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第1章-7
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突然画面が真っ白になった。何が起きたか分からないうちに足元が大きく揺れて私は倒れ込んでいた。
機械の故障か、地震か停電かと不安が頭をよぎったが、瞬きを繰り返している間に画面は再び東京ドームを作り出していた。
しかし、足元はまだ大きく揺れていて私はその場に座り込んだ。周りを見回しても動く影はなく、ここが作り物の世界だと再認識させられる。
もう一度、大きく足元が動いた。耳元で金属バットで金属バットを叩いたような不快な音が響いた。
「あぶない!たっちゃん!」
キヨシさんがいつの間にか私の側に来ていたようだ。何かから私を守ってくれているらしい。私のモニターには何もトラブルは映ってない。
応援歌を歌うファン、守備位置につくチームメイト、戦況を見守るダグアウトのメンバーたち。そんないつもの東京ドームの風景。
「上を見ろ!」
顔を上げる。白い塊が天井から降り注いでいた。疑問を感じる間もなく私の周囲は落下物で埋まっていく。
「たっちゃん、こっちだ!」
伸ばされた手。掴み返そうと私も手を差し出すが、それに触れる事は出来ず目の前でかき消えてしまった。