王太子殿下からの告白
この国の第1王子で王太子殿下であるアレク・シュナイダー殿下。
のほほんとしている陛下のかわりにたくさんの公務をこなしていると言われている。
頭脳明晰、文武両道。
非の打ち所のない人。
そんな完璧な人に見初められる人はさぞ大変だろうなとずっと思っていた。
そんな人この国にいないのではないかと…
「リシェルと呼んでいいかな?さっき聞く前に呼んでしまったが。」
「はい。どのように呼んでいただいても結構です。」
「そうか。ではリシェルもアレクと呼んでほしい。」
「え?さすがにそれは…。」
「アレクと呼んでリシェル。」
甘い声…。
は!?
イヤイヤイヤ…。
ぼーっとしてちゃだめでしょ。
「では、アレク様と呼ばせていただいてもよろしいですか?」
「本当は様もいらないけど、今はいっか。それでいいよ。」
今はいっか!?
「リシェルはダンスが上手だね。」
「公爵家の娘としての嗜み程度です。」
「私も王太子としての嗜み程度だな。」
そう言って笑う王太子殿下。
笑った。
無表情王太子と言われてる殿下が間近で笑っている。
「アレク様は笑わないと噂だったので間近で笑顔を見れて光栄です。」
「そんな噂があるのか…。確かにあまり笑わないな。でも、リシェルの前だと笑顔になれる。」
そう言ってとびっきりの笑顔で私を見つめる。
頬が熱くなるのがわかった。
うわぁ。
この笑顔はみんなに見せたら大変だろうな。
みんな殿下を好きになっちゃうよ。
イヤイヤイヤ
私は好きにならないし。
そもそも恋とかもう当分いいし。
「アレク様、曲が変わりますが。他の方と…」
「いや、リシェル。疲れるまで付き合ってくれないか。他の令嬢とダンスはしない。」
「アレク様がよろしいのであればお付き合いします。」
私の言葉に笑顔を向けるアレク様。
ただ、この国ってファーストダンスから2曲、3曲と踊るのってその方に決めたという意思表示じゃなかったっけ?
王族は別なのかな?
「殿下、リシェルと2曲3曲と踊りすぎです。」
お兄様こそヘレン王女様とずっと踊ってるのによく言えるな。
「いいじゃない。私だってエリックとずっと踊っていたいもの。」
ヘレン王女様はそう言うとアレク様も
「私の意思表示だ。何か文句あるか?私はリシェルにも皆にも意思表示として示しているだけだ。」
「え?」
「リシェル、そういうことだ。」
優しい笑顔を私に向けるアレク様。
「私は…」
「いそがなくていい。私は君以外とは結婚する気はない。だから、君の気持ちを大事にしてほしい。」
「アレク様…」
「少しずつ私のことを知ってほしい。リシェル。」
誠実に真摯に語りかけるようなアレク様の言葉に私は頷いてしまった。