ホワイト企業『魔王軍』を率いた美人大魔王が転生したら、ブラック企業『教団』の聖女として祭り上げられてしまいました!
「み、見事だ勇者よ……だが余は不滅……何度でも甦り『白の魔王軍』はやがて世界を埋め尽くすだろう……」
「うるせぇさっさと死ね!」
「ぐぼあぁーー……」
「はっ!?」
こっ、ここは……
そうか。余は勇者に負けたのか。だが、とっさに使った転生の秘術は問題なく作用している。くくく……勇者め。何度殺そうと余にとどめを刺せぬとは不甲斐ない奴よ。ここでしばし力を蓄えて……再び余の軍団を作ってくれようぞ。
さて、現在地は……『地点』
ふむふむ。西のD51か。人間どもの国の都ではないか。
そして時代は……『時読』
ふむ、魔暦2056年 5月 6日か。余が死んでおよそ50年か。妥当なところであろう。
くくく……今回も転生の秘術が冴えに冴えておるわ……
この国、この時代で最も清らかな乙女の体に生まれ、10歳の誕生日に記憶が甦るよう設定しておいたが……寸分の狂いもない。
余はいつも清らかでなくてはならない。おぞましい男などという下等生物はこの世から絶滅させてくれようぞ……余が全魔力を取り戻すのはおよそ5年後、くくく……世の男どもよ、せいぜい束の間の命を楽しむがいい!
くっ……余としたことが! ぬかったわ!
この世で最も清らかな乙女に生まれたばかりに!
聖女として祭り上げられておるではないか!
くっ、確かに余の美貌であれば無理もないことではある。前世でも、その前でも、何度生まれ変わっても余は絶世の美女だからな。人間などという下等生物が崇め奉るのも無理はない。まあよい。たった5年だ。それだけ辛抱した暁には……白の魔王軍を復活させてくれるわぁ!
それにしても……なんだこの集団は!
『漆黒絶神教団』だと? 余が最も嫌う色である黒! おぞましき色よ!
しかも朝5時起きだと! 冷水で水ごりし、濡れたまま神に祈りを1時間! そのまま食事もなしに今度は外で太陽に向かって祈るだと!? やっと朝食かと思えばなんたる粗食! 余の口に合わぬも程があるわ! まだ配下のメスゴブリン共の方がまともなものを食べておるわ!
余の朝はローズヒップティーと太古より決まっておるものを!
その後は悩めるカス共の声を聞くとか……どいつもこいつも余の姿を見ては目の色を変えおって! このカス男らめ!
夜は夜で聖なる沐浴との名目で湯につかるのだが……ここの奴らは変態しかおらぬのか! 余の入浴後の残り湯を争うように汲んでは瓶に詰め持ち帰っておる!
余の体に危害がないだけマシなのか? 全く、先が思いやられる……
ラジオの企画の1000文字のやつです。