第1章-9
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夢を見ているのか。それにしては感覚がリアルに感じられた。カーテンを閉め切った薄暗い部屋の中で私はパソコンのモニターを見つめている。そこかしこに転がる空いた弁当箱やペットボトルからすえた臭いが広がり、部屋に充満していた。モニターには文字が並んでいたが、目が霞んで上手く認識する事ができない。
立ち上がる。両足の付け根がもの凄く痛んだ。体が重い。余りの痛みに顔をしかめ、手近なベッドに転がり込む。埃が舞い上がり、日にちが経った汗と精液の不快な匂いが立ち込めて私はすこし噎せてしまった。
カーテンを開ける。薄曇りの天気だったが、久しぶりに陽の光を見た私には眩しすぎたようだ。頭の右奥がズキンと音を立てて痛んだ。
この明るさで部屋を一望し、ゴミの多さに愕然とした。テレビでゴミ屋敷を特集した番組を見たことはあったが、現実に存在していたとは思わなかった。ある程度、テレビの演出なのだろうと思っていた。
現実?
窓を全開にし新鮮な空気を入れる。手近かなコンビニ袋に詰めれるだけのゴミを詰めた。それだけの活動で少し息が切れていた。部屋着にしているのだろうスウェットはベッドと同じかそれ以上に臭かった。
部屋の扉を開け外に出る。
ワンルームマンションのキッチン兼玄関といったところ。部屋を超える惨状を見せていた。再び私は噎せ返った。