百鬼 案山子
「後ろを向いちゃ駄目」
かなり夜も深くなり
夜食を買いに外出した帰り道
電灯も視界に入る限り
一本しかないような道で
制服を着た少女がいた
ここで声をかけたら
自身が不審者となり
通報される可能性の方が高いが
あまりにもその少女が怯えていたもので
声をかけずにはいられなかった
選択を間違い最悪の結末になる
そんな漫画を昨晩読んだ事で
謎に正義感が働いたのかもしれない
しかし
少女からの返答は
「後ろを向いちゃ駄目」
だった
支離滅裂
と言ってしまえばそこまでであるが
そんなありがちな台詞を言われて
こっちこそ
やばい人に話しかけてしまったかもしれない
小さな不安があったが
事態はより深刻であったらしい
少女のその言葉を聞いて考えていると
確かに
後ろから気配を感じた
少女にたった10文字以内で救われた
面白半分で買った
鹿肉弁当が今頃冷え切っているだろう