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僕に聞こえない声

 私の娘が食事をしなくなったのは十日前のことだった。

「だって悲鳴が聞こえるものかわいそうじゃない?」

 それをみて息子も食事をしなくなった。

「だって悲鳴が聞こえるんだものかわいそうじゃない?」

 理由は娘と同じ事だった。

 声が聞こえるわけはない。僕の耳にはなにも聞こえてこないのだから、いや聞こえるにしても生野菜や生け作りのまだ命がある食べ物だけのはずだ。

 けれどもただの好き嫌いなのだろうとは思えない。

 それならばまだ、よかった。

「だって声が聞こえてしょうがないもの」

 五日も食事らしい食事は全くせずに生活してきた彼女はもちろんのこと次第にやせていった。

 ただ娘のマネをしていた息子は空腹に耐えられず、夜中に盗み食いをしていたところを僕に見つかり健康体を継続していた。これは父親としては安心だが自分の意志で物事が考えられないなどと言う所は情けないと頭を抱えた。

 娘が喰わんなどといいだした五日前。その二日前に僕の妻、つまり彼女の母親が肺炎で入院をした事意外はなにもここ数年変わったことはない。

 原因はそれだろうか?

 確かに、たかが肺炎で七日も入院しているのは心配だ。

 だが、娘もちゃんと分かっていると思う。

「何で食事をしたくないんだ?」

「悲鳴が聞こえて、かわいそうだから」

 質問をまちがえた。

「なんで声が聞こえるんだ?」

「知らないわよ」

 このままでは栄養失調になって死んでしまうという医者の言葉に点滴を打ったせいか、だるそうに僕の質問に答える。

「知らないって言われても困るだろう。いつからなんだ」

「五日前。突然食べてたリンゴが……」

思い出して気分が悪そうに言った。咀嚼されている悲鳴はどんなものだろうか、きっと聞いたことのないようなひどく気分の悪い音だろう。僕も想像して気分が悪くなった。


「母親として知っておくべきかと思って言いに来たけど、どう思う」

娘の命に関わることだと思って妻に娘の言うことや状態を報告した。すると彼女は驚くこともせずこういった。

「もうそんな年頃なのね」

どう言った意味なのだろうか?

「男の人には判らないかもしれないけれど女の子は食べ物の声がある年頃になったら聞こえるようになるのよ。お料理の上手な人はその声を出せないぐらい食べ物をうまく調理できる人なの。私もそのために一生懸命だった」

「じゃあ君も声が聞こえるのかい?」

「ええ。もちろんよ」

そういった彼女の笑顔に僕は背中に汗を感じた。


 それから数日後、病院から妻が戻った。

「まだ声はするかしら?」

できあがった料理を娘の前に出して言う。

「‥‥何にも聞こえない」

皿からなにも聞こえないのを知ると安心したようで娘はそれを食べ始めた。ひとまずは安心だ。

だが、娘のおかしな言動とその原理は判ったもの、僕からへの妻への不信感は膨らんでいった。

なぜ、声なんかでる食べ物を調理できるんだ。幼い娘は声を聞いて病気になった。けれども妻は声を聞いてその悲鳴に包丁を入れている。慣れ‥‥というには無理があるような気がする。

「どうしたの、ご飯食べないの?」

考え込む僕にそういった彼女の笑顔が怖かった、僕は男として知ってはいけないことを知ってしまったのかもしれない。


はい。

気持ち悪いです。


中学生の頃にこそこそっと書いていたノートから発見しました。

ホラー&ミステリーの才能がなさそうです。


現実がこれだと大変鬱になります。

おんなのひとって怖いですね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] タイトルと、心地よい不快感を残すストーリー。 [気になる点] 「、」をもう少し使うと読みやすいかも。 [一言] これが中学生のときに書いたのが凄い。普通におもしろかったです。 「食」につい…
2011/12/16 16:31 退会済み
管理
[良い点] 良かった。 前作の【以心伝心】も拝見させて貰いましたが文章運びが上手い作者だと思います。 [気になる点] 感覚だけで書いており、多少努力を怠ける作者の性格は悪い点。 [一言] それでも良い…
[良い点] シュールね [一言] 気持ち悪いか、鬱になるかは読者が決めることです
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