最後の晩飯そして異世界へ
俺はレインと異世界に行く事を決めた。
ただ、、光ともう1人、、[神崎星那]
この2人には別れを告げなくてはならない、
俺は屋上から教室に戻ると光が急いで寄ってきた。
「蒼空!お前大丈夫なのか!?」
「一応ケガもして無いし、、
大丈夫って事で良いんじゃないか?
光こそ手は大丈夫なのか?」
「少し痛めたけどな、
これぐらいなら大丈夫だよ笑」
「なぁ光、今日の放課後時間貰えるか?」
「あの女の事でか?」
「さすが光だな、察しが良い。」
「わかった、じゃあ詳しくは放課後な。」
俺達は始業式を終えて、
他の行事も終わり、
淡々と過ごしていたら、
気が付けば放課後になっていた。
クラスに残ったのは俺と光だけである。
「光、あの女の事を話すぞ?」
光は頷き先を促す。
「先に結論から言うと、、
俺はあの女、レインと異世界に行こうと思う。」
光はまだ何も言ってこない。
ただまっすぐ俺を見ている。
「レインはこの世界の人間じゃない、
全く違う世界から来た人間だった、
そんなこっちの常識も通じない奴が、
俺に自分が住む世界を助けて欲しい
って言われたら俺は見捨てたくないって思う。」
嘘だ、、俺は自分で言いながら気付いていた。
異世界に行こうと思ったのは、
この世界に居場所が見つけられなかったからだ、
レインが良い口実をくれたに過ぎない。
今まで黙ってた光が、
ゆっくり息を吐いた。
「フゥ〜、、蒼空、
お前の話しはわかった。
ただ、、俺も連れて行け!」
光の予想外の返答に俺は面食らってると、
「そんなに意外か?
俺は親友を未知の世界へ1人で行かすほど、
落ちぶれた奴じゃないんでね。」
そう、、光はこういう奴だ、
俺を見捨てないでくれる。
だからこの世界に居ても
俺は踏みとどまっていられた。
「ありがとな、、光。」
光は当たり前だって言い笑った。
俺も笑った。
光との話しが終わり、
俺はその場を後にし、
俺の姉兼、親代わりの神崎星那へ電話を掛けた。
星那は俺をこの世界に繋ぎ止めてくれた
もう1人の存在。
「もしもし星那?今大丈夫か?」
「何よ?今日帰り遅いの?」
「大事な話しがある、時間作れるか?」
「うーん、、具体的に何時が良いとかある?」
俺は少し考えた。
星那は自営のアパレルをやっている。
俺より5つ上の姉は両親が3年前に亡くなってから、
大学を辞めてまで俺を育ててくれた姉だ。
下手な時間は避けたいが、
事も事なので譲歩せずに言った。
「出来れば夕方には会って話したい。」
「わかったわ、でも、、
ふざけた事だったら怒るからね?」
「わかってるよ、そんじゃ夕方な。」
俺は星那との電話を切った。
その後は夕方までの間、
スーパーへ買い出しに行き、
姉と過ごすであろう最後の晩飯の材料を買い、
家に帰る。
俺は買った食材を使い3品ほど料理を作った。
鯛と蛸のカルパッチョ、
シーザーサラダ、
ペスカトーレの3品。
両親が死んでから2年ほどは
星那が料理をしてくれたが、
去年からは俺が作るようにしてる、
せめてもの姉孝行だと思って。
星那は料理を作り終えてから
30分ほどで帰って来た。
「ただいま〜」
[神崎星那]身長は165cmと女にしては高く、
髪を金髪に染めてるやたら目立つ姉である。
「あぁ、おかえり星那。」
「あれ?今日何かのお祝いだっけ?
どーしたのこんな美味しそうな料理は。」
「まぁ、とりあえず着替えて手を洗って来いよ。」
「それもそうね。じゃあちょっと行ってくる。」
星那は自室に戻り着替えを済ませ、
洗面所へ駆け込んで行った。
手を洗い終えた星那は俺の対面に座る、
料理を見ながらも俺の言葉を待っていた。
「星那に大事な話しがある。」
「それは聞いた。それで?」
俺は今日あった事をできるだけわかりやすく、
そして俺がレインと光と異世界に行く事を告げた。
「これで俺の話しは全部だ、
許してくれとは言わない、
育ててくれた恩も絶対に忘れない。
でも、、俺は異世界に行きたい。」
「初めて会った見ず知らずの人、
しかも胡散臭い人の言うことをまともに聞いて、
はい、そうですかって私が言うと思う?」
「星那は言わないよな、、」
「でも、、蒼空は行きたいのよね?」
「あぁ、俺は異世界に行きたい。」
「はぁ、、、わかったわ、
ただし、、一つだけ私と約束しなさい。
必ず帰って来るって!
蒼空は私にとってたった1人の家族だから。」
そう言われた俺は改めて星那に感謝した。
「わかった、必ず帰るよ。
いっぱい土産も持ってさ。」
星那は呆れた顔をしたが、
その奥に悲しさも秘めていた、
俺はそれに気づきながらも心で謝った。
そして感謝した。
『星那姉ちゃんありがとう。ごめんなさい。』
姉と弟2人で昔の事、
両親の事を話し、
料理を食べて俺達は各々の部屋に戻った。
その日の夜。
俺は身支度を整えていた、
比較的に動き安い服装にしたつもりだけど、
俺はこの世界の何処にでも居る
普通の高校生だよなと思い、
制服に着替え直した。
時刻は夜8時、
最後に星那と話そうと思い、
星那の部屋の前まで来たが、
中から嗚咽が聞こえて来たので断念した。
『星那姉ちゃん、、行って来ます。』
俺は家を出てレインが居るであろう
学校へ向かった。
そして校門前に同じ制服を着てる光が待っていた。
「おせーぞ、蒼空!」
「ホントにいいのか?」
「言ったろ?お前を1人にしないって。」
「わかった。じゃあ行くぞ!」
俺の予想が正しければレインは屋上に居る、
夜の学校に入り込み、
階段を駆け上がった。
屋上にたどり着くと、
目の前にレインが音もなく目の前から現れた。
少し俺や光は驚いたが、
すぐに平然を装う。
「そちらから来て下さったのですね。
神崎蒼空さん。」
「あぁ、準備も済んだしな。」
「そうですか、、そちらの方は?」
レインは光を見て怪訝そうだ、
まぁ隠しても仕方ないので、
ハッキリと伝える。
「こいつは光、俺の親友だ。
俺と一緒に異世界に行く事を決めた。
つーか、、一緒に連れて行って欲しい。」
俺が素直にレインに伝えると、
レイン一考し静かに告げる。
「わかりました、、光さん?でしたね。
私はレイン・シーズン。
あなたを私達の住む世界に連れて行きましょう。」
光はガッツポーズをし、
俺は内心安心した。
「それで、、レイン、
俺達はどうやって異世界に行くんだ?」
俺は単純な疑問をぶつけた。
だけどそんなものは杞憂に終わる。
「蒼空さん、光さん、、
これから空間転移魔法を使います。」
足元に魔法陣が浮かび上がる。
そしてレインに魔力であろう光が集っていく。
そして静かにレインが唱えた。
「超空間転移魔法、世界転移、、」
俺達の周りが魔力の光で包まれた。