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6話 通販TVショー



「そんな事は一言も言ってなかったんだが!」


「しかし嘘は言ってないでしょう。恐らくですが、先程の質問をシャノン様にされましたか?」


「いっ、いや、してない」


「基本的に神々様は、よっぽどの事がない限り、聞かれてもいないのに教えることはありませんね。勿論、質問すれば全て答えて頂けるものでもありませんが」


「ちっ因みに今からキャンセルってのは!」


「それはできません。過ぎ去ってしまった過去を元に戻すなど、神もうらやむ能力です」


 ルパートさんが横から一言そう呟いた。やっぱり魔法世界とは言え、過去には戻れないのか。さらば億万長者。さらばハーレム。



「しっ、しかし僕にはまだ残されたポイントがある! それで異世界無双をするんだ!」


 衝撃の仮想未来予想図にぐでんと項垂れた僕は、しかしバッタの様に跳ね起きて、拳を握った。


「はい! お手伝いさせて頂きます!」


「僭越ながら私もお力になります」


 白猫さんと黒猫さんが力強い言葉をかけてくれた。う~ん頼もしい。やる気が出てきたぞ。


「それで、結局ポイント使って何が出来るの?」



「それではこちらをご覧下さい。現在のポイントで選べる選択肢の全てでございます」


 そして一斉に眼前にて青白く浮かび上がる文字の数々。指を動かすと次項に飛んだり、拡大や縮小出来るのはスマホそっくりだ。


 とりあえず見ていこう。どれどれスキル系は……はじめての忍者セットに、はじめての魔法使いセット。う~ん、なんだろうこの幼児向けな感じは。でもカテゴリーツリー先の派生スキルは、文字が黒くなってて選べないみたいだからしょうがない。徐々にステップアップしていくしかないのね。


 次々と見ていく内に、チェックが入っている項目に気が付いた。


「ん、これって?」


「あぁそれは、はじめての異世界スタートアップセットですね。こちらは問答無用の習得済みになっております。でないと話すこともままなりませんので」


「そ、そうなんだ」


「はい、今善宏様の耳には、異世界の言葉が日本語に自動変換されて聞こえているかと思われますが、発する言葉もまた同様なのです。それは文字でもそうなります。これらは一様にスキルの効果であります」


 はーそうだったのか。そういやコビットさん達の言葉やダブル猫ちゃんズに、暴力幼女の言葉も分かったもんな。口の動きが不自然に見えたのはこの為か。


 文字はこの世界の言葉の上に、日本語が浮かんで見える感じだな。ほむほむ。


「因みにこの魔道具や私も、このセット内容に組み込まれておりまして、習得ポイントは、50万になります」


「ごっ、ごじゅうまん! ……って、凄いの?」


「はい。ファーラ嬢の面倒を一日みる事で入るポイントが300ポイントであることから考えると、膨大な数字でしょう」


「馬鹿高ぇ!」


 思わずそう叫んだ。なんだそれ、鼻水出るわ! というか、元々持ってたポイントって一体いくつだったんだ? んでそれを押しのける様な劫ってどんなよ! 前世で何したんだ! 俺!


 いかん、頭がくらくらしてきた。深く考えるのはよそう。とにかくあの怪力少女に対抗できるスキルを身に付けんとな。それが一番重要だ。



「えっと……そういえばルーシーはこのシステムの案内係なんだよね?」


「左様でございます」


「ズバリ聞くけど、オススメとかあるの?」


 僕がそう言うと、白猫執事さんはパアッと微笑んで、意気揚々と語り始めた。


「よくぞ聞いて下さいました! 私もいつお伝えしたものかとウズウズしていたのです。どうぞ、こちらをご覧下さい!」


 猫さんが華麗なポーズを決めると、キラキラと光る演出と共に、ある文字が躍り出た。


「は~じ~め~て~の~っ、勇者セ~ットデラ~ックス~ッ!」


 ぱっぱらぱっぱー、ぱっぱらぱっぱーぱーん!


