第1章-3
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翌日の仕事は電化製品業界の発表会、日本の企業が開発した新時代の体験型アトラクションに試乗レポートするものだった。
ここに私は招待されていて、テレビ番組の企画として実際に体験試乗する。詳細は伏されていたが、どうやら野球に関係するゲームのようなものと聞いて楽しみにしている。野球に関係するゲストを数人招くとの話だった。
私は身支度を整えると家を出た。携帯電話は昨晩一度鳴ったきり、彼からの着信はなかった。誤発信かもしれない。セカンドバックに携帯をしまい、テレビ局が呼んでくれていたハイヤーに乗り込んだ。
幕張メッセ。
昨年までは年に何度か近くにあるQVCマリンフィールドへ仕事で訪れたものだが、あまり馴染みのない場所だった。幕張メッセに入るのも初めてといっても過言ではなく、意外と広くて殺風景だなと思った。
テレビ局のスタッフに迎えられ出展企業の方と挨拶を交わし、今回の企画について説明を受けた。いかにも技術畑の人といった印象でやたら汗をかき、早口でどもりながらその度にオレンジ色のタオルで拭いていた。
「と、となっている機体に乗ってい、頂きましてゲ、ゲームを体験してもらう企画です」
「野球ゲーム、という訳ですか」
「か、簡単な野球ゲ、ゲームです」
「懐かしい顔ぶれの方もゲストに招いてますので存分に楽しんで下さい」
テレビ局のディレクターは対称的に爽やかな笑顔だった。
どうやら本番まで顔を合わせないようになっているらしい。
「ゲームなんてもう何十年も触ってないから放送できるものになりますかね」
「そこら辺は元プロの方が慌てふためくのも視聴者は楽しいもんですよ」
「げ、現役時代とお、同じ感覚でプ、プレイ出来るゲ、ゲームです」
不安が3割、楽しみ7割といったところだ。