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  作者: おきび
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第2話

信士とおじいちゃんはお店の奥に行った。


「ねぇ摩耶。なんで信士って義手なの?」


ふと心に浮かんだことを聞いてみる。


「私も詳しい事は分からないですけど、おじいちゃん達の会話から盗み聞きした感じ、拾われた頃から両手両足無かったらしいですよ」


この子は来栖摩耶。さっきの来じぃの孫で、今は二人で生活してるらしい。


前、両親はいないのって聞いたら笑って無視されちゃって悲しかった。


とまあこんな事は置いといて、今摩耶の口からスゴく興味が唆られる事を聞いたので問い詰めようと思う。


「え?拾われたってどういうこと?」


「なんでも赤ちゃんの頃に川に捨てられた所を、森に住むお爺さんに拾われたそうなんです。誰が本当の親なのかも分からないなんて、可哀想ですよね」


信士の意外な過去に私は驚きを隠せない。

普段信士は自分のことを何も話さないし、いざ聞いてみても無視の一点張り。その度に私は怒りそうになるけど、さすがにそんな過去を持っていたら、喋りたくも、教えたくもない気持ちも分かる。


「そ、そうだね。可哀想だね…」


それにしても、我ながら暗い話をしてしまったと、今更後悔してみる。


私の予想だと妖を狩っていたら、たまたま攻撃を受けて両手両足を無くしちゃったのかな、って感じだったんだけど、まさかここまで重い話だったとは、私もまだまだ人との会話に慣れていないと、嫌でも実感させられる。


どうにかして良い雰囲気に戻さなきゃいけないと思い、適当に別の話題を切り出してみる。


「そ、そんなことよりさ、ここにある面白そうなやつ。ちょっと教えてよ摩耶」


「ああ、退魔の武器ですね。いいですよ。といっても、ここにあるのは私たちの護身用です。もっと本格的な物は、…はい、こちら。サイレンサー付きハンドガン型の物です。銃身自体はただのハンドガンなんですが、銃口に特殊加工がされており、特攻の印が押された銃弾を使う事で、人ならざるものに対し更に威力を増してくれる代物です。サイレンサーは、基本退魔の仕事は隠密重視のものですので、通常のそれよりも音を出さない様な仕様になっています」


そう言って摩耶は黒光りするプラスチック材の塊を手渡してきた。


手に持った感じは、見た目より軽いという感覚だ。それでいて、手に吸い付くような持ち手はまるで、今まで使い慣れてきたかのような錯覚を起こさせる。


そこでようやく私は感覚に身を任せ、セーフティーを解除しようとしていたことに気づき、そっと元あった場所に戻す。


けれど、摩耶はそんな事は露知らずの様に説明を続けながら、他の道具を探し出している。


そんな中私は、一つ面白そうなモノに目を付ける。


「摩耶、コレって何?」


それは配色は白のみで、通常のハンドガンよりは少し大きいくらいの大きさ。


「あ、それはまだ試作段階中の─」


瞬間、大きな炸裂音と共に屋根にサッカーボール大の穴が開く。


結果的に私は、自身のうちに眠る、というより起きてしまった興味を抑えることができず、引き金を引いてしまっていた。


初めて引き金を引いた感想は、とても軽かったです。


信士が昭仁に頼んだ義手義足の修理が完了した時刻丁度に、表から尋常では恐らく鳴ることのない爆発音がした。


信士と昭仁は言うまでもなく音に反応し、急いで店の表へと向かう。


そこには


「どうした!」


「あ…、やっほー信士…義手の修理終わったんだ…」


容姿とは似合わない得物を持つアリエスタと、


「……」


かぶりを抱え蹲る摩耶。そして謎の光が差す天井。信士は刹那で理解する。


最早憤慨に至るまでもなく、呆れ何も言えないという心境で、弛緩と怒りが混ざり合う空気の中、いつの日かアリエスタ自身が言っていた、陽の光に当たると消えてしまう、という体質を思い出し咄嗟の反応でアリエスタへと飛び掛かり、どうにか日陰の濃い場所へと連れ込む。


「ありがとう、信士」


「そんなことはいいから、何があったか説明しろ」


信士は怒気を込めてアリエスタを質すが、目を合わせようとせず白を切る。


すると横から申し訳なさそうに摩耶が顔を覗かせ、何か言いた気な雰囲気を醸し出す。


「…すいません信士さん!私の不注意でした。実はそれ私の試作品でして、まだ威力調節中のものだったんですがきちんと整理出来ず、既製品と混じっていて…」


「御託はいい。要はソイツをアリエスタが勝手に使ったんだろ。…ったく」


そこで信士は、ふとここまで大変な事が起きていながら、今の今まで一言も発さない人物がいることを。


そこでその人物がいる方へと首を運ぶと、


「お前らいい加減にしろ…」


やはり来栖昭仁は憤慨の極みに至っていた。


その言葉を聞き、アリエスタと摩耶はそそくさと摩耶の部屋へと向かう。


信士も同様、一言も発さずに再びSTH-3型の引戸に手を掛け、逃げる様に店を出る。


暇を持て余す為に来た来栖亭を一言放っただけの圧力で追い出された形になってしまい、また一から考え直さなければいけないと思い、気怠い気持ちになる。


その時ふと見上げた空は、入店前と変わらず何処までも蒼い蒼穹であった。



あの人は何時までアレと向き合っているのだろう。


不安になる。


あの人が彼処までアレに熱中しているのを初めて見る。

別段おかしな事ではない。


そうよ。何もおかしなことなんてない。私はあの人のそういうところが好きだったから。それに熱中してくれるのは良いこと。


それでも、彼が頑張る程私の何が欠けていくのは何故なのか。

空の境界大好き!

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