探したのはこの場所で - 01
「――ッ!」
テーブルへと置かれていた地域情報誌。
それを見て、私は驚愕の声を上げてしまう。
イベントや市政などの記事の片隅に、ある記事が記されていたからだ。
――老舗本屋の閉店。その日付は、今日。
そのニュースを見て、私は落ち着いていられず、急いで車のキーを持つ。
残り時間まで、あとわずかなことにも気づいていた。
だからこそ、気が焦ってしまう。
驚く妻を説得して、肌寒い車内へと身を預ける。
風の冷たさに少しだけ冷静になりながら、だからこそ、エンジンを回転させて向かう必要性を改めて感じる。
(……あの頃は、自転車で行ったものだったが)
今更ながらに、ある存在のことを想い出したから。
そして再会の機会は今日しかないと、強く感じさせられたからだ。
――その本屋で私は、彼女に出会った。
私にとって、とても大切な時間を探してくれた、彼女と。
頭の片隅で当時のことを想いかえしながら、クラッチを入れて車を走らせる。
妻と娘のいない車中はとても静かで、まるで別の車のようだった。
(昔は、よく知っている静寂だった……気もするが)
ラジオを聴く気分にもなれず、私はただアクセルを踏んで車を走らせた。
ただ、慣れた道が続くせいか余裕があり、自然と物思いに耽ってしまう。
振り返るのは、彼女のこと。いつ彼女と出会ったのか、記憶をたぐる。
それが何歳の頃だったのかは、もうおぼろげで想い出すことはできない。
初めて踏み入れた、今向かっている書店は、当時の私にはとても巨大で未知のものだった。
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