第13話 武天の騎士
「――なにごとっ!?」
唐突な揺れに流石のロザリンも、目を丸くして毛布の上から飛び起きた。
爆発音は一回では終わらず、最初ほどの規模では無いが、その後も断続的に響き絶える事無く牢獄を揺らし続ける。天井からはパラパラと埃に混じり、細かい砂粒が落下してきて、エドモンが格子に掴まりながら崩落しやしないかと、しきりに頭上を見上げていた。
死んだように黙っていた他の牢人達も異常事態とも言える揺れに、慌てふためくような声を牢獄のあちこちから漏らしている。
そんな中、どっしりと構えるよう胡坐をかく人物が一人。
通路を挟みアルトの対面の牢に囚われた男ジェラルドだ。
「地震……ってわけじゃ無さそうだな」
頭に積もった砂を払いながら、アルトは正面のジェラルドを睨んだ。
「テメェの差し金か?」
指摘するとジェラルドは、ぬっふふと妙な笑い声を漏らす。
「儂は囚われの身だ、魔術師でも無い。手も触れずに監獄全体を揺らすなんて芸当、出来るわけがあるまい」
「って言う、事は、仲間?」
「察しがいいじゃないか嬢ちゃん」
ジェラルドはニヤッと唇の口角を上げた。
「この収容所は訳アリの囚人を、一時的に収監しとく為の役割でしかない。牢獄の中ならいざ知らず、外から攻められた場合、要塞や砦のように強固というわけにはいかん。そもそも重要拠点というわけでも無いから、攻めを受ける事を想定して作られておらんからな」
「随分とでかい事を言うじゃねぇか。一ヵ月も牢獄暮らしをしてると、ホラ話も得意になるのか?」
「まぁ、聞け。配下の連中がここに辿り着くまで、儂も暇なんだよ」
ボリボリと顎の下を掻きながら、ジェラルドは語る。
「元々は儂も一時的にここへ収監されるだけで、ピュセリアの首都に送られるところだったんだが、流石にそこだと脱出するのは難しい。だから事前に色々と手を打って、儂をここから動かし難い状況を作った」
「わざわざ? そんな事、するなら、早く脱獄、すればいいのに」
「そいつは短絡的だな。状況というモノはもっと、有効活用せにゃ損だ」
「有効、活用?」
「一時的な収監って事は、この監獄は人の出入りが激しいって事を意味する。しかもここに来る連中は、ピュセリアにとって大なり小なり厄介だと思われてる者達ばかり。話に耳を傾けるには、面白味があるとは思わないか?」
そう言ってジェラルドは不敵に笑う。囚われの身でありながらも、この堂々とした態度にはある種の風格を漂わせる。そう、アルトとロザリンには彼の纏う雰囲気に覚えがあった。数ヵ月前、神と国を崩す野望を抱いた天楼の首魁シド。老いながらも決して衰える事なかった覇気は、この目の前の男ジェラルドにも通ずるモノが感じられた。
この男やはりただ者では無い。改めて確信すると共に強い警戒心をアルトは抱く。
やがて断続的に聞こえてきた爆発音も徐々に小さくなっていき、同時に牢獄の中には元の静けさが戻りつつあった。しかし、慌ただしく表へ様子を見に行った見張りや看守は戻らず、奇妙な沈黙だけが訪れる。暫く黙っていると入り口の方から、数人が走ってくるような足音が聞こえてきた。
見張りが戻ってきたのか?
