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来世に期待とかいうレベルじゃなかった  作者: 猫宮蒼
一章 ある親子の話
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強制廃墟探索



 遺跡を出た後はイミルアの町に戻るのではなく、そのまま森を突っ切って向かい側にあるテレシアの町へと移動した。

 どのみち次に向かうのはそこになるだろうし、一度イミルアへ戻って街道沿いに進むとなると余計な時間がかかる。それなら、という事でそのまま森を突っ切ってテレシアへと移動しようとなったのはある意味で当然の流れだった。


「とりあえず、人のあまり立ち寄らないような場所で、雨風をしのげそうな場所。そこそこの広さがあるのであれば可能性はあるな」

「うぅん……やっぱり? となると……思った以上に調べる場所ありそうかも。大変大変」


 テレシアへついてさくっと宿をとった。俺は普段あまり気にせず部屋のあまり具合だとか値段だとかで選んでいるが、ミリアは基本的に裏で反帝国組織と繋がりのある場所を選んでいる。その方が何かあった場合に都合がいいとの事だが……まぁミリアがそう言うのであればこちらも今回はその宿を選んだ。


 大部屋しかありませんとかだとじゃあミリアだけここで俺別の宿行くわ、とか言ったかもしれないが、個室が人数分空いていたのでそういった面倒な事にならなかったのは良かったのかもしれない。


 うん……最近な、気付いたんだけど。

 前世の俺成分がガッツリ出る前はあまり気にしてなかったみたいなんだが、転生した事実に気付いたアフター俺は、寝る時に近くに人がいると何となく寝にくいという事実が発覚した。

 いや、ハンスとか結構長い付き合いになるけど、今までのビフォー俺割と単独行動する感じでこいつの事置いてったし、そういう意味ではおはようからおやすみまでずっと一緒、みたいなのそこまでなかったんだが、最近はほら、ほぼずっと一緒に行動してるようなものだろ?

 宿はさておき野宿の時とか同じテント。


 いや、テント別にしてもいいんだけど、俺のテント、ハンスのテント、更にルフトのテント、なんて三つも出してみろ。場所取りまくるわ。精霊に頼んで見張りは任せてあるけどこんな無駄にテントあったら行商人が複数で行動でもしてるんだろうなとか思われて山賊とか襲いにくる可能性上がるわ。いやまぁ襲う時はテント一つだろうと襲いに来るだろうけれども。


 一緒のテントだけど、別にハンスがうるさいとかそういうわけではない。至って普通。いびきとか寝言とか歯ぎしりとかそういうの一切ない。普通に呼吸の音はするけどそれだけだ。

 でもなんか隣に誰かいるっていう状況が寝にくい。


 その事実にハッキリと気付いてからは尚の事宿は一人部屋を選ぶようになった。

 最終的に眠れるけど寝にくいって事は寝るまでの時間がややかかるからその分睡眠時間が減る。多分誤差の範囲とか言える感じだけど、そうやって俺本人が知らぬ間に疲れを蓄積させていざという時に思わぬ怪我でもしたらそれはそれで面倒な事になりそうなので安眠確保は重要だ。


 さておき宿をとった俺たちは、とりあえず宿の食堂、人目に付きにくい席に座りこれからの事を話していた。



 あの遺跡以外にああいった移送方陣がないとも限らない。

 魔法陣を置く場所はどこだ、となったので俺としてもごく自然に考えられる場所を挙げたわけだが。

 テーブルに肘をついてミリアはうぇえ……と今にも言い出しそうな表情を浮かべている。


 魔法陣は取扱注意とか言われそうなくらい扱いが面倒だ。ちょっとでも描き間違えたら発動しないし、そこまではいい。インクが古くなって擦れたりだとか、埃が積もったりだとかでも使えなくなる。紙に描いた物だって曲がったり折り目がついたらアウト。そういうわけなので基本的にはあまり人が出入りしない場所で、なおかつ雨やら風で魔法陣に何らかの影響を与えかねない場所が望ましいわけだ。


 日の光があたる場所だってインクがそのうち変色したら魔法陣は使い物にならなくなるのでそういう意味ではあの遺跡の地下は条件に適していた。


 あまり人の目に触れない場所。雨や風などの周囲の天候で荒らされたりしない場所。そして勿論人が移動してくるわけだから、ある程度の広さも必要になる。


 最低条件としてそういった環境であれば、魔法陣を設置されている可能性はあるわけだ。

 逆に砂ぼこりが舞うような砂漠地帯だとか、一年中雪に覆われてるような場所は魔法陣に関しては無いと思ってもいい。砂とか風でしょっちゅう飛んでくるようなとこで魔法陣なんて描いてみろ。決して地面と靴を擦らず移動でもしない限りちょっとした事で簡単に魔法陣が破損する。雪に覆われてるところはそもそも地面に描く場所がとても限られてるが、そういった場所は人里か魔物がよく見受けられる場所かに分かれる。そうでないにしてもそれなりに人の目がある場所だろうし、そんなところに魔法陣なんてあれば誰が設置したのかなんて話は出るだろうし、そこが人里なら住民が誰もやってないなんて話になれば不審な魔法陣は早々に消されるだろう。


