レポート1ー2
人間の進化およびそれに伴う文明の崩壊と新秩序の構築
著:桜 時雨
第一部
PKについて
PKまたは念力と呼ばれる能力は、はじめに、に記した通りアメリカ合衆国で最初に確認された。
このPKはそもそも合衆国の軍事的利用を目的としたもので極秘中の極秘であった。
しかし、情報流出や内部での何らかの裏切り行為があったようでPK開発データが外部に持ち出された。
そのデータを使いサム・アカイシはPK能力者として開発され合衆国の惨事は起きた、とされている。
真偽が明らかにされていないのは合衆国が証拠隠滅に動いたからだ。
だが、論文や実験データやPK開発データ等は合衆国であっても一旦ネットなどに拡散されてしまえば完全に消し去ることは不可能だ。
よって、合衆国が削除しきれなかった深層ログから世界各国は即座にデータをサルベージしてPK能力者の開発を行おうとした。
しかし、ほぼ全ての人類は既にPKの開発を完了させていた。
それがVRによる思考拡張だった。
VRは前述した通りVR内に流れる映像の中にいるような錯覚を起こさせる。
そして、それは脳の神経回路構築の際に多大な影響を与える。
特に魔法や異能力を題材にしたVRゲームは特殊な神経回路を構築させる。
それがPK回路というPKの使用を可能にする神経回路だ。
しかし、この神経回路は誰にでも構築されるわけではない。
まず、20歳以上の人には構築されない。
これは20歳になると脳神経を構築することがほとんど起こらなくなるからだ。
事実、約100年前にPK能力者になったものは20歳未満の子どもばかりだった。
そして、年齢以外にも魔法や異能力を題材にしたゲームをVRでしていなかったものは構築されなかった。
これは前述の通りである。
さて、PK回路が構築されればPK能力者になれるのかと言うと、そうではない。
あるトリガーが必要である。
そのトリガーというのは『PKを認識すること』、そして『できると思い込むこと』である。
‘有るものは有り、有らぬものは有らぬ’
ある哲学者が残したように、一度脳が知覚してしまったものは存在するものとして認識されてしまう。
そして、できると思い込めばPKは使用可能になる。
このトリガーは【First PK Murder】をVRで見ていたものには簡単に発動した。
目の前でPKを使用され、人が宙に浮き、腕や首が刃物も使うことなく切られ、銃弾が宙を静止し、さらにその場にいなかったはずなのに自分の首に裂傷が刻まれている。
この体験をしたものは否応なくPKという存在を認識した。
そして、目の前で見せられた故にできないと思うことがほとんどなくなる。
あったとしても何かのきっかけがあれば簡単に使用可能だと思い込む。
そうして世界各国が開発をするまでもなく世界にはPK能力者が現れた。
(ここから戦争や虐殺により文明は崩壊していくがこれは後に記す。)
ここまでPKの発現について記してきたがそもそもPKとは何なのか。
端的に言ってしまえばPKとはあらゆる物事、事象、現象、道理に作用する『意志の力』だ。
物を浮かせたいと思えば浮き、燃やしたいと思えば燃え、長生きしたいと思えば老化を止め、分子配列を変えようと思えば変えることもできる。
人間が考えることはほとんどと言っていいほどPKによって実現可能である。
だがそれには当然代償がある。
あまりにも自然の摂理に反することや思い込むのが難しい『意志』は脳神経を焼き切り死亡する可能性があるのだ。
物を浮かせることや燃やすことは、物を手で下から支えることを想像したり、燃焼の原理を理解していれば難しいことはない。
しかし、老化を止めること、分子配列を変えることは自然の摂理に反しており、ほとんどの人が脳神経を焼き切り死亡する。
他にも代償は存在している。
PKは無限に使えるわけではないのだ。
使えば使うほど脳を酷使しPKの力は弱まっていく。
もちろん、睡眠や休憩をすればPKは回復する。
しかし、連続的な使用はできない。
脳を鍛えればそれは改善されるが、無理をすれば脳神経が焼き切れる可能性もある。
PKは諸刃の剣なのだ。
ここまでPKの本質について記したがPKは人間だけでなく竜やその他の生物も使用可能である。
このことについてはレポート1ー3『PKを使用する生物』にまとめる。
8月8日0時に第9話です。