偉大なる魔王様
「魔王様、魔王様。どこにいらっしゃるのですか。」
黒猫の姿をした魔物が静かな魔王の姿を探して静かな城を見回る。
この黒猫こそが、魔王の重臣であり忠実な僕である。
「あぁ、魔王様。そちらにいらっしゃったのですか。今までどこにおられたのですか。」
ようやく隅にいるのを見つける黒猫だったが、呼びかけられた魔王の動きがおかしいことに気がついた。
「魔王様?今、何かを隠しませんでしたか。」
「何のことだ。」
「とぼけないでください。明らかに後ろに何かを隠しているではありませんか。ほら、出してください。」
魔王の後ろの何かがもぞもぞと動いた。
まさかと思い黒猫は魔王に大人しく後ろに隠したものを見せるように言ってみれば、でてきたのは豪華な服を着た小さな少女だった。
「・・・魔王様、この娘は?どうみても姫君に見えるのですが。」
「人間界から連れてきた。気に入ったのでな。」
「また勝手に人間界に向かわれただけでなく、人間を連れてこられたのですか!それもよりによって王女を?」
「何が問題なのだ。我々に危害を加えるわけでもあるまい。」
「先代の魔王様は王女を誘拐したがゆえに勇者に封印されたようなものですよ!?それなのにまた連れさらってくるなんて。」
「誘拐ではない。この娘も承知の上だ。」
「承知の上と?」
好き好んでのこのこと魔界に来るような人間がいたとは信じられない。それも一国の王女たるものが。
しかし王女の態度を見てみれば、驚いたことにここに来て恐怖や不安といったものはないようだ。
根性が座っているというよりは世間知らずなのだろうと黒猫は悟った。
「しかし、王女が魔王に連れ出されたのなれば人間共が騒ぎ出すに違いありません。まだこちらも状況が安定してないのですから、返してきてください。」
「断る。そもそも、先代も姫を連れてきたのであろう?私も同じことをして何が悪い。」
「う・・・そ、それは。」
痛いところをつかれた。
今の魔王様は魔界で一番強いとはいえまだ若い。それゆえに先代から重臣をつとめる黒猫が世話係のような形でそのまま役目を引き継いでいた。その先代の魔王を否定するようなことはできない。
「仕方ありませんね、承知いたしました。ただ、ちゃんと面倒はみてくださいね。下手なことをされても困るので、私も監視しますが。」
「わかった。そのようにしよう。」
「ありがとうございます、黒猫さん。これからよろしくお願いします。」
黒猫にとっては礼を言われる筋合いなどなかった。
どうせ、魔王にとってはペットのようなものなのだろう。すぐにでも飽きられればいいのにと投げやりな気持ちだった。
「それで、どうだ姫。この世界は。」
「すごく気に入りました。本当に私のいた世界とは違うのですね。暗闇にいくつもの明かりが照らされて・・・とても綺麗です。」
「そうか、それはよかった。」
会話を聞きながら黒猫は呆れたように小さくため息をついた。今回の魔王が魔王なら姫も姫かと。
「よっぽどの変わり者だな。」
魔界を綺麗と言うなどと。




