは私のことを弱いと思っているのだろう。精神的にも、なんであれ。けれど、私はそんなに弱くない。
……一応、王都には行って、王の顔も見たいと思っていたんだ。行きたいな。
「……すみません。行きたかったのですけれど、カムレアの体調が優れなくて、行くのを断念していたのです。もし、よろしければですが、連れていってくれませんか?」
私はまた、嘘をついた。
「おお、妻と娘もいるが大丈夫だよね。ならいいよ!」
「ありがとうございます!」
……よし。これでカムレアにバレずに王都に行ける。が、問題は、遠さから向こうで一泊するだろうから、その時の誤魔化し方だな。
どうしよう……。
「どうしたの? 行かないのかい?」
「あ、すみません!」
私はおじさんについて、馬車の方まで行った。
「こんにちは、リーンちゃん」
おじさんの奥さんは笑顔で言う。
「こんにちは!」
娘のレベッカちゃんもニコニコしている。
「こんにちは、今日はお世話になります!」
私はお辞儀をする。
「ああ、じゃあ、リーンちゃんも乗っていいよ」
おじさんは馬車に促す。
「では、失礼します」
私も馬車に乗り、皆も乗り込んだ。
***
6時間後 王都
「ついたー! お姉ちゃん、私、王都の『マカロン』食べたい!」
レベッカちゃんは言う。
……お姉ちゃん……。
「うん、いいよ。あの、まだ演説まで時間がありますよね?」
私は聞く。
「うん、後1時間ぐらいかな」
おじさんは答える。
「じゃあ、残りの1時間で食べに行こっか」
私は笑顔でレベッカちゃんに言う。
「しっかりしているね、妹でもいるのかい?」
おじさんは聞く。
「……そうですね。妹はいました」
「ああ……。そうかい……」
少しの時間、重苦しい沈黙が流れる。
「……言いたくなかったら言わなくていいんだが、なぜだい?」
「……サルバドール国と隣国との戦争がありましたよね。あの時に、殺されたのです」
「なんだと!? やはりサルバドール国以外の者は人ではない!!」
おじさんは激怒する。
「…………」
「? どうしたのかね?」
「いいえ、なんでもありません。そうですよね!」
私は笑顔でいった。
そんなことを話している間にマカロンが売っている店に着いた。中に入り席に座る。
「すみません。マカロンを4つください」
おじさんは言う。
あれ、おじさん、レベッカちゃん、奥さんで3人じゃない? 私が入ってるのか。
「いえ、私は……」
「いいんだよ。若い子はたくさん食べることに越したことはない」
「……あり、が、とう、ござい、ます……」
私は少し驚いた。さっきまで、あんなに、険しい顔で他国の人を恨んでいた者たちが、こんなにも、優しい顔をするのか、と。
この人たちは、他国の者たちも、知らない者たちも、どんなに仲が良くても、家族でも、皆等しく、1人の、ただの人であるということを知らないのかもしれない。命の重さは必ず、同じだと。誰がどう感じようと……。
どんなに憎むべき相手でも、どんなに愛すべき相手でも、所詮は同じなのだということを、分かっていないのかもしれない。
「……私と同じですね……」
目を瞑り、呟く。
けれど、私はそれを知った上で、私にとっての重さを測り、恨んでいる。だから、きっと、私の方が最低なのだろう。
***
マカロンも食べ終わり少し休憩したら、何やら外の方が騒がしいことに気づいた。
どうやらもうそろそろ始まるようだ。
「おや、もうすぐ始まりそうなのかな?」
おじさんは言う。
「じゃあ、私が先に行って場所を確保しておきますね」
奥さんはそう言い、席を立ち店を出て行った。
「あ、ありがとうございます!」
私は急いで言う。
「じゃあ、僕たちも会計を済ませてしまおうか」
おじさんが言う。
「はい」
私も席を立つ。
そのまま会計を済ませ、私たちも店を出る。
そして奥さんの方に向かうと、もうすぐ、ワーリ王が出てくるようだった。
街は、通れないほどに混雑していてこの国の地方からも沢山の人が来ているとわかるほどに賑わっていた。
『王様の、おなーりー!』
兵士が叫ぶ。
……よし。今だな。
私は、人混みに紛れて彼らの元を離れた。そのまま、人の波から外れて歩く。
そして……私は王城の前にやってきた。息を吸い込む。
落ち着いて……。安心するの、私。きっと、私の読みは正しい。大丈夫。
私はまっすぐ前を見る。目には数ヶ月間、私が住んでいた城が映っている。
「失礼します。"先生"への用事がございまして……。どうしていただけませんか?」
私は兵士に聞く。
「"先生"をご存知なのですね。ならば敵兵などではございませんね。まあ、貴女のような可憐な少女が敵兵なわけがございませんが」
兵士は笑う。
……やはり、先生もといラールドのことを知っている者は少ないのだな。"先生"の存在は最重要機密事項なのかもしれない。また、他の国に渡り、スパイをしているのか……。
ただ、それならば一端の兵士がそのことを知っていることが気になるが。
とりあえず、兵士は私を通してくれた。
そのまま、王城の中に入る。
なぜ王城に潜入したか。それは、ルーク様の遺書を見ることだ。結局、私は敗走したためこの城の地下に眠っている遺書は見れなかったのだ。
私は廊下の角から、地下に行くための階段がある部屋を覗き見る。その部屋の近くには、兵士が2人見張っていた。
地下室の鍵は私しか持っていないため、おそらく、敵国の者たちにとっては全く開かなかった開かずの部屋だ。敵国の城の中の正体不明の開かない部屋なんて、警戒して当然なのかもしれない。
「だからってさ、見張りをずっと付けるとか……」
……さて、どうやって突破すべきか。
正面での真っ向勝負でも負ける気はしないけれど、殺さずに、峰打ちとかで生きてたら、絶対上層部に報告するじゃん? そしたら、私の正体がバレかねない……。かと言って、殺すのは可哀想だしなぁ……。
「う〜ん」
……あ、そうだ!
***
「すみません……」
私は、いかにも貴族っぽい、フリフリの服を着てウィッグを被り、変装をして兵士に声をかけた。
まあ、その服も、隣の部屋から勝手に取ってきた物なのだが。ごめんなさい、持ち主さん。……でも、一応、元々は私の家だったわけだし。
「ここは立ち入り禁止だ。帰りなさい、お嬢さん」
兵士は言う。
「い、いえ、何か、鍵のようなものを見つけまして。どうぞ……」
私はおどおどし、手を口に当てながら、明らかに地下室の鍵っぽい鍵を手渡す。勿論、本物は私が隠し持っているため、これはそこら辺のクローゼットの鍵だ。
「な、これは……!」
「ど、どうするんだ?」
「……そうだな。俺は誰か偉い人に聞いてくるから、お前はここを見張っていてくれ!」
一人はそう言って走って行った。
よし! これで……。
「ありがとう、お嬢さん。でも、もうこんなところ、きちゃダメだよ」
兵士は言った。
「……そうですね。すみません!」
私は兵士のお腹に蹴りを一発、お見舞いした。
「かっ!」
すぐに気絶する兵士。
「ごめんなさい。でも、痛くないようにしたので、とりあえず、すぐ目覚めると思いますから……」
上手くいってよかった。二人だと一人に逃げられる可能性があったから、分断作戦を取ったのだ。
私は謝って、部屋に入る。
すると__。
やはり、忙しくなる(+ストックがなくなってきました……)ので、しばらくですが、2日に1回投稿にしたいとおもいます。すみません。今後ともよろしくお願いします。
明日は、投稿しますが、明後日から2日に1回になります。




