舞踏会のはじまり
キルフィスの別宅…
スペンサー公爵様はかなり御立腹ですね…
別宅与えるところはやはり実の親子の情なのかもしれませんが…
お兄様から話を聞いてマリアには耐えられないかもしれないと思った。
マリアは可哀想だからと甘やかされてきた。
何不自由なく過ごしてきたマリアがそして教養もろくに身につけてないマリアがその生活に馴染めるかは不安しかなかった。
2人が慎ましく幸せに暮らしていくことを願うばかりだ。
まだつらい気持ちがないとは言い切れない。
10年以上婚約者だったし、私はフィリップ様に恋をしていたから。
もう当分は恋はいいし、色んなお話も来てるようだけど断ってもらっていた。
だけど王宮からの舞踏会の招待だけは断れなかった。
なので婚約者もいないお兄様にエスコートしてもらい参加することになっていた。
お兄様はもうすぐ18歳。
結婚しても良い年だけど、婚約者も作らない。
さすがに妹のエスコートしてる場合じゃないと思うんだけど…。
騎士団の正装に身を包んだお兄様は妹の私から見ても眉目秀麗。
黒が濃い銀色の髪にアメジスト色の瞳。
世のご令嬢達はほっとかないと思うんだけどなぁ。
お兄様にエスコートされながら
「お兄様はこんな素敵なのに世の中のご令嬢は見る目ないですよね。」
そんな私の言葉を苦笑いしながら
「私には決まった人がいるからね。」
え!?
びっくりしてお兄様の顔を見ると優しい笑顔で
「リシェル、舞踏会のはじまりだよ。」
そう言って舞踏会の会場である王宮の広間に入っていった。
「わぁ。」
キラキラ光って眩しいくらい。
別世界。
王宮の舞踏会なんてはじめてだったから。
小さな頃は来たことあったようだけどフィリップ様と婚約してからは来たことはなかった。
「お兄様。夢のような世界ですね。みんなキラキラ輝いてます。」
「そうだね。でも、リシェルだってその中の一つなんだよ。」
「では、お兄様もですね。」
私は笑顔でお兄様にそう返した。
みんなが騒ぎ出したのでそちらのほうを見ると王族の方々がやってきた。
父上もスペンサー公爵も国王の側使えなので傍にいた。
「お父様だ。」
「父上気づいたようだね。私達も国王陛下にご挨拶しにいこう。」
そう言ってお兄様は私の手を取って歩きだした。
一番キラキラ光ってる王族たちの待つところへ。
「ご挨拶申し上げます。リシェル・マルチネスでございます。」
お兄様に続き、私も王族の方達へご挨拶している。
ドキドキする。
ちゃんとできたはず。
「エリックそれにリシェル顔をあげよ。」
陛下にそう言われて顔を上げると優しい笑みを浮かべた陛下が
「いつもマルチネス公爵には世話になっておる。いつも怒られてばかりじゃがな。」
「恐れ多いことでございます。」
お兄様がそういうと
「エリック、久しぶりね。お忙しいようですがたまには時間を作ってくださいね。」
ん?
第1王女様のヘレン様がお兄様にそう言った。
「ヘレン王女様、まだ正式に決まっておりませんのでこの場ではそういったことは。」
「私は早くエリックに嫁ぎたいのにエリックが団長試験に合格するまではって先延ばしにしてるんじゃない。せめて婚約者にしてもらわないと気が気でないのよ。」
痴話喧嘩…。
「こらこらヘレン。エリックを困らせるのではない。」
「姉上はエリックを昔からお慕いしてますから仕方ないんではないですか?」
王太子殿下まで参戦しちゃったよ。
まだ長い列できてるのに…
「それよりももうすぐ曲が始まります。リシェル嬢私と踊って頂けませんか。」
え…?
跪いて私の手をとり私の手の甲にキスを落としてそういう王太子殿下。
これって断っちゃいけないやつじゃない!?
あ、曲がはじまっちゃう。
「私でよろしいのであれば喜んで。」
慌ててそういう私に王太子殿下は
「リシェルがいいんだよ。」
そう笑顔を向けてくれた。
黒髪に深い青い瞳。
容姿端麗な王太子殿下に婚約者がいないのもこの国の七不思議の一つだった。
王太子殿下は王太子妃に相応しい令嬢を探していて見つけられないと誰かが言っていた。
そんな殿下にファーストダンスを申し込まれた私。
令嬢達の厳しい視線がいたるところから向けられていた。