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Utinam tibi sit felicitas──あなたに幸せあれ

作者: 奈瑞菜
掲載日:2017/12/18

──私の大切な人たちの幸せを願っているわ…

昔むかし、あるところにとても美しいシンデレラという少女……の侍女がおりました。

彼女は大層な働き者で朝は陽が昇る前に仕事を始め、夜は草木も寝静まった頃に眠りにつきます。

彼女の存在を知っているのは御当主である旦那様とその娘のシンデレラお嬢様のみ…義理の母や義姉たちはシンデレラに侍女がいたことすら知らなかったのです。

侍女はシンデレラお嬢様のことが大好きでしたのでお嬢様をいじめる継母や義姉たちのことが大嫌いでした。

また、それを知りながらお嬢様をお助けすることのできない自分が嫌いでしかたありません。

ある日、侍女はふらりと書庫に立ち寄りました。

一室を埋め尽くす本を見渡していたその時です、青い色の表紙が美しい一冊の本を見つけました。

そう、それこそが彼女の魔法使いとしてのはじめの一歩だったのでした。


その本を開いてみるとこのような一文からその本は始まりました。

いわく『魔法使いとは己が為に力を奮ってはならない、誰かの為に幸福を告げる使者となるのだ』と…

その日から一生懸命魔法使いになるための修行しました。


彼女の1日は呪文の書き取りから始まります。毎日欠かさず丁寧に書き連ねていきます。それからお屋敷のお仕事を終えると、今度は呪文を唱え魔法の力のコントロールの訓練を行い、寝る前には月の光を浴びてベットに入ります。

そんな生活を始めてから5年過ぎた頃、お城では王子様のお嫁さんを探す為国中の貴族の娘を集め舞踏会を開催することになりました。国中の貴族の娘を集めるのですから当然、シンデレラお嬢様にも招待状が届きました。嬉しそうなお嬢様の為に侍女は素敵なドレスを用意しました。

舞踏会当日、お城に向かうため綺麗に着飾ったシンデレラを見て継母や義姉たちは焦ります。なぜなら自分たちの存在が霞んでしまうほど着飾ったシンデレラが美しかったのです。─ ─これでは娘たちが王子の目にとまらなくなってしまう!

そう思った継母は難癖をつけてシンデレラのドレスをビリビリに破いてしまいました。

『そんなみすぼらしい姿で城にはいけないわね』と高笑いしながら継母たちは舞踏会に向かってしまいます。

侍女が用意してくれたドレスを破られ嘆き悲しむお嬢様。そんなお嬢様を見て侍女はどうにかできないだろうかと一生懸命考えます。


その時です、頭にひとつの呪文が浮かびました。緑の本の最後の頁に書かれていたのはたったひとつの呪文だけでした。それは魔法使いが人生の中で一度だけどんな願い事でも叶えることができるという魔法でした。ただしその呪文を使ってしまったらもう二度と魔法を使うことができません。

─それでもいいと侍女は思います。なぜなら侍女が魔法使いになったのは大好きなお嬢様の為だったのですから!


侍女は台所からカボチャとねずみ、そしてお友だちの小鳥を呼びお嬢様の前に連れていきます。

そしてお嬢様にこう声を掛けました。

─『これからお嬢様にとっておきの魔法をおかけしましょう!』そして侍女は呪文を唱えました

『Utinam tibi sit felicitas!』

魔法の力がなくなっていくのを侍女は感じます。

破られたドレスは綺麗なドレスになり、カボチャは馬車にねずみは美しい白馬になりました。

そして小鳥は従者と行者になり、最後に侍女の持っていた杖がキラキラと輝く硝子の靴になりました。侍女はお嬢様に靴を差し出しながらこう告げます。『この魔法はきっと午前0時の鐘の鳴る頃に解けてしまうでしょう、鐘の音が鳴る前にはお帰りください。』と…

シンデレラは頷くと馬車に乗り込みお城に向かいました。


─午前0時の鐘のなる前にはお帰りくださいね…

シンデレラは王子様とのダンスが楽しくて侍女の話をすっかり忘れておりました。

鐘の音がなり終える前に慌ててお屋敷に戻ります。

…お城に靴を片方残して。


次の日から国中の貴族の家にお城からの使者が訪れるようになりました。

侍女の働く伯爵家にも使者がやって来ました。

いわく、舞踏会の日に城に美しい硝子の靴を片方残し去っていった娘を探しているとのことでした。

その残された靴を履くことのできた娘を王妃にするのだと聞いた継母は急いで自分の娘を呼びつけます。

義姉たちもひとりひとり靴を履こうと挑戦しましたが足が大きくて入りません。

この家にも居なかったかと城の使者が帰ろうとしたその時です!