アルト達に緊張感が宿るが、現れたのは見張りや看守では無く、揃いの甲冑を身に着けた騎士風の者達だった。
中心とおぼしき人物は金髪の女性。ツンとした顔立ちでどよめく監獄を見渡す。
動揺する牢人達の中で、一人陽気に手を振るのはジェラルドだった。
「おおっ、やっと来たか。エーリカ! ここだ、ここ!」
「……父上」
エーリカと呼ばれた女性はジェラルドの姿を視界に止めると、安堵するように表情を柔らかくするが、直ぐに引き締めて引き連れてきた仲間に素早く指示を飛ばす。
「貴方達は退路の確保を。わたくしは父う……御屋形様をお助けします」
「――ハッ」
小走りにジェラルドが囚われている牢の前まで来ると、エーリカは腰のレイピアに手を添えた。瞬間、短く息を吐き出す音と共にレイピアを抜き放ち、鋼鉄の格子を人が通れる隙間が出来るよう寸断した。
「時間がありません。急ぎ、脱出の準備を」
「ああ、わかったわかった。よっこらせっと」
道を空けるようエーリカは身体の位置をずらし、隙間を潜ろうとするジェラルドに手を貸しながらフォローする。牢屋の外へと出たジェラルドは座り続けていて凝った身体を解すよう大きく伸びをしてから、唖然としているアルト達に視線を送った。
「どうだ、アルト。仲間になるんなら、そこから出してやってもいいぞ」
「……御屋形様。此方の者達は?」
「新しい仲間……候補だよ」
父の言葉に胡乱げな視線をアルトに投げかけるが、特に反対意見などは述べなかった。
「俺ぁ別に、アンタの仲間になるだなんて、一言も言ってねぇんだけどな」
「冷たい事を言うなよ。なぁに、無茶な真似はさせんさ。ちょっとばかり、足りない手を貸して欲しいだけよ」
「これを借りにタダ働きしろって?」
「金が欲しけりゃ払ってやる。まぁ、多くは払えんが……少なくとも退屈はさせんぞ。それは保証してやろう」
「んな面倒臭げな事だけ、保証されてもねぇ」
格子を一枚分薄くして、アルトとジェラルドは視線を交差させる。ジェラルドの表情は余裕綽々。断らないと確信しているのか、それとも別に断られても構わないと思っているのか、そればかりはどちらかちょっとわからない。
「……お急ぎ下さいませ。直ぐに騒ぎを嗅ぎ付けて、護衛隊が動きます」
急かすようエーリカが耳打ちをするが、ジェラルドは此方から視線を外さない。
「さぁ、どうする。時間は無いから即決してくれ」
「……ロザリン」
「アルが、決めた事なら、私は、何処にでも、ついて行くよ」
力強い表情と此方に対する信頼を滲ませ、ロザリンは微笑を見せた。
「お前も随分と、気が利く事を言えるようになったじゃねぇか」
軽く苦笑してからアルトは、目の前の格子を拳で軽く叩いた。
「んじゃま、一つエスコートを頼むわ。何分、ピュセリアは初めてなモンでね」
「任されろ。エーリカ」
父親に促されて、エーリカは大きくため息を吐いてから、レイピアに手を添えて同じようアルトが囚われている牢獄の格子を寸断した。刺突が主なレイピアで、上手いことやるなと感心しながら、アルトはロザリンを伴って牢屋を脱出する。
「それじゃあ行くとするか。道中は長い、追撃もある。各々方、油断するなよ」
ジェラルドが首を巡らしながら言うと、エーリカを中心とする仲間達は威勢の良い声で「応ッ」と空気を震わせた。
ならば長居は無用。
脱出に向けて早速行動を開始しようとした矢先、それを押し留めるように背後から慌てたような濁声が聞こえてくる。
声の主はエドモンだ。
「お、おぉ~い! 俺も、俺も出してくれよぉ、頼むよぉ!」
エドモンは鉄格子に縋りつくよう身体を押しつけ、ジェラルド達に向けて涙目になりながら懇願する。脱出したい事をアピールするよう格子に押しつける身体は、脂肪が溜まった腹の肉を押し出され面白い形に変化していく。