 最低限魔法陣が描かれそうな場所の条件を口にしたが、どうやら思った以上にそういった候補はあるらしくミリアの表情が難しいものになるのも仕方がない。


 遺跡がそこらにあるわけじゃないが、この辺りにはいくつか捨てられた村なんてのも存在する。山賊に襲われて大半は殺されたけど数少ない生き残りが逃げ出した後、山賊なども討伐されたものの生き残った村人が戻ってくるかと言われれば少数だととても暮らしていくには難しいとなって別の町に移住。結果として廃村となったものだとか、普通に不便な暮らしに嫌気が差して住人が引っ越した結果村人の数が片手で数える程度、しかもいずれも老人しか残らず最終的に寿命やら病気やらで亡くなって廃墟化、とか理由はいくつかあるものの、そんな感じで今はもう誰も住んでいない村というのがこの先にいくつかあるのだとミリアはため息混じりに教えてくれた。


 人が住まなくなったとはいえ、それらも大体ここ最近の話みたいで建物がまだ残っているとなれば確かに条件に該当する。

 世捨て人となってそんな村でひっそり暮らすぞ、みたいな奴がもしかしたらいるかもしれないが、可能性は低い。既に誰も住んでいないのだからと山賊や盗賊が根城に、なんて考えるかもしれないが、場合によっては魔物が棲みつく可能性もあるので賊の方もそういった場所で頑張って魔物退治しながら根城を維持するぞとか思うはずもない。そもそもそういったアウトローな方々は普通に町や村で暮らせないから住む場所に関してはホント色々と気を付けないとすぐ死ぬ事になりかねないので、案外そういった部分は慎重になってる。魔物があまり寄り付かない、それでいて討伐する人間などが来ないようなわかりにくい場所だとか、場所を知られていても行くのにそこそこ骨が折れる、みたいな場所を選ぶ。


 ソースは過去俺が各地を巡ってた時に遭遇した場所。


 ともあれ、何か魔法陣描くのに適した場所がそれなりにあるとなると、流石に全部を俺らが調べるわけにもいかないし、指示書を出すにしても万一既に帝国兵が来ていてそれと戦闘にでもなった場合、どうにかできる程度の実力のある者が望ましい。

 反帝国組織の大半は異種族だから、最悪その場で捕らえられて帝国兵と一緒に魔法陣で帝国へ、なんて事になったら救出も難しくなる。

 ちょっと行って確認するだけで済めばいいが最悪の展開を考えると誰彼構わず確認してきてなんて指示書も出せない。


 ミリアの鳥で確認しようにも、こいつらは扉とか開ける事ができないので室内にあるだろう魔法陣の確認をするのは難しい。

 窓が開いてた、とかそういう場所があれば建物の中にも入りこめるが、どこもかしこも全室開放、なんて都合よくはいかないだろうしそう考えると鳥に何もかも任せるなんてできるはずもない。


「とりあえず……この近くはオレたちが行った方が早いかもしれませんね。そうじゃない場所はまずそういった場所に最近冒険者らしき奴が向かったとかの目撃情報があれば念の為確認する、とか」

「それが一番無難かもしれないな」

 ハンスの案は可もなく不可もなくといった感じだが、現状それ以外に何か名案があるでもない。


 まぁ人里に来るたび人探しだの魔物退治を頼まれるだのといった雑用をやる事を考えれば、自主的にそういった場所を見てきた方が手っ取り早いような気もしてくる。



「……テオの館」


 そんな中、ルフトがポツリと言った言葉。

 いきなりすぎて何の話だったっけ? とすら思う。


「以前この辺りで魔物退治の依頼を請けた時に、見かけた事がある」

「テオの館、って貴族様の別荘とかそういう?」

「魔物退治の依頼を出した相手がその近くに以前住んでいた、と言っていたが館も既に廃墟になっているのだと言っていたはずだ。

 ……廃村よりも屋敷の方がよりしっかりした造りだろうし、広さも申し分ない。可能性としてはこれも高いのでは、と」

「えっと、それどこに? わたし聞いた覚えがない」

「さっき言ってた廃村の近くだったかと。聞いた覚えがないのは恐らく村とセットにされているとかそういう扱いなんじゃないか?」


 そう言われると確かに、と思える。

 村の近くにあるならそれも村の一つと考えられるだろうし、いくら何でも館一つだけぽつんと建ってるとなればそれはそれで悪目立ちしそうだしそうなればその場所についてミリアが知らないはずもない。

 何より館というのなら、拠点にするのもうってつけな気がする。


「そこ、近いんすか?」

 この辺りで、と言うからにはそう遠くないはずだ。


「ここからなら大体三日くらいの距離だったかと。とはいえその時のボクはこの辺りの地理に不慣れだったから、今ならもう少し早く到着できるかもしれない」


 流石にそこまで聞いて放置で、というわけにもいかない。次の目的地が早々に決まった。

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