クラスの女の子を全員落とすっていう、ふざけたゲームをしています。
初めまして。桐谷隼人といいます。僕は小学生の時、あることに気が付きました。どうやら女の子にもてるようなのです。
中学生になっても、あいかわらずモテモテで、バレンタインには制服に匂いがつくまでチョコレートをもらいました。
そして今日から高校生。僕は心に決めました。
「クラスの女の子を全員おとす!」
と。
僕はきっとゲスでしょう。いいえ、ゲスです。しかし、考えてみて下さい。目的もなくモテ続けても、邪魔くさいだけでしょう。ここはいっそ、目的を作ってしまったほうが、かえって気が楽かもしれない。
ということで、このゲームのルールを発表します。
・ターゲットから愛の告白、もしくはそれと同等なものを受け取ったとき、ターゲットが「おちた」とみ なす。
・自ら愛の告白、もしくはそれと同等なものをターゲットにしてはならない。
・ターゲットはあいうえお順に決定する。
・いかなる時、誰であっても、交際もしくは体の関係をもってはならない。
・上記のルールが破られたり、このゲームの存在が他人に知られた場合、ゲームオーバーとなる。
僕はこのルールにのっとって、高校生活を満喫することを宣言しよう!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
出席番号1 有川美里
最初のターゲットは、有川美里さんです。高校に入学してからまだ一週間ですが、有川美里さんについて分かったことがあります。
一つ目は、とてもまじめだということ。制服は校則を一つも破ってない、正しい着かただし、日直の仕事も、さぼりませんでした。
二つ目は、頭が良いということ。ある数学の授業で、誰も答えれなかった問題を解いたのも、彼女でした。
三つ目は、まだ同じクラスに、仲の良い子がいないということ。もしかしたら、ほかのクラスには仲の良い子がいるのかもしれませんが、僕が彼女を見かけるときはいつも一人でした。
・・・。わかっていることは少ないですが、やらなければいけないことは多いです。
まずは、話しかけてみようと思います。
放課後、僕は有川さんのところに向かいました。目的はもちろん、有川さんに僕を認識してもらうことですが、6時限目にあった数学を教えてもらう、という理由で話しかけたことにします。
「有川さん、聞きたいことがあるんだ。今、時間大丈夫?」
僕が自分の席に座っていた、有川さんに声をかけると読んでいた本を閉じ、きょとんとした顔を上げ
ました。
「わ、私?」
「うん。ここが授業聞いてもわからなくて。有川さん、教えてくれないかな?」
僕が何人もの女の子をおとした笑みを浮かべると、有川さんは恥ずかしそうにうつむきました。
「桐谷くんだったら、ほかに聞ける子たくさんいるのに、どうして?」
「どうせなら、やさしい子に教えてもらいたいじゃん」
僕がそう答えると、有川さんはますますうつむいてしまいました。
それから僕は、有川さんに教えてもらい、終わった後は有川さんを家まで送り届けました。
「桐谷くん」
有川さんに話しかけ始めてから7日が過ぎました。最近では有川さんから僕に話しかけてくるようになりました。また、グロスを塗っているのか、唇がプルプルになっています。
「どうしたの?有川さん」
「えーっとね。このあと一緒にスイーツでも食べに行かない?」
「いいね。甘いもの、僕好きなんだ」
ここにポイントがあります。「僕好き」というフレーズを入れると、女の子はどうやらドキッとするらしいのです。有川さんに効果があるかは、わかりませんが。
有川さんとスイーツを食べ終えた後、僕たちは夕日に照らされた公園にいました。
「おいしかったね」
「うん。おいしかった。有川さんセンスいいね」
女の子はほめておけば、勝手にときめいてくれる。
僕たちの間を風がサァーと流れました。その瞬間、有川さんが唇をキュッと結ぶのが見えました。
「桐谷君。私、あなたのことが」
有川さんが小さくほうっと、息を吸いました。
「好きです」
有川さんはうつむきました。僕は有川さんについて分かったことがありました。とても、恥ずかしがり屋なのです。
「つきあってください」
僕が待ちに待った言葉でした。ここまで真剣に女の子と向き合ったのは初めてでしょう。だから、僕は有川さんに、感謝を込めて言うのです。
「ごめんなさい」
有川さんは泣き笑いのような顔で、わかった、というと走ってどこかに行ってしまいました。
暖かいとはいえ、まだ4月です。頬に触れる空気は、心なしかさっきより冷たいです。
僕が作ったこのゲーム。ようやく一つのミッションをクリアしました。
さあ、次のミッションに取り掛かりますか。 おわり