「あのチャーシューはどうするんだ?」
アルトが問い掛けると、ジェラルドはふむと自分の顎髭を指で弄る。
「ま、助けてやるか。捕まったのは、儂らの責任もあるしな」
そう告げながら視線を向けられ、エーリカはまた深々とため息を吐きながら、踵を返して情けない声を上げるサイモンの牢へ近づいて行った。
★☆★☆★☆
監獄は既に大部分が制圧されているらしく、エーリカに導かれたアルト達は特に何の妨害を受ける事なく外へと出る事が出来た。その際にアルトのコートやロザリンのマントと傘などを回収している。風呂はおろか洗濯も碌にしていないので、少しばかり匂いが気になるが、久しぶりの娑婆と相まってすっきりとした気分になれた。
「お急ぎなさい。制圧しているとはいっても一時的なモノ。出払っている護衛隊が戻ってきてしまったら、わたくし達が率いる手勢だけでは対処できません」
先頭を走るエーリカに続いて監獄の敷地外へと出る。高い壁に仕切られていてわからなかったが、周辺は深い森に包まれていて、門が上がった入り口から森林を切り拓いて舗装された道が真っ直ぐ奥へと続いていた。
手前には二頭立ての馬車が、三台ほど自分達を待つよう並んでいる。
馬車の回りで待機していた仲間らしき兵達が、此方に気が付いて規律正しく敬礼。エーリカは歩きながら次の指示を告げると馬車の手前で立ち止まり、バタバタと息を荒げ遅れて後をついて来たエドモンの到着に合わせるよう振り向いた。
「これより国境を越えてオラシオン武国、カインベル領まで一気に走り抜けます。途中、戦闘も予想されますので、覚悟はよろしいかしら?」
事務的な口調でエーリカは告げる。視線こそジェラルドに向いていたが、隠し切れない言葉の棘は暗に「邪魔をするな」とアルト達に忠告していた。
元よりそのつもりだと肩を竦めると、背後から苦しげなエドモンの息遣いが聞こえた。
「ひぃ、ひぃぃぃ。や、やっと馬車に乗れるのかよ。いやいや、歩いて国境越えなんで言われたらどうしようかと思っちまったぜ、なぁ?」
「んなわきゃないだろ。つか、ちょっと走っただけでバテすぎだろ。おいヒゲ、アンタ本当に傭兵なのか?」
「仕方ないだろぉ、牢獄暮らしが長くてよ、ちょいと鈍っちまったのさ」
本当かよ。疑わしい視線を向けている間に、撤退の準備は迅速に進んで行く。予め計画と準備は練られていたのだろうが、見事な手際の良さだ。
ジェラルドは馬車の一つに乗り込みながら、振り向いてアルト達に声をかける。
「おい、お前さんら。お前さんらはこっち、俺と同じ馬車に乗れ」
「御屋形様、それは……」
「構わん。仲間に引っ張り込んだ以上、色々と話をしなきゃならんからな。それなりに長い旅路だ、わざわざ時間を無駄にする事もないだろう」
「……わかりました。貴方達! 急いで此方の馬車に乗りなさい、早く!」
ため息交じりに頷いて、エーリカは強い語気でアルト達を急かす。
「いこ、アル」
そう言ってコートの裾を引っ張るロザリンと、呼吸は整ってきたが今度は暑くなってきたのか、滝のような汗を流しているエドモンと共にジェラルドが搭乗する馬車の中へと潜り込んだ。
既に準備は整っているらしく、最後に残ったエーリカが全体に指示を出してから乗り込むと、三台の馬車は順々に動き始める。アルト達の乗る馬車は前後を挟むようにして、真ん中に位置している。ジェラルドやエーリカが乗り込んでいるのだから、当然だろう。まだ監獄には仲間が残っているが、ジェラルドの脱出を最優先にすると同時に、逃げ足が鈍らぬよう部隊を分けて逃走するつもりなのだろう。
「ふぃぃぃ。これでやっと、監獄暮らしとはおさらば。いやぁ長かった長かった」
走り始めて直ぐ、額の汗を拭いながらエドモンが豪快な笑い声を上げる。