外交に出ていた旦那様が帰宅してきたのは。城の使者に話を聞いた旦那様はシンデレラのことを尋ねます。城からの使者は驚きました。なぜなら継母からは一言もシンデレラの存在について聞いていなかったのです。

城からの使者はこうしてはいられないと近くにいた従者にシンデレラを呼んでもらいます。


その頃シンデレラは狭い屋根裏に閉じ込められていました。継母が城からの使者が来た際に閉じ込めてしまったのです。

扉を開けることが出来ずに座り込んでいたその時です、シンデレラの名前を呼びながらシンデレラを探す声が聞こえてくるではありませんか!シンデレラは一生懸命大きな声を出して場所取り知らせます。それから少しして扉の鍵が開けられました。

シンデレラは何故探していたのか従者に尋ねましたが従者は説明もそこそこにお城からの使者のもとまでシンデレラを案内します。

シンデレラは訳もわからぬまま差し出された靴に足を入れます。

硝子の靴にぴったり足が入りました。それを見ていた継母は顔を赤らめ『偶々その靴の持ち主と足の大きさが同じだったのだろう』と騒ぎたてます。継母は知っていたからです、シンデレラは舞踏会に参加出来る筈がないと…

あんまりにも騒ぎたてるものですから旦那様も城からの使者も不審に思います。娘が王妃になるかもしれないのです。喜びこそすれ、何故そのようなことを言うのかと旦那様が尋ねようとしたその時です!

継母の口からドレスをビリビリに破いた事や普段の虐待紛いの扱いまで1から10まで全て告げられるではありませんか!

全てを告げ終え継母の顔は真っ青、義姉たちも同じです。

愛する娘がそのような扱いを受けていたこと知った旦那様の怒りはそれはそれは恐ろしいものでした。

ですが本当にそのようなことをされたならシンデレラは舞踏会には出られないでしょう。

城の使者はがっかりして靴を回収しようとシンデレラの足元をみたその時です、なんとシンデレラの足元には硝子の靴が片方だけでなく両方揃っているではありませんか!

王子の探している娘を見つけられた城の使者は後日迎えを寄越すことを旦那様に告げ、継母たちにも使者へ虚偽の報告をしたことについて処罰があるだろうということを伝え城へ戻っていきました。

旦那様は従者たちに継母たちをシンデレラが受けていた扱いと同じように扱うように伝えシンデレラと共に自室へ向かいました。

執事に紅茶を用意させてから旦那様はシンデレラに一つ問いかけました。

─ドレスを破かれ、馬車も無いのにどの様に舞踏会に参加したのかと

シンデレラは舞踏会の日にあった出来事を事細かに伝えます。

─昔から仕えてくれている私の侍女が不思議な魔法を掛けてくれたこと、その魔法は午前0時で解けてしまう筈だったこと、ドレスや馬車はなくなってしまったが硝子の靴だけは残っていたことなど全てお話しました。


旦那様は驚きます、何故ならシンデレラのいう侍女は、妻はシンデレラがまだ幼い頃に病に倒れ亡くなっていたからです。


シンデレラに一度自室に戻るように伝えてから旦那様は小さな声で亡くなった妻の名前を呼びました。

すると聞こえるはずのない返事が返ってくるではありませんか!

旦那様には妻の姿は見えませんでしたがそこにいることはわかりました。

旦那様は尋ねます。何故ここにいるのかと。

彼女は小さな声で、未練があったのだと夫に伝えます。

シンデレラお嬢様の、自分の娘の笑顔が見たかったのだと、娘が笑顔で暮らしている姿が見たかったのだと。そしてあなたの事が心配だったのだと。

それを聞いた旦那様は涙をこぼします。だって旦那様はまだ彼女のことを愛していたのですから。

ですが死人が現世に居続けるのはいけないことです。旦那様は妻にこう告げました。

─『君のおかげで娘に幸せは訪れるだろう、だから次は君が幸せになってほしい』とそしてその為にまず、天に昇るのだと。


彼女は涙をこぼしながらこたえました。

─『私はずっと幸福でした。だって貴方に出会えたから』と

そして小さく言いました。

『来世でも貴方に逢いたい』と

そして少しずつ存在が天に昇っていきます。

そんな彼女に旦那様は一言告げました。

─『今から君に魔法を掛けよう』と


とても小さな声で旦那様は呪文を唱えます。

『Utinam tibi sit felicitas.』

それはあの舞踏会の日に彼女が唱えた呪文と同じでした。

その魔法は使ってしまったらもう二度と魔法を使うことができません。

彼女は驚いて旦那様に問いかけましたが旦那様は笑顔を見せるだけ。

次第に彼女の顔にも笑顔が訪れます。

彼女は旦那様に近付きそっとお礼の言葉を伝えそっとキスをすると天へ昇っていきました。


次の日、旦那様はシンデレラに母のことを告げました。シンデレラは全ての話を聞き泣きながら不恰好な笑顔を作ります。

泣いていたらきっと母は安心できないと思ったのでしょう。

シンデレラはその日から少しずつ変わりました。母が安心して眠れるようにと泣くことが少なくなりました。でもけして無理をしているのではありません。

ただ一人で悩みを抱え込むのをやめて大好きな王子様と一緒に歩き始めたのです。


昔むかし、あるところに心優しい美しい王妃と勇敢で賢い王の治める国がありました。

その国には一つ不思議なお話がありました。

─本当に大切な誰かの幸せを願ったときに現れる綺麗な青い色の本があるという。

その本の最後の頁にはある魔法の呪文が書かれている。その呪文は古い言葉で

『あなたに幸せあれ─Utinam tibi sit felicitas』と綴られている。








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― 新着の感想 ―
[良い点] 登場人物のうち善良な者たちには救いがあったこと。 [気になる点] 寓話的な意味が粗方吹き飛んだこと。これはこれでいいとも思いますし、うーん、書いておいて分からなくなってきました。 [一言]…
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