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展望台にいるのだから展望してみた。
「はぁ。」
お宝喪失事件の翌日、時雨は都庁の展望台の窓の縁に座り黄昏ていた。
目的はお宝の喪失による傷心を慰め気分を入れ替えるためだったが、ぽつぽつと数本のビルが砂から突き出る殺伐とした砂丘の風景を眺めても気分を入れ替えることはできなかった。
「あ、竜だ。」
殺伐とした景色の中、久々に生命の羽ばたく姿を見た。
「おぉ、サンドワーム的なものも。」
遠くに砂埃をあげながら巨大なミミズのような生物が砂の中や上を潜ったり張ったりしながら移動しているのが見えた。
「あとは…見えないな。まぁ、この辺は生き物あんまいないからなぁ。ふー。」
時雨は窓の縁で器用に横になる。
夏の太陽の光が時雨の肌と目に突き刺さる。
昔はオゾン層破壊が深刻だったらしいが100年も経てば回復しているだろう。
もし仮に回復せず、皮膚ガンになってもすぐに時雨はすぐに完治させることができる。
「ふわぁ、眠っ。」
突き刺さる日に慣れて柔らかく感じ始めれば段々と睡魔が襲ってくる。
そしてそのまま窓の縁で時雨は眠りについた。
12時に第7話です。