 という謎のBGMと共に、高々とスキル名を読み上げるルーシー。


 なんだその某国民的アニメを中途半端に真似た演出は。そしてそのやりきったという顔は。そもそも元ネタ知っているのか? 見ろ、あのルパートさんの生暖かい視線を。こっちは全然付いていけてないぞ。


 と、僕等の気持ちなんぞは無視して説明は続く。


「こちらは勇者になるに相応しいスキルを、複合的に習得できるお得なスキルセット内容となっております。極めればこれだけで世界に覇を唱える事が可能でしょう! さらに今回は特別に、善宏様特別にカスタマイズされた内容となっております!」


 おおーっどれどれ? 武具百般、百人力に基本魔術、仙術、瞬足に、偉丈夫いじょうぶ、気力持続か。他にも色々あって瞑想とかもあるけど何の役に立つんだ? よく分からん。しかし何というか和風なのな。僕に合わせてくれた結果だろうか。


「しかもさらに今回は特別に! 魔法付加された高枝切りバサミと、調理器具セット! おまけに何と何と! バケツや雑巾等のお掃除セットもお付けしての、特大ご奉仕です!」


 なんだその芝居がかった台詞は。今度はどこぞのテレビショッピングの社長みたいになっとるがな。しかもおまけ付け過ぎだろう。


 うまく乗せられている気がするけど、この流れだと聞かずにはいられない。


「でもお高いんでしょう?」


「ご安心下さい、奥さん!」


 誰が奥さんだ誰が、と思わずツッコみそうになったけれど止めとこう。多分様式美というやつなんだろうし。


「なんと、今回限りのお値段大特価! 赤字覚悟の出血大サービス!」


 ルーシーがノリノリだ。というかいつの間にハッピと鉢巻きなんてしてたんだ。あとそのハリセンは何だ。徐々に高まる彼女のボルテージに水を差すことも出来ず、僕は黙って成り行きを見守った。


「15万ポイントでのご提供となっております! 先着1名の早い者勝ちですよ!」


「だから高ぇぇぇぇぇぇぇ!」


 もうヤダ! お家帰る! 頭を抱えて悶絶する。ゴロゴロと芝生の上を転がる。


「あそうだ、一応聞いてみるけど、今までの貯まってたポイントって、どれくらい時間をかけたやつなの?」


 涙目で、ふと疑問に思った事を聞いてみる。


「えっと、少々お待ち下さい……出ました」


 おぅ、なんかドキドキするな。



「善宏様までの代で蓄えられた総徳分ポイントは、5159850ポイントとなりまして、生まれ変わった回数は12回、地球年代換算で言うところの3251年間で貯められたものとなります」


「……ほっ」


「「ほ?」」


「ほげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」




 僕は今日何度目かの絶叫をした。猫執事さんズは仲良く首を傾げている。


「なんだそれ! 3200年間で貯めたもんを一日でほぼ使い果たすとか、マジ意味わかんねぇぇぇぇぇぇぇ!」


 より大きく激しく芝生の上ローリングを繰り返していると、ルーシーから冷静なツッコミが入った。


「3200年ではありません。3251年です」


「細かい事はいいよ! またそれだけポイント貯めるのに、一体何年かかるんだぁぁぁぁぁぁぁ!」


 こんなに大地をのたうち回った事が、未だかつてあっただろうか? いや、断じてない! 少なくとも、僕の一生の内はな! うごごごごごご!


「それでどうされます?」


「どうするって、お前なぁ!」


 バン!と僕は、怒りにまかせて地面を叩いた。しかしそれが良くなかった。


 ピコ~ンと軽い音がしたかと思って手元をのぞき込んで見れば、決定ボタンを押していたんだ。



「なっ!」


「毎度あり~です!」


「ちっちがっ! キャンセルだ!」


「善宏様、残念ですが一度決定されたスキル契約を覆すことは出来ません。次回からは良くお考えの上、お選び下さい」


「うおーそれも聞いてねぇ!」


「はい、伝える時間がありませんでしたので」


「だーっ! これで後、9850ポイントしか残ってねー!」



 なんだろう、このポイントが減っただけで感じるこの絶望感。もう立ち上がれない。


 僕はガックシと頭を垂れていたかと思うと、次の瞬間にはふっと身体が浮かび上がっていた。あれ? なんだこれ? 倒れている自分が見えるぞ? 幽体離脱ってやつかこれ! ホントどーなってんだ! 




「あぁまた言い忘れていました。膨大な量の特殊スキルを善宏様の身体に覚えさせる為に、魂の離脱をさせて頂きました。生身の人間には耐えがたい痛みが伴いますので、その為の処置です。ご了承下さい」


「だからそれも事後承諾じゃねぇか! いい加減にしてくれ!」


 寝そべる身体の周りに魔法陣が浮かび上がり、虹色に光り出す。ルパートさんも呆然とこの光景を見ていた。


 僕は一体どうなっちまうんだ!

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