しかし、それに答える者は無く、揺れる馬車の内部は緊張感が漂っていた。ここはまだピュセリア国内、つまりは敵地のど真ん中なのだから当然だろう。
場違いだった事を察したのは、エドモンは引き攣った表情まま馬車の内部を見渡す。
「じょ、冗談だよぉ、冗談。空気を和ませてやろうと思っただけだって。本当だぞぉ」
「エドモンにしては、真っ当な気遣いだな。それが本当ならの話だがの」
くくっとジェラルドは笑ってから、横に控えるエーリカに視線を送る。
「現状はどんな塩梅だ?」
「予定通りなら、陽動に動いていた部隊も撤退を始める頃合いですわ。出来る限り引き付けてからの撤退ですから、合流するのは国境の越えてからになります」
「ふむ。後詰は?」
「国境沿いに待機させてありますから、万が一の場合でも国境が封鎖され退路が断たれることはありませんわ」
「なるほどなるほど。ならば、一番厄介な護衛隊は?」
何度か頷いてからの問いに、エーリカは僅かだが表情を顰めた。
「伝令の報告では押さえ切れなかったと。迅速に撤退したそうですので、被害は少ないようですが、此方の動きに気づいていれば既に追撃の態勢に入っている可能性もあります」
「噂に違わぬ迅速さだ。しかし、解せんな。押さえ切れなかったにしても、ちょっとばかり早すぎはしないか?」
「……申し訳ありません」
苦虫を噛み潰したような表情で謝罪してから、エーリカは顔を上げた。
「言い訳ですが、護衛隊の戦力が此方の予想を大きく上回っていたからですわ」
「想定はしていたが、それ以上だったのか?」
「……はい」
頷くと、今度はジェラルドが渋い顔で「うぅむ」と考え込んでしまう。
そこで会話が一時的に途切れ、黙って聞いていたロザリンが「はい」と手を上げた。
「護衛隊って、何者?」
至ってシンプルな質問だが、アルトも同意だった。話の流れ的に面倒な敵対勢力なのは理解出来たが、ピュセリアの組織や戦力などアルト達には無い。エーリカなどはそんな事も知らないのか、的な視線を向けられたが、普通に考えて他国の情勢なんぞ知った事では無いだろう。
「護衛隊ってのは各々の土地を守護する軍団長が、独自に集めた国家に属さない私兵だ」
「軍団が、それぞれ、独立した兵力を、所有してるの?」
ジェラルドの説明に、ロザリンは不思議そうに首を傾げた。
「ピュセリアは部族の集合体だ。基本的に部族の支配地域は保証されると同時に、そこを守れるだけの戦力を独自に所有できる権利がある。まぁ、ある程度の規定があるから多くは集められんが、その分厳選されているから個々の戦闘力は非常に高い。人間より高い身体能力、魔力を持つ亜人種も構成されているから、正面切って戦うには護衛軍は普通の一軍とやり合うよりキツイ。万全の策を敷いた状態でなければ、戦いたく無い手合いだ」
なるほど。と、ロザリンは納得したように頷いた。
護衛軍。エンフィールから来たアルトとロザリンにはピンと来ないが、ジェラルドのした説明に改めて脅威を思い起こしたのか、エーリカ、エドモンを含む同乗するオラシオンの兵士達は緊張感を滲ませた。
速度重視の為、激しく揺れる馬車の中で、嫌な沈黙が流れる。
気分を切り替えるように、エーリカが大きく深呼吸をしてから、黙り込む仲間達を見渡して凛とした声を張った。
「計画は遅れなく進んでいます。護衛軍の動きも確かに早いですが、予想を上回るモノではありませんわ。その為に少数編成で作戦に挑んだのですから、問題無く逃げ切れるはずです」
断言するエーリカの言葉に、張り詰めていた空気が僅かながら緩む。
しかし、何がに気が付いたようハッとロザリンが顔を上げた。
「アル。何か、来る」
「……なんだと?」
前髪を上げて露わにした魔眼で見据えたのは、御者の背中越しに見える前方を走る馬車だ。別に問題無く走行しているじゃないかと思った次の瞬間、真横の茂みから飛び出してきた何かが馬車の横っ腹に衝突した。
