視界の広がるあの場所で - 33
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――そんな一時があってから、少しの季節を経て。
わたしと学は、恋人同士になった。
もちろん、恋人になって終わりじゃない。
大変な日々が、めまぐるしくやってきた。
約束したように、いろいろな場所へ行った。
わたしの知っている場所、知らない場所。
学の見つけてきた場所、苦手な場所。
二人で見る景色は、同じようで、いつも違っていて。
知らない一面を知りながら、わたし達は、次第に距離を縮めていった。
推薦、試験、進学、新生活、アルバイト、就職。
どれもが大変で、新鮮で……。
今までの考えを変えるくらい、刺激的でもあった。
もちろん、楽しかった時ばかりじゃない。
何度も遊び、数えられないくらいケンカもして。
一緒に、涙を流しながらも
……わたし達は、それらの日々を過ごしてきた。
幸せ、と言っても、いいんだと想う。
そう想えたからこそ、お互いに一緒にいるのが、当たり前のようになっていった。
……でなければ、二人で過ごす慌ただしい日々を、越えることはできなかった。
今振り返れば、そう想う。
学――今は、夫となった彼――は、いつも、わたしを支えてくれた。
恋人となり、妻となり、母となった、私のことを。
彼には、ずいぶんわがままを言ったりしたけれど、支えるようにずっと側にいてくれた。
高校最後の大会で、結果が出せない時も。
進路選択で、親と意見が食い違った時も。
合格は無理だっていわれた、希望の大学に合格した時も。
彼との今後のため、自分の就職活動を悩んだ時も。
……ずっと、ずっと。
一緒に、同じ歩幅で、歩いてくれた。
もちろん私も、そうするようになっていった。
彼の喜びや悩みも、一緒に、寄り添っていきたいと。
自然にそう想えるよう、変わっていた。
……だから、指輪をはめてくれた時は、泣いてしまった。
もう、声もでないくらいに。
(結婚。……私も、大人になったのかな)
指輪を見ると、心のどこかで、あの人の姿が浮かぶ。
――ずっと姿を見ていない、憧れの人の姿を。
けれど私達は、それからもずっと変わっていった。
仕事を持って、お互いの忙しさが増したこともある。
親戚づきあいや地域との交流も、今後を考えれば必要だった。
……今後。
二人で育てる新しい命に、私達は、もう頭がいっぱいだった。
――しばらく、本は読んでいない。
インターネットやスマートフォンの普及で、以前より、本を読む機会は減ってしまった。
成長した子供も、昔の私より、本を読んでいないかもしれない。
そうした時代の変化を、感じながらも。
私は、今の生活に、不満を覚えたことはない。
今日もまた、夕食の支度を終えたら、椅子について。
安定した日常に、心地よさを覚えながら。
いつものように、新聞のチラシへ、眼を向ける。
……そんな当たり前のことを、している時だった。
何気なく眼に入った記事に、記憶を、掘り返されてしまったのは。
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