王族達との晩餐
なぜこんなことに…。
目の前には国王陛下、皇后陛下、アレク様、ヘレン王女様、ティナ王女様…。
それにスペンサー公爵のご令息のミュラー様とお兄様であるエリック。
それにお父様とスペンサー公爵様が顔を揃えている。
お兄様も困った顔。
お父様に至っては苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「皆今日は無礼講だ。新しい家族として楽しもうではないか。」
楽しそうな陛下にお父様は
「まだエリックもさらにはリシェルも婚約者はいませんが。」
「何をおっしゃるんですか?お義父様。私はエリックの婚約者も同然です。正式ではありませんが家族だと思ってお付き合いさせていただきたいです。」
ヘレン様の言葉に陛下も
「うんうん。私もマルチネス家とスペンサー家と婚姻が結ばれるのが嬉しいぞ。若い頃から切磋琢磨してきた二人と親戚になれるんだからな。」
「お父様。ミュラーとの婚約はもぅ整ったのですよね?」
「すでに手続きはすんでおる。」
「まぁ、良かった。これで正式にティナはミュラーの婚約者なのですね。嬉しいです。」
ティナ王女様はミュラー様を見て嬉しそうに微笑むと
「私も嬉しいです。ありがとうございます。」
礼儀正しく頭を下げるミュラー様。
小さな頃から物怖じしないしっかりした子だと思ってたけど本当に大人になってなおさら公爵家次期当主として相応しく成長してるのがわかった。
「私達はいつになるのかしらね。」
ヘレン王女様がお兄様のほうをジトーっと見てそう言ってきたけど
「私は団長試験に合格しなければ誰とも婚姻などまして王族の方との婚姻など考えられません。あと1月で試験があります。ヘレン王女様に待っていてくれとは…」
「言ってよ!必ず試験突破するから待っていてくれと。」
うっすらと涙をためてそう言うヘレン王女様にお兄様は微笑んで
「私の気持ちは何も変わっておりません。あなたが私を求めてくださるのであれば合格したらあなたとの婚約を認めてもらいに陛下にお願いしにきます。」
うわぁ。
やばっ。
お兄様かっこよすぎです。
陛下も皇后陛下も微笑んで2人のやりとりを見ていた。
もぅ合格とか関係ないんじゃ…と思ったけどそこはお兄様のけじめなんだろうなと思った。
「こんな兄がいるリシェル嬢相手は骨がおれますね。アレク。」
フフと笑って皇后陛下はアレク様にそう言った。
「リシェルはマルチネス公爵家から出すつもりはありません。私や息子のお眼鏡にかなうものがいない限り、リシェルがどうしてもと望まない限りはどこにも嫁がせるつもりはありません。」
お父様のはっきりした声でまわりは静まり返ってしまった。
王族相手でもお父様は変わらない。
家族想いのお父様。
「その節は私の兄が大変リシェル公爵令嬢を傷つけてしまい申し訳ありませんでした。私ももうリシェル嬢が傷つかぬよう一緒に見守らせていただきたいです。何かあれば
スペンサー公爵家すべてをかけてリシェル嬢をまもらせさていただきます。それは父もティナからも了承得ております。」
イヤイヤイヤ
そんな事しなくても
「それでも足りないくらいだが…愚息が誠に申し訳なかった。」
スペンサー公爵様から改めて頭を下げられる。
「あの。もう大丈夫ですので。本当大丈夫です。スペンサー公爵様には小さな頃から本当によくしていただいて、ミュラー様も可愛い弟のような関係で家族ぐるみでよくしていただいてます。これからもどうぞ今までどおりよろしくお願いします。」
「リシェル嬢。本当にありがとうございます。」
スペンサー公爵様が頭を下げるとミュラー様も一緒に頭を下げる。
ティナ王女様まで。
「頭をあげてください。ティナ王女様まで。やめてください。」
慌ててそう言う私に
「私はもうスペンサー公爵家の次期当主の婚約者ですもの。お義父様やミュラーが頭を下げてるのだから下げるのが当たり前です。」
「謝罪受け取らせていただきます。」
この場はスペンサー公爵家が改めて、私への謝罪をする場として用意されたのだと気づいた。
私自身まだ謝罪を受けていなかったし、家同士で終わってることだと思っていたから。
でも、スペンサー公爵家としてはまだ終わってはいなかったんだろうと思う。
「この場を設けていただいた陛下並びに皆様に感謝いたします。」
私は頭を下げてお礼を言うと
「何も言わずともわかるか。」
国王陛下は満足そうに頷くと
「ミシェル今日は気分が良いのぉ。」
皇后陛下に優しい笑顔を向けると
「本当に。素晴らしき日ですわ。」
国王陛下に微笑んでそう言った。
スペンサー公爵の肩を叩くお父様。
ミュラー様と笑顔で話すお兄様。
「リシェル。みんなが笑顔だよ。嬉しいね。」
アレク様がいつの間にか傍にやってきてそう言う。
「はい。みんなが笑顔でいれたら本当に嬉しいです。」
「そうだね。私もそんな国を作りたい。陛下にはまだまだかなわないが。あの狸ジジイは本当私の上をいく。」
ちょっと拗ねたようにそう言うアレク様がなんだか可愛くみえた。
「のほほんとしているように見えて実際は緻密で隙がない人なんだよ。」
私が考えてることがわかるのか笑ってそう言う。
「まぁまぁ。笑い方を忘れてしまったんじゃないかと心配してたけどちゃんと笑えるのね。良かったわ。」
皇后陛下がアレク様を見てホッとしたような笑顔を向ける。
「笑い方なんてしりませんよ。ただ、リシェルだから笑顔になれるんです。」
アレク様の言葉にみんな生温かい瞳を私に向ける。
頬が熱くなる。
なんていって答えたらいいかわからないでいると
「悪い虫は退治しますがよろしいですか?」
とお兄様がそう言うので慌てて
「悪い虫じゃありません。お兄様、不敬罪になりますからやめてください。」
「今日は無礼講じゃから許すぞ。」
楽しそうにそう言う国王陛下。
イヤイヤイヤ
止めようよ。
なんだか騒がしい王族達との晩餐は夜遅くまで続いていた。