激しい破壊音と共に前方を走る馬車は、衝撃を受けた真横から割れ右側の車輪を大きく上にあげ傾く。ワンテンポ遅れて馬車を牽引する二頭の馬が悲鳴のような嘶きを上げると、崩れる馬車に引っ張られるようにして横転した。
「――と、止まれ止まれぇぇぇッ!?!?」
慌てた御者が手綱を思い切り引く。
ただでさせ揺れが激しかった馬車の緊急停止に、分解するんじゃないかと思う程、軋みながら上下に跳ね、対応し切れなかった者達が次々を座席から投げ出される。
「――うわっ!?」
「掴まれ、ロザリンッ!?」
「あわ、あわわわ!?」
「――テメェまでしがみ付くんじゃねぇこのヒゲッ!」
体重が軽い所為で馬車の中で宙を舞うロザリンの腰を抱き留め、何とか揺れに耐えようとするが、横に座っていたエドモンに抱き付かれてしまいバランスを崩す。馬車も高速からの急停止に態勢を保ち切れず左側に大きく揺れたかと思うと、そのまま横転してしい、ちょうどバランスを崩していたアルト達は吹き飛ばされるよう外へと放り出されてしまった。
咄嗟にロザリンを引き寄せ、彼女を守るよう背中から地面に落ちる。
「――痛ってッ!?」
「――ぎゃふん!?」
直ぐ側で顔面から落下したエドモンの、蛙を踏み潰した時のような声を聞きながら、地面を転がるアルト。道の脇にある木にぶつかった事でようやく動きを止め、背中に鈍い痛みを感じながら腕の中にいるロザリンに視線を移した。
「ってて……おい、怪我は無いか?」
「アル、臭い」
「そりゃ、暫く風呂に入ってないからな、お互いさまだ」
言いながら立ち上がると、直ぐ側で最後尾を走っていた馬車が停止する。此方は転倒せずに止まる事が出来たようだ。その代わりに前方二台は酷いモノ。アルトが乗っていた馬車は横転して、外れた車輪がクルクルと回転していた。一番酷い有様なのは先頭の馬車。真ん中から真っ二つに割れた馬車は、吹き飛ばされるよう雑木林に半分突っ込み、最早走行不可能な瓦礫と化している。
原因は直ぐに視界で捉えられた。
「残念、少しタイミングが早かったようだ」
想像よりずっと幼い少女の声と共に、ズシンと重苦しい地響きが足元を揺らす。
前方、道のちょうど真ん中で半壊した馬車を見下ろしていたのは、鎧を着た赤髪の小柄な少女。その手には大きな盾、いや、盾と呼ぶには大きすぎて分厚い物を持っていた。円形で少女の身体など容易に覆い隠してしまう盾は、とてもじゃないが少女が単独で操れるサイズを逸脱していた。しかし、予想を覆すよう地面にめり込むそれを軽々と持ち上げると、少女は盾事此方に正面を向けた。よく見れば羊のような二本の角を生やしている。
「羊角族? 珍しいな。確かに、ピュセリアじゃなけりゃ会えない種族だ」
「アル、あの盾、魔力の波動を、感じる」
助け起こされながら、ロザリンは角を持つ少女の盾を指さした。
遅れて最後尾の馬車からも、異変を察知した兵達が飛び出してくる。ジェラルドとエーリカも大きな怪我は無いらしく、身体を打った痛みに多少、表情を歪めているが、倒れた馬車からはい出ると状況把握の為に周囲へ視線を走らせた。
そして角の少女を視界に止め、エーリカはハッと息を飲む。
「ご、護衛隊!? まさか、早すぎますわ!?」
驚くエーリカとジェラルドを交互にみて、少女は持ち上げた盾で地面を震わせる。
「目標を補足した。最優先はジェラルド=カインベルトの捕獲……だが、その前に戦士の流儀として名乗らせて貰おう」
もう一度、威嚇するよう盾で地面を鳴らす。
「我が名はシャロレー。誇り高き羊角族の戦士にして、護衛隊の隊長である……これより任務を遂行する。覚悟せよ」
言いながら右手構えたのはメイス。これも、少女が持つには大きく重いサイズだった。




