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悪魔と契約した俺は天職を全うする  作者: アイス奢って下さい
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3デユラ砦攻防戦




「なあ、ディア。あれなんだ?」

「剣聖ですね」

「だよなー」

「そうですね」


「……………え? やばくね!?」


 魔王スメットとそのメイドのディアはデユラ砦を訪れていた。


 人魔対戦。それは簡単に言うと陣取りゲームだ。より良い土地を、より賢明に、より広大に治める。


 それが人魔対戦。人間サイドは魔族サイドを追いやろうとし、魔族サイドはそれを防いで逆に人間サイドを攻める。そしたら人間サイドはそれを防いで…………みたいな循環だ。


 そして今、魔族サイドは大陸の北東部を治めている。というか、北東部しか治められていない。北東部以外の場所は全て人間サイドが治めていた。


 つまり、魔族サイドは劣勢なのだ。


……………それもこれも全部スメットの妹想いの行動からなのだが。


 あんなこんなで、北東部しか治めていられない魔族サイド。人間サイドによって北部、東部、中央部、海と、あらゆる方向から攻められている。


 そんな数多ある戦場にて、最も激戦区とされる場所。デユラ砦。


 中央部からの攻撃を防ぐ、魔族サイド随一の砦だ。


 だが、そんな要塞は現在窮地に立たされていた。デユラ砦は魔族サイド最大の砦なのだ。その重要性は魔王城の次と言っても過言ではない。


 そんな要所を人間サイドが見逃すだろうか。


「確かにデユラ砦は要所だけど………」

「剣聖を送ってくるのは予想外でしたね」


 魔王スメットも、メイドのディアも、デユラ砦の重要性を理解していた。


 だから、人間サイドがデユラ砦に大攻勢を仕掛けてくるという情報を掴んだときには百万単位で兵士が動員されるだろうと予想していた。


 こうして魔王自らが砦に訪れたのはその大攻勢に備えるため。だというのに蓋を切ってみればなんと剣聖がいるではないか。


 天職持ちの十人。それは人魔対戦に於ける大きな決定打となる。言わば切り札だ。


 天職を与えられたということは、それだけでその者の実力を表していることになる。天職とはそれぞれの分野の最強。極めた者なのではない。極めた者の中の頂点、最強なのだ。


 天職持ちが死んでもその分野の新しい最強に天職が与えられる。が、それは成長しなければ前の人材の劣化版でしかない。


 天職持ちは戦略級の軍事力であると同時に、失えば変えの効かない貴重な人材でもある。


 そんな人材を、大した局面でもないのに………砦一つ落とすのに使うとは………


 スメットも天職持ちの実力者なのだが、魔族サイドは深刻な戦力不足。それに対して人間サイドは戦力が豊富…………


 なんでユトリのある人間サイドが剣聖を前線に出したのだろうか、と魔王スメットは頭を悩ませる。


 そして、現実逃避しようとディアを見る。癒やされたい。ただその一心だったが、ディアはなんと敵の兵力を双眼鏡で確認していた。


 魔王スメットは頭を数回振る。現実と向き合っているメイドがいるのだ。その横で主人が頭にお花畑を広げていては格好が付かない。


 スメットはさり気なく敵の戦力を把握することにした。ちょうど横に有能メイドがいることだし。


「剣聖か。参ったな。今、この砦にいる兵士の数は?」

「現在、戦闘中の兵も含めて十万程度です」

「敵の兵士の数は………」

「正確な数は分かりませんが、百万はいます」


 そして、魔王スメットは現実逃避することを決意した。全力でディアを見て癒される。


 もともと、魔王スメットは百万の兵士を葬るためにこの砦に訪れたのだ。それなのに、来てみればどうだろう。戦場となっている砦の手前では、剣聖がその猛威を振るっているではないか。


 剣聖がいるなら、兵士は十万程度かな。そんな儚い理想を抱いたのが良くなかった。なんと兵士もしっかり百万いる。現実はこれでもかとスメットを困らせる。


 剣聖と、百万の兵士。どちらか片方であれば、魔王スメットはここまで困らない。だが、両方となると御手上げだ。単純計算で二倍の労力が必要になる。


 魔王スメットが負け戦になることを確信している横では………


 メイドのディアが剣聖を観察していた。


 【剣聖】


 外見は驚くべきことに、普通のおじさんだ。三十代から四十代。そんな齢だろう。


 それでも、剣聖になるだけの実力はあった。自然すぎて違和感がある剣さばきで次々と魔族を斬り裂いている。防御力に定評のある甲羅族ですら一振りで真っ二つ。


 獣人族が放つ炎魔法が剣聖へと向かう。命中したら盾を持つ人間でも丸焦げになるだろう。そんな魔法だった。


 そう、魔法だった。その魔法はもはや過去形となる。魔法発動と同時か数瞬前、剣聖が大きく踏み込んで獣人族の兵士の首を跳ねたのだ。


「あんな芸当ができるのはスメット様と狂戦士様ぐらいでしょうか」


 ディアも少し武道を嗜んでいたりするのだが、剣聖相手には全く歯が立たないだろう。


 魔法発動の兆候を感じ取るだけでなく、それに対処するなど敵味方が入り乱れる戦場でできることではない。


「すごいですね」


 剣聖の戦いを見て思わず称賛してしまう。


 それでも、ディアは確信していた。この戦は勝つと。


 だって、こちらには魔王スメットがいるのだから。





白銀の髪を煌めかせるオッドアイことディアちゃんの活躍をいつか書きたいな〜

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