第18話 訓練
すみません! 11時半に投稿する予定でしたが、思った以上に、4時半に投稿した時に伸びたので、それが嬉しくて、ちょっと、今日も早めの投稿をします。ごめんなさい!
「……ひどい熱」
私はルーク様のおでこに手を置く。彼はうなされているようだった。
さっきの男がやったのだろうか。だとしたら何の目的で……? おそらくまた、敵国、サルバドール国の仕業? でも、ヒールを持っていることを知っているなんて……。
『ヒール』私は念じた。が、何も起こらない。
おかしい。今日はまだ一度も使っていないから、魔力切れは起こさないはずなのに……。
やはり、さっきの男がいっていた、『彼女のヒールを使おうともな!』ってやつに関係しているのかな。だとしたらルーク様が心配だ。大丈夫かな……。
とりあえず、状況把握のために兵士たちの宿地に行った。彼らは戦争の準備を着々と進めているようだった。お忍びで来たから、『なんか変な女の人がいる』ぐらいにしか思われていないだろう。
まずいな……。ルーク様がいなければ、戦争の前線に出て指揮する者がいない。ルーク様が倒れてしまっている今、最高権力者はこの私だ。
明日にでも、第二、第三皇子達を集めて最高責任者を決めるとしよう。
明日
「集まっていただき、ありがとうございます。ルーク様が倒れてしまっている今、前線に出て指示をする、最高責任者を決める必要性があります。どなたかなりたい方はいらっしゃいますか?」
私は書類から目を上げて、二人の様子を伺う。
乙女ゲーム内の攻略対象でもある、第2皇子のアーノルド・アークリーと第3皇子のエフレイン・アークリーは目を逸らす。
……はぁ、やっぱり行きたくないかぁ。まあ、当たり前だ。理由は明確。最高責任者は前線に出る役割だからだ。死ぬ確率は当然高い。
ルーク様の様に、武芸が達者ならば自信はあるだろうし、大丈夫だが、第2皇子のようにダンスしかやってこなかった者や、第3皇子のように文学しかやってこなかった者といった、生粋のインドア派の二人には酷だろう。
「どうしよう……」
「あ、の、お義姉様?」
第3皇子、エフレイン・アークリーは手を挙げた。
「どうしたのですか? エフレイン」
第3皇子はそのまま、
「ぼ、僕のように気の弱い者や……」
「俺みたいに、チャラい奴には無理だぞ」
第2皇子は机の上に乗せた足を組み替えながら言う。
じ、自覚はあったんだ……。
「ですよねぇ……」
「っ!」
「ガーン!」
二人とも、攻略対象だからってクセが強すぎるんだよ。ゲーム補正とかで死にはしない気がするけど、絶対行かないだろうなぁ……。
「まあ、考えます。最悪、くじ引きにするので、覚悟は決めておいて下さい」
「ヒッ!」
「うわ、マジかよ……」
すると、扉を開けて入ってきたおじさんがいた。いかにも、歴戦の人というような、ゴツいおじさんだった。
「王妃様、その役、わしがやりましょう」
おじさんはニコリとする。
??? だれ?
「おー! ミルドおじさん! いいんじゃね?」
第2皇子が言う。
ミルドおじさん??
「あの、すみません、貴方は?」
「おお! 王妃様はわしをご存知ではなかったようで!」
『ガッハッハ』とミルドは漫画みたいな効果音で笑う。
「わしは、ミルド・アークリー。貴女の義父の弟ですわい」
と言うことは、前王の弟!? 凄い人じゃない!!
