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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Broken Brave〜壊れた世界と壊れた俺と〜

作者: マザー


あの日、日本は壊れた。いや、それは違うか。あの日、世界は壊れた。


2042年 12月 25日 PM 17:20。


その時、世界中でほぼ同時に起きた地震はマグニチュード測定不能、震度は9という大地震だった。


日本などの地震がよく起こる国は耐震構造の建物が多かったため、倒壊を免れた場所もあり、そこまでの使者は出なかった。


だが、地震など普通起こらない地域では建物の倒壊に巻き込まれて多くの人たちが死亡した。その数は地球上で23億人にもなった。だが、ここで亡くなった人たちはある意味、幸せだったろう。


地震の後、津波に備えて各国は高所への避難を開始したが津波は起こることがなく、海は驚くほどに静かだった。


その代わりと言ってはなんだが、各国には必ず2箇所以上の場所に巨大な亀裂ができ、そこからは謎のガスが吹き出していた。


日本には十勝、那覇に1箇所、東京に1箇所、大阪に2箇所の計4箇所の亀裂が確認された。そして亀裂からは地震当日から数えて4日間ガスを吹き出し続け、そして噴出は止まった。各国政府はそれに安堵の息を吐いただろう。


だが、そこからが世界の本当の終わりの始まりだったのだ。


ガスが止まってから1週間後、関東地域には雨が降り注いでいた。関東の各地で配給を行っていた自衛隊はこの日も食料等の配給を行っていた。


異変は唐突に起こった。


配給の為に列に並んでいた1人の中年男性が地面に倒れた。膝をつき、荒く乱れた息を吐くその男性を心配して同じく列に並んでいた男性が近づいて声をかけた。


「どうしました?大丈夫ですか?」


と、


それに対する倒れた男性の返答は


「えっ?」


心配して近づいてきた男性への噛みつきだった。その噛みつきは首の頸動脈を捉え、その噛まれた男性はすぐに死亡した。


そして噛み付いた男性は自衛隊員によって組み伏せられ、拘束された。


そしてそのまま噛まれた男性に近づいて行き、担架に乗せようとした。


そして蘇った。


蘇った男性は自衛隊員に噛みつき、そして殺した。そして噛まれた自衛隊員は死亡し、蘇った。


辺りはパニックになっており、噛まれて死亡し、蘇る。その犠牲者は急速に増えていった。


これは各国で同じように起こっていた。これに対して各国政府は特殊以上事態を宣言、国民に対して状況の収集がつくまで各家に待機を命じ、状況の解明に奔走した。


そして原因が亀裂から噴出していたガスに含まれていた新種のウィルスによるものだと判明した。


このウィルスに感染した生物は思考能力を失うかわりに驚異的な回復能力と身体能力の強化が見られた。そして周りにいる生物を片っ端から食そうとする強烈な食欲も発現した。


当時は雨による感染が疑われていたが、それも大気によって薄れて空気感染や飛沫感染の心配はないとされた。感染経路は1つのみ、感染者に噛まれて体内にそのウィルスを宿すこと。


ウィルスを宿すと約3時間から6時間の間に発症する。そして発症したらどんな生物でも同種となった感染者以外を見境なく襲い、食す。


政府はこれに対するワクチンを開発するとラジオによる放送を行い、国民はそれに縋った。


そしてそのワクチン開発の研究が行われていた施設でワクチンの感性が間近になった頃、その施設は感染者によって攻められ、破壊された。


中にいた人物たちはほぼ全滅。そこから脱出した一部の研究者と政府の要人がラジオによって事の経緯を放送し、まだ希望はあると発現していた。


そして2043年 1月 29日 PM12:30。政府の定時放送中に悲鳴と銃声、救援を求める声が鳴り響き、そして意味のある音は途切れ、感染者が唸る音だけがラジオから流される事になった。


これが3ヶ月前の事。


では、現在の話をしようか。ん?俺が誰かだって?


俺は、世界と一緒に壊れてしまったしがない高校生さ。



>>>>>>>>



バァンッバァンッ!


走りながら2連射した9mmパレベラム弾が2体の感染者ゾンビの額に穴を開ける。撃たれた感染者ゾンビはその場に崩れるようにして倒れた。


俺は倒れた感染者ゾンビを気にせずそのまま走り続ける。時折、後ろから追ってくる感染者ゾンビ共に9mmパレベラム弾を食らわせながら目的地まで走る。


「ついたっ!」


俺は目的地に停めてあった軽機動装甲車のドアを開け、運転席に飛び乗り即ドアを閉める。そしてほぼ同時にキーを回してエンジンをかけて走り出す。


後ろを振り返ると感染者ゾンビ共がまだ追って来ていたが、直ぐに小さくなって見えなくなった。


「は、ははっ……」


俺はそれを見て力なく笑った。


俺はそのまま軽機動装甲車を走らせ続けて隠れ家につくと中庭に停め、ポケットに入れてあったスイッチを取り出して押す。


すると中庭が割れてそのまま軽機動装甲車ごと俺は地下にエレベーターで降りた。車から降りて地上部分が閉まったのを確認した俺は荷物を背負い、扉に近づく。


そして電子板に手をかざして指紋を読み取り、パスワードを打ち込んだ。最後に「7つの月」と設定されたと俺の台詞を言って声紋を照合させると扉は左右に開いた。


「ただいま」


誰もいないその部屋に入って俺は机に荷物を下ろすと椅子に腰掛けた。


「はあ、疲れた…」


俺は荷物を入れていたバックの口を開け、中から様々な物資を取り出す。


非常食、缶詰め、携帯トイレ、真空パックされた衣服、布団など様々なものが出てくる。


俺はそれをそれぞれの棚やタンスにしまい終えるとまた椅子に腰かけた。


もうこれでやる事は無くなってしまった。いつも通りに少なくなった物資を(地獄)から取ってきたらまた此処で過ごすだけ。


ただ、ただ、何もせずに生きている。俺は生きていて良いのだろうか?いや、そもそも俺はまだ生きているのか?


そんな思考が頭の中をグルグルと回る。が、それも直ぐになくなりいつも通りの無気力へと戻っていく。


そのままどれ位、ボーッとしていただろうか。俺はふと思い立った。


「あ、武器の整備しなきゃな」


俺は腰からSIG SAUER P226を取り外して机の上に置き、椅子に立て掛けておいた89式5.56mm自動小銃も手にとって机の上に置く。


「んー、MINIMIは使ってないしいいか」


軽機動装甲車に搭載してある5.56mm機関銃MINIMIは取り外さずそのままにすることにした。


整備を始めて1時間。


「ふう、終わった」


俺は整備を終えて一息ついて今日取ってきたインスタントコーヒーを淹れて飲んだ。


そのまま特にすることもなく、濡らしたタオルで体を拭いて布団にくるまって寝た。



>>>>>>>>



ウーウーウーウー!


「なんだ⁉︎」


俺は部屋に響くサイレンの音で目を覚ました。俺が部屋に備えられている電子パネルを操作して何の異常が起こったのか一通り見ていく。


すると、この地下室の上に建っているデコイの家の前には逃げてきたであろう男4人、女2人の6人組がドアを叩いていた。


その後ろからは感染者ゾンビが群れをなして追ってきているのが見えた。その距離はまだ離れているとはいえ、安心できない。


6人組は銃を取り出してドアを壊そうとしたので俺は慌てて遠隔操作でドアを開けた。


それに6人組は一瞬驚いて固まったが直ぐに家の中に入りドアを閉めた。すると彼らは安心したのか脱力してその場に座り込んでしまった。


さて、彼らのところに行くか。



>>>>>>>>



6人組side


俺たちはこの3ヶ月間、各地を転々とまわって生活していた。今回もいつも通りに食料を調達しようとスーパーなどを見つけ次第、探索していた。


だが、俺たちはうっかりして警備室にあったサイレンのボタンを押してしまった。


いくらやっても明かりがつかなかったので、ここは電気は既に通っていないと思っていたが、非常用の電源は生きていたようで盛大にサイレンは鳴り響いた。


店内に最初からいた感染者だけでなく、外からも感染者が集まってきて俺たちは急いで逃げた。


逃げる途中でバイクはパンクして使い物にならなくなり、俺たちは徒歩での移動を強いられた。


そうしてどこをどう逃げたのか覚えていないが、俺たちはまだ比較的綺麗で人の出入りの痕跡があるいてを見つけた。


普通、こんな世界になってしまってからは他人を助けるやつなんていないが、非常事態だから仕方ないと考えてその家に向かって走った。


その家のドアを叩いて呼びかけたが、何の反応もなく、仕方なく俺たちは持っていた銃でドアを壊そうかと考えた。


後ろからは感染者が迫ってきているので、猶予はなかった。


だが、急にドアは開いた。俺たちは中に急いで駆け込み、ドアを閉めた。


そして、安堵と共に力が抜けてしまい、その場に座り込んでしまった。


俺たちはなんとかなったと、助かってよかったと言い合ったが、俺はこのドアを開けたこの家の住民に少し警戒した。


一体、どんなやつがここに住んでいるのか分かったものではない。が、出来れば話し合いで解決できればいいと思う。


食料などもしばらくは保つし、それまではここに置いてもらえるように頼んでみるか。


俺はそう考えたことを仲間に言ってこの家のリビングでソファに座って荷物を降ろした。



>>>>>>>>



「ふーん」


俺はリビングでくつろぐ6人組を手元のタブレットで見ながら地下からのエレベーターを上がっていく。


このエレベーターは中庭のものとは違い、家の中に出る人間用のエレベーターだ。


俺はエレベーターが家の中につくとそこから出て、彼らが居るはずのリビングへ向かう。


「だれだっ⁉︎」


「ここの家主だ」


彼らのリーダーらしい男が俺の足音に気づいてリビングの中から怒鳴る。それに対して俺は簡潔に事実を答えた。俺はリビングの入り口からヒョコッと顔だけを出して中を覗く。


「⁉︎」


「へえ、君たち全員俺と同じ高校生か?」


彼らは顔だけを急に出した俺に驚いたようだ。見た感じ全員が高2くらいの年だった。俺と同じだ。


俺が彼らを観察しているとリーダーらしい男が話しかけてきた。


「あんたがここの住民か?」


「そうだ」


「じゃあ、頼みがある。食料などは自前で用意するから俺たちを暫くここに留まらせてくれないか?」


「あー、それね」


俺は彼が聞いてきた質問に直ぐ答えることにする。というか、答えは既に決まっていた。


「うん、それはね…………無理」


ダァンッ‼︎


俺は彼らから見えないように持っていた89式を即座に構えてリーダーらしい男の顔面に単射でヘッドショットを決める。


男は倒れて数度痙攣をして死んだ。


残りの5人の内、2人の男は持っていた上下二連式猟銃を俺に向けて撃とうとする。


が、


バァンッバァンッバァンッバァンッ!


それよりも先に俺がホルスターから抜いたSIG SAUER P226の4連射が胸に2発ずつ命中して崩れおちる。


残ったのは男1人に女2人。その3人は俺を見ながら怯えた表情をして震えていた。


俺はそいつらから目を背けて死んだ男が持っていた猟銃を見る。


「ミロク M2700か」


「うあああああっ!」


俺がミロクをマジマジと見ていると残った男がバールを構えて走って突っ込んできた。


俺は振り下ろされるバールを見つめ、その起点となっている手首を掴んで捻り、動きが止まった男に腰から抜いたナイフを喉に突き刺す。


男は大量の血を流して倒れた。


そして俺は残った女2人の方を向く。


「ひっ⁉︎」


「や、やめてください!何でもしますから命だけは…⁉︎」


「無理」


バアァァンッ‼︎


ミロク M2700から放たれた散弾が女2人を頭部を吹き飛ばす。俺はそれを見てため息をついた。


「あー、掃除面倒だな」


人を、それも年の近い未成年を殺しておいてこうして何も感じない。いや、邪魔だとしか思わない俺はきっともう壊れているんだろう。


あの日、3ヶ月前に大切なモノ()を亡くしてから俺は壊れてしまった。


でも、それを分かっていても俺はまだ死にたくない。


そのために俺以外の全てを殺し、壊さないといけない。


そんな俺はこれからもこの壊れた世界で生きていくんだろう。


そうだ、まだ名乗ってなかったな。


俺の名前は「七月ナナツキ 勇気ユウキ


この壊れた世界で生きる、壊れた高校生だ。


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[一言] 面白かったです。 使者→死者 感性→完成 時間が出来たら直しておいて下さい。
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