ほむら立つ
これは、とある人から聞いた物語。
その語り部と内容に関する、記録の一篇。
あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。
つぶらやは、火の扱いに関して自信はあるか?
火はめちゃくちゃ身近にあるものかつ、指折りに危ないものだ。正しく使えるなら大きな助けになるが、大きな事故への第一歩ともなる。
事故はおろかなものが2つ以上そろって、はじめて起こるものとされるが、相手が無機物だった場合は判断が難しい。相手がただそこにいるというのは、おろかか否かは判断が難しいからな。
でも、火が出ているところに突っ込んでいくのは、誰がどう見てもおろかな行為ではあろう。早急に対処するべき案件だからな。
しかし、消し止めることが必ずしもベストとは限らない。ごく限られた環境では、火に対し特異な接し方をするみたいなんだ……。
ちょっと前、久々にあった友達が話してくれたんだが、聞いてみないか?
火を呑む。
友達が以前に訪れた、とある離島で行われていた風習……というか日常というか。奇妙なものを目にしたという。
かの離島は人口が少ないぶん、自然が豊かな島なのだが、奇妙な現象がある。
ときおり、大規模な火事らしきものが起こること。友達が寝泊まりさせてもらった家で、真夜中に目が覚めた際、外をひょいと見ると空が真っ赤に染まっているじゃないか。
夕焼けなぞ、とっくのとうに過ぎ去っている。そうとなれば火事が有力な原因。なお身を乗り出してみると、遠くの森たちが赤々とした炎へ包まれているじゃないか?
これは一大事、と泊まらせてもらっている家の人を起こすも、特にあわてた様子はなかった。
「あれは天からの恵みの炎だ。ほら、焦げた臭いなど感じないだろう? みんな同じように考えているから、消防も動かない。むしろ、明日おもしろいことがあるぞ」
本州側なら、とんでもない発言ではあった。
しかし、友達がきびすを返してもう一度火事を確かめようとしたときにはもう、火は完全に消えてしまっていたらしい。
炎に包まれていた木々も、焦げた気配がまったくない。見間違いといわれたらそれまでだろう。友達は首をかしげることしきりだったとか。
そして翌朝。
並べられた朝ごはんを見て、また友達の目は点になる。
ご飯、味噌汁、焼き魚……。
典型的な和食メニューの数々が、火をふいているからだ。
お皿に盛られたそれらを包み、柱のように立つ火、火、火。だが、身体にいくら近づけても熱を感じることはない。
「こいつが恵みさ。これが現れるってことは、これに害する『虫』もそばにいるってことだ。こちらの体調を崩してくる厄介なやつがな。お前さんも食べたほうがいい」
そういって、いつものように平らげていく家人。
友達はなお燃え立つ炎にためらい、なかなか口をつけられずにいたものの、ほどなくトイレへ駆け込む羽目になる。
そこで身体中のあらゆる水分ができってしまうのではないか、と思うほどの長い長い尿が出た。
家の人が持ってきてくれた、火が立つご飯を食べるとそれがぴたりとおさまってみたいだけどね。もし食べずにいたらどうなっていたか分からない、と。
火、あるいはそれに似た姿のもの。どう接していくかは環境次第なのだろう。