「……そうとは知らず、無礼な真似を。すみません」
「ガッハッハ! いいのじゃよ! わしは権力なんぞに興味はないっ! なになに? 指揮官がいないだと? わしがやる!」
「は、はぁ……」
大丈夫かな、この人に任せて……。
「お義姉様、もしかして知らないのですか?」
第3皇子が言う。
「なにがです?」
「ミルドおじさんは、この国を前の戦争で勝利に導いたから、天才魔術師とか、勇者とかって呼ばれていたんだよ」
「す、凄いですね……」
「がっはっは! じゃろ? なら任せておけぃ!」
魔術師? ということは、彼は魔法が使えんだ。
ということは、私の『ヒール』とかも、数多く打てる方法とか、知っているかもしれない。
「はい。では、ミルド・アークリー様。貴方を最高責任者に任命いたします」
「おう!」
「では、解散します!」
全員がそのまま、部屋を出て行った。
「あ、ちょっと、待ちください!」
私はミルド様を呼び止める。
「うん? どうしたんだ?」
「あの、私に魔力のコントロールの仕方を教えてください!」
「どういうことじゃ?」
「それは、___________。」
「なるほど。では、魔力量を増やしたいということじゃな?」
私は一応、ヒールについてだけ省いて説明した。
「はい」
「それは簡単じゃ。ただただ、走り込みをする!」
「はっ、走り込み!?」
「うむ、走り込みじゃ!」
「目安はどれぐらいですか……?」
「一日に……そうじゃな……。うーん、30分じゃ!」
「そ、そんな簡単に!?」
「30分じゃぞ!? それを簡単と言ったか!?」
「は、はい。30分なんて……」
部活でも、習い事でも、もっと走ってたし。
「な、なら、1時間! どうじゃ!?」
「あ〜。まぁ、はい。じゃあそれで」
「う〜ん、でも、お主、大分魔力量が多いのだな」
「……え?」
「魔力量! 普通の人を1とすると、お主は4ある!」
結構微妙じゃないですか?
私はそう思ったけれど抑えた。だって、普通、チート能力者とかって、100倍とかだったりするでしょ!?
……まあ、なるほど、じゃあその考えでいくと、私は1日に2回使えるから、1回のヒールに2使うという考えでいい感じかな?
「ありがとうございます。また、今度伺うので、魔力量、見ていただいてもよろしいですか?」
「うむ! 構わんぞ!」
「ありがとうございます」
私は早速走り込みの準備をするために部屋まで走っていった。
その後、動きやすい服にして、リボンで髪をポニーテールにして、私は王城内の中庭を沢山走った。せっかくならもっと魔力量を増やしたいと思ったから、ミルド様の言いつけを破り、2時間半走った。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
私は草原に横になる。ここは王城の中だから誰に見られることもない! 王妃の威厳(?)は確保できる!
すると、カムレアがやってきた。
「こんなところにいたんですか? 探したんですけど」
「あぁ……。ごめんなさい」
「……まぁ、いいですけど。ってか、何してるんですか?」
「えっと。ヒールのために、魔力量を増やしたくて……」
「……それは、ルーク様のためですか?」
「え、ええ。それと……」
「これから戦争が始まるのよ、カムレアも行くでしょう? だから、負傷して、その時に治せなかったら、死んでしまうじゃない」
私は微笑む。
「……」
「どうしたの?」
「いえ、なんでもないです。っていうか、オレ、魔法は効かないんですよ……?」
「あ……。じゃあどうすべきかな……」
****
そのまま、廊下を歩いているカムレアは、
「はぁ、何聞いたんだオレは……」
と、ため息をついた。
翌日
「ミルド様! 軍の方はどうですか?」
私は城内でミルド様にあったため、声をかけた。
「おはようですじゃ!……はい、奇襲を仕掛ける準備は今日で終わると思うぞ。じゃから、って……!」
「? どうしましたか?」
「王妃様、昨日、何時間走ったのカナ?」
「はい、えっと……2時間半です!」
「に、2時間半!? すごーい、若い子、すごーい。わしには無理〜」
「それがどうかしましたか?」
「うん、お主、凄いことになってる」
「?」
「じゃから、昨日はえっと……4って言ってたじゃろ!?」
「はい……それが?」
「その数字でいくなら、それが、今、8になっとる!」
「に、2倍!? それ、本当ですか!?」
「バカモノ! 本当じゃないことを言うか!! いや〜マジですごいの見たわぁ〜……」
うっ……。キャラの個性が強い……。というか、8ってことは4回程度、『ヒール』を使えるのか……。
「す、すごい……!」
「だから言ったじゃろう? すごいことになっとるって。普通、2時間半やったとしても、こんなに上達しないんじゃ。お主、何者なんじゃ……?」
「っ!」
まずい……。なんか、外の世界から来たとか勘繰られた……!?
「……」
「なんつって! ただの王妃様じゃよなぁ!」
また、『ガッハッハ』という笑い方をする。
「は、ははは……」
「んじゃ、またなぁ!」
ミルド様はそのまま歩いて行った。おそらく奇襲作戦の準備でもするのだろう。
「あ、ありがとうございました!」
ありがとうございました!