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発掘☆古代兵器彼女:オルド



 アイゼンヒ村の側には、古代遺跡がある。いつの時代かもわからないほど古く、しかしなんの保護もされていない遺跡が。

 特別なことではない。この国にはそのような遺跡がありふれていた。前時代の失われた技術で作られてはいるが、それだけで、重要なものもすっかり失われているがらんどうの遺跡。学術的に貴重な遺跡は国の保護下にあるし、モンスターのいる遺跡には冒険者ギルドの調査が入る。アイゼンヒ村のそれはギルドが軽く覗いてもなんの発見もなく、モンスターの一体すら居なかった。

 ただ大昔に人の手が入っただけの洞窟とそう変わらない遺跡を、村人が気にかけることはない。ただ、モンスターも危ない獣らも住まないのに、なんとなく居そうな怪しい雰囲気をしているため、村の子どもらの肝試しには重宝されていた。


 そうやって子ども達が入るので、村では定期的に冒険者に遺跡の安全確認依頼を出している。モンスターの住処になっていてはたまらないし、崩れたりしてはことになる。

 この日も、ちょうどそんな依頼のために冒険者が訪れていた。

 依頼内容は同じだが、先日近くに落雷があり、遺跡の内部に崩れの可能性がある。ありふれた遺跡でも、わかりやすい変化があればギルドへの報告は必須。


 依頼を受けたオルドは、ほんの暇つぶしの気持ちだった。副業の認められていない職についているが、遠くの街に出張に来たのに丸一日暇ができてしまった。冒険者登録は子どものころに済ませている。空いた暇を埋めるのに、この依頼はうってつけだった。

 時間がかからないし、何より遺跡の見回り程度なら「本業の範囲だ」と言い張れば認められるだろう。その見極めはかつて指導担当だった男に教わった、あの彼も今や役持ちである。

 滞在する町とアイゼンヒ村は、歩いて一時間も離れていない。散歩がてらにゆっくり歩いても、戻ってくるまでに三時間はないだろう。

 他にも暇つぶしになりそうな依頼がある中で、どうしてこれを選んだか口にするのは難しかった。ただ、なんとなく、目についただけで。

 散歩に相応しい装備に変えて逗留している部屋を出ると、同僚のひとりに呼び止められた。


「出かけるのか?」

「ああ、ちょっと散歩にな。ログは酒場か?」

「おうよ。この辺りの酒はうまいからな」

「昼間から酔い潰れて、二日酔いにはなるなよ」


 彼は酒に強いので本心からは心配していないが、明日はきっと忙しくなる。その言葉にログは似合わない髭を撫でながらハハハと笑うが、突然ふっと驚いたようにオルドを見つめた。

 そして、にやにやとにっこりの中間の楽しげな笑み。


「今日は、良い日になりそうだな」


 未来視の血が混じるログは、カンが良い。彼がこういうなら確かなのだろう。オルドが今いちばん欲しいのは嫁だが、移動の多い下っ端はなかなか結婚相手が見つからない。では、良い日とは、出世に繋がることだろうか。それとももっと安直に、良い出会いが?

 予想外の収入が入るのでもいいなあ、オルドは皮算用をするように夢想して、けれどもっと些細なことだろうと考えていた。

 まさか、想像のほとんどが叶うとは思わずに。





 オルドが遺跡で見つけた幸運は、予想だにしないほど大きなものだった。

 古代兵器マーリン。

 伝承に存在するようなそれをそうと判断したのは、四角い瞳孔と、不気味な人間らしさだった。少女のようななりをして、半身が地中にあっても平然とし、瞬きも身じろぎもしない。生物ではありえない。

 しかし半疑なのも確かだった。

 マーリンは、火を操り、雷を操り、かつて世界をひとつに纏めた神の時代の遺物。神は地上から離れ、古代の高度魔術文明は人々の記憶からも消えた。この時代の人間では、似たものすら作れないだろう。神話のマーリンは従順で、主を変えるたびに記憶がなくなるものだったが、これは記憶回路が混乱しているらしい。

 マーリンに似た別の兵器の可能性もあれど、いずれにしても古代魔術文明の英知の結晶に間違いない。持って帰れば大手柄、出世も褒賞も当然出るだろう。オルドは思わぬ成果ににんまり笑う。

 ただ、上司に取られてそれで終わり、ということになってはたまらない。見た目は幼げな少女で、現状把握もいまいちできていないようだから、きっとうまいこと言いくるめられる。

 契約者にさえなってしまえば、こちらのもの。マーリンは主人を殺した相手には従わないという、だから国に殺される心配もない。問答無用で左団扇、国史に名前も乗るはずだ。

 己の運の良さを讃えて、これからの未来に期待をかけた。




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