表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
来世に期待とかいうレベルじゃなかった  作者: 猫宮蒼
一章 ある親子の話
17/172

本心から気遣っている



「魔物退治を頼まれました」


 ほーらな!


 ハンス達と合流してハンスの第一声がこれって時点でもうお察しだったよね!


 ハンスとルフトはとりあえずそこら辺の村人から話を聞いて、村人からあの人自警団の人だよぉ、みたいな紹介うけてからそっちに話聞きに行って、更にそっから村長の話を聞く事になったんだとか。

 わらしべ長者か何かか? ってくらい順当に村での権力持ってる相手に取り次がれていってるよな。


 反帝国組織がこの村とどういう関りがあるかっていうのは、まぁ一応この村に何名かいるらしいのでそっからの支援とかそんなんだろうなとは思うんだ。

 今はあまり戦えなくなってしまったかつての組織の奴とかがこういった場所で農業に勤しみ、何らかの情報が入ったら手紙出すとかそんな感じらしい。

 まぁ、寿命の長いご長寿種族はさておき人間とかはね、四、五十年くらい生きたら割と身体にガタきちゃうからね。仮に長生きしてもやっぱ寄る年波には勝てないからね。

 若い時と同じように前線で戦える! とか思ってると大体あっさり殺されるからね。

 年をとってもシャキッとした人はいるけど、でもやっぱりだからって前線で戦えはないからね。死ぬから。


 魔法とかで何かめちゃくちゃ強化したりすればもしかしたら一騎当千の活躍もできるかもしれないけど、それ下手したらファイナルアタックになりかねないからね。

 死に方を決めた相手がそうするならもう仕方ないなってなるけど、そうじゃなかったら引っ込んでろってなるからね。


 異種族も割と簡単に死ぬけど人間はそれ以上にもっと呆気なく死ぬから。


 さておき、ハンス達が聞いた話によるとここ最近畑を荒らす害獣が出るようになったとかで、最初は罠とか色々仕掛けてたみたいだけど、それが実は害獣どころか魔物だったって話らしい。

 一応この村にも自警団とかあるし、戦える人材は多少なりともそろってるけどそれにしたって人里に魔物が近寄って来る事自体が滅多にないのに畑を荒らす魔物は割と立て続けにやってきたらしい。


 まぁその時点で何か変だぞ、って思うわな。普段は近寄らないわけだし。


 で、罠に引っかかったもののそこから強引に脱出した魔物が逃げてった方角が山の方なんだとか。


 もしかしたら山の餌場とかが減ってこっちに来たのかもしれない、とか村長が言ってたらしいけど、魔物ってそんな普通の動物と同じような感じで出没したっけ……?


 うーん、種族による、としか。

 思い返してみると魔物にも色々いるからな。一概にどうとは言えない。


 というか、それさっき俺が精霊から聞いた話とほぼ一致してますね。まぁその魔物が山向こうから来てるとか洞窟が繋がっててそっからとかそういう話まではないみたいだけど。


 別に依頼を断っても構わないわけだが、これを断ると多分食糧支援とか物資が減るだろうなと思うので引き受けるしかない。

 いや、俺たちが引き受けなかったら今度はまた別の誰かに指示書が届くはずなんだが、その頃には畑は魔物に荒らされて食料は駄目になってしまいました、じゃ流石にヤバいからな。

 フロリア共和国としてもここの農作物の何割かは出荷されて他の町なんかに流通してるだろうし、ここがなくなれば流石に多少困った事にはなるだろう。


 表向き中立であっても裏では一応多少なりとも援助はされてたりするわけだし……こっちに何かよっぽど切羽詰まった事情がない限りは断らずに引き受けるべき、なんだろうなー。


 何だろうこの……新しい場所に着いた途端に早速何かに巻き込まれてる感……遥か昔のロールプレイングゲームかな? って気がしてきた。

 俺が前世で幼馴染から借りたゲームだと依頼は自分で選んで好きにしろ、みたいなのもあったから、こういった強制っぽいのは尚更一昔前っぽく思えてしまうぞ……


 まぁ、なんだ。

 自分で依頼を好きに選べるっつっても最終的に結局コンプするからそれなら最初から全部やっとけよみたいになるんだけどな。

 だがしかし強制イベントなのと自分から選べるイベントとでは、結果が同じでもやっぱ心構えが違ってくるわけで。



「……とりえあず、出発は明日だな」

「そっすね」

「え、今から行かないんですか?」


 どのみち行くのはもう決定事項だと腹をくくったまではいいが、流石に今から出発する気もない。今はまだかろうじて明るいが、これから出発なんてしたら恐らく魔物がやってくるであろう山のあたりまで行く頃にはすっかり暗