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おしゃべりなガイコツさんは:ジェロボーム



 ヤァヤァ僕はジェロボーム、家名もあるし覚えてもいるけど今や僕もスケルトンだからね、必要ないしスケルトンと同じ家名だなんてあまり気分が良くないだろう? そんなことない? そんなことないなら教えてはあげよう、僕の家名はブレイクというんだ。ジェロボーム・ブレイク、見極めのジェロボームだなんて昔はちやほやされたものだよ。


 と、おっと。また僕の話をしてしまった。僕が話したいのはうちのかわいい女の子についてなんだ。

 彼女の名前はユファ。ユファ・ブレイク。おんなじ名字だけども血はたぶん一滴も繋がってない、イヤァ遡ったり下ったりまた遡ったりなんなりすればもしかしたら遠い遠い遠い遠い親戚かもしれないけどそれならたぶん同じ地域に居たスケルトンのほうが近い親戚になりそうだよね。

 じゃあ何で同じ名字なんだって話になると、初めから話そうか? いらない? わかったわかった、簡潔にね。簡潔に、ウーン、そうだなあ、なんて言うのが近いだろう?たとえばこう、ああ、箔付け?

 ユファってばほんとのほんとにど田舎真っ只中の集落に生まれててね、その近くの山で僕らは出会ったんだ。魔力切れでただの骨になってた僕に潤沢な魔力を満たしてくれたの。で、なんやかんやいろいろあって、僕が生きるために、マァ死んでるけど!、意識を持って動けるままでいるために魔力を提供してもらうことになってね。代わりに魔法を教えてあげようかと思ったら、ユファってばあんなに大量の魔力持ってるくせに自分で出したり留めたりできないんだよ!

 イヤァ僕が「ゼッタイすごい魔法使いになれるよ!」なんて散々言ったから魔力を出せないとわかった時はずいぶん落ち込んでたね! よく考えたら僕には幸運なことだよ、だって魔法使いになって自力で魔力を使うことになれば、ホラ、スケルトン分が負担になりうるだろう? かわいいユファはたぶんそのままくれただろうし、僕ももちろん遠慮しないからさあ! 遠慮しろって? イヤイヤ、だって魔力を貰えなかったら僕のこのツヤピカ健康な超骨密度のこの純白がくすんで黄ばみ、乾いた瓜の実の如くスカスカになってパキバキに折れたりしちゃうんだよ? この輝く瞳が落ち窪んでモンスターの中のモンスターさながらに! 目ん玉なんてないからずっと暗闇ではあるけどね! アッハッハ!

 はてさてそれで、だからと言って、出会った当時ユファは6歳だよ。僕は30越えて死んだわけだから娘みたいなさ、独身貴族として初めての娘みたいな子に魔力貰いっぱなしで何もしないっていうのも悪いさ。だから僕にできること話し合って、結果、文字とかいろいろ教え込むことになったのね。

 ユファはど田舎出身だって言ったろう? 僕が死んじゃってはっきり何年経ったかわかんないけど、ざっと100年経ってるわけだから未来はみんな勉強とか受けられて魔法使いも増えてモンスターを飼いならしてる世界になってるだろうななんて思ってたのに、魔法使いなんて居ないらしいし、ど田舎にはなんの教養も届いてなかったんだよ、驚くべきことにね! イヤァ僕が生前声高に「みんなが教育を受けられる世界に」と言ってた学者はどうなったんだろうね? どうなったって今となっては死んでるか!

 さてこの見返り、ひとつだけ問題があるとすれば、僕の知識ってマァ古い! 100年前の大昔の知識で、教えられる文字も旧字っていうの ?文章の書き方とかもね、化石みたいな知識なわけ。たぶんね。ユファが唯一知ってるっていう数字が僕のよりカンタンになってたんだよ、マァ僕だって僕の生前より100年前の書き物に読みにくいって文句いってた覚えがあるからソリャ言葉は変化していくものだよね! こう考えると僕が白骨化して、この場合の白骨化って物言わぬガイコツになって沈黙してるときのことね、で、白骨化してるときに戦争でも起きて占領されちゃったりして喋る言葉が変わってなくてよかったなあと思うよ! 突然むくむく立ち上がって意味のわからない言葉を捲したてるガイコツなんて怖くてたまらないじゃないか! 僕だってどうにか逃げ出して石を投げつけるだろうね!

 それで、ソウ、時代が変わったら物価も食べ物も違うからほんと異文化交流してる気持ちだったよ。イヤァ世界は変わる! めでたいことだね!

 異文化交流といえば僕っておしゃべりだろ? 口から先に生まれて目が開くより先に話し始めたなんて言われてたよ、これも僕の生きてた頃はほんとにバカにされててね、男は黙って! みたいな感じでさあ、黙って背中で語れ! みたいなね、これたぶん有名人見極めジェロボームが結婚できなかった理由の一番大きいとこだね。間違いないよ。だから付き合って聞いてくれるユファってすっごく良い子だなーと思うわけですよ。会ったらばしばし褒めてあげてね。

 で何の話だっけ? 魔法? アァ名字か、はいはい。

 僕の時代はなんていうか、名字ブームがあってね、ブームていうよりちゃんとした法令だったんだけど、国中みんな名字を名乗ってたんだ。貴族は当主がそれっぽいのを決めて、ほかのみんなは地名や職業を名字にするっていう、ああホラたとえば「ユファ・鍛冶屋(スミス)」とか「ジェロボーム・開拓地近く(レイランド)」とかね、みんなこぞって決めては名乗ってたんだ。それが時代の変遷かあるいはここじゃ必要ない制度だったからかユファの村では廃れちゃったみたいでさ。

 僕はやっぱり名前に名字あってほしいっていうのもマァもちろん、魔法使いの徒弟制度では師匠の名字をもらうのがふつうでつまり「ブレイク一派」みたいなのがあって僕も師匠からブレイクってもらってたから、今はきっと形骸化してたいした力もなにもないんだろうとは思うものの一応このかわいくて魔力タップリのユファちゃんには師匠が居るんだよ〜みたいなアピールをさせたかったんだよね。始めにいってた通りスケルトンと同じ名字は僕だったらちょっとナァ遠慮したいナァって思うのに、ユファてばほんといい子だから気にならないって言うんだよ。それどころか嬉しいって!

 今はまだ村を出れないけど、「いつか一緒にジェロボームさんの故郷も見てみたい」なんて言ってもくれたし、暗い顔してたユファが未来ある若者らしく前を向いているってのは老骨に沁み渡る感動があるよね。いつかがどれだけ遠くても老いて行けなくなるってことがない、そう考えるとそれだけでスケルトンで良かったと思えたりしないかい?






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