第1章-4
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本番の時間になり、スタッフに呼ばれ展示会場に出て行くとテレビ局の人員以外にもかなりの多くの観衆が撮影風景を取り囲んで見ていた。
司会役のタレントに促されてカメラの前に出たが、他の出演者はいないようだった。
「意気込みをどうぞ」
「エラーをしないように頑張ります!」
一通りインタビューされた後、球体の機械に入るように指示をされた。どうやら他の出演者も何人かすでに別の機械へ入っているようだ。ゲームが始まるまで隠し通すという事らしい。
それもそれで楽しみではあるが。
球体の大きさは2メートルの円形程度だったが、高さはマンションの天井くらいはあるので意外に広く感じる。スタッフと一緒に入りゴーグルの付いたヘルメットのようなものを被される。
電子音と共に文字が浮かぶが、画面は暗いまま。少し不安になってしまう。
スタッフが出て行くと中は私一人になった。視界を奪われた状況で音も聞こえない。怖い事は怖いのだがテレビ局の企画だし大丈夫だろう。
気を休めて待つ事、10分程度。司会者のスタートの声が響くと同時に視界が急に明るくなった。
大きな歓声が聞こえた。
そこは慣れ親しんだ野球場だった。
私は現役時代と同じ格好をして三塁付近に立っていた。