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従者?バレンタイン小話

バレンタインの習慣はなく、セラフィーナがやってるだけ。



はい、と突然小さな小箱を渡され、ネヴィルはきょとんと瞬いた。片手に乗る程度の小さなそれ。

セラフィーナは愛らしく頬を紅色に染め、目はあらぬところに逸らされている。

照れている。

そう判断して、ネヴィルはつっと目を細めた。

「これは……?」

誰かに届けろということでしょうか。思い当たる相手を必死に浮かべようとするも、情けないことに彼女の交友関係を未だすべて知り尽くせていない。

相手が女性ならば、こんな表情を浮かべやしない。彼女と自分の交友関係の重なる部分、使用人の若い男からいつかのパーティに来ていた人物まで順々に思い出してゆく。

この中に、セラフィーナが一瞬でも目を留めた人物は居ただろうか。自分より彼女の好みに合致する人物は?

そうやっているうちに、彼の不機嫌に気付いたセラフィーナは眉を下げて困った顔になった。そういう顔をされると、どんな願いでも叶えなくてはと思う。彼女に頼られるのはやはり嬉しいのだ、他人への橋渡しだとしても。

ほっそりした手が、まろい頬に添えられる。小さな唇が動くのを、ネヴィルはひたと見据えた。彼女の贈り物を受け取る、幸運で憎らしい相手は誰だ。

天上の調べのような声が、戸惑った風に紡がれた。

「ええと、迷惑だったでしょうか?ネヴィルに、いつもの感謝の気持ちを込めて、なんですけど」

「え」

「あれ?言いましたよね、今日、いつもお世話になってる相手に甘いものを送ることにしているって」

驚愕に目を見開いた彼に、今度はセラフィーナが目を瞬かせた。記憶を辿るまでもなく、心当たる話はあった。

しかし馴染みのない習慣だったために自分に関わるとは思っていなかったし、相手は親族に限られるという話だと思っていた。

この小箱は、セラフィーナから、己に。

セラフィーナの気持ちがこもった、しるしなのだ。

じんわり脳内に染みわたるその事実に、抑えきれない歓喜が湧き上がってくる。

「私に……私のために、セラフィーナ様がご用意くださった、気持ちのこもった贈り物ということですか」

頬が紅潮する。口角が上がるのを抑えられない。

生まれて消えない熱を一心に少女に向けると、セラフィーナはひくりと頬をひきつらせ、「義理、義理ですからね!」とよくわからないことを主張する。

とにかく、これはセラフィーナの気持ちなのだ。中身が食べ物であるために永劫残しておけないのが口惜しく、ネヴィルはひっそり状態保存の魔法を練習しようと決めた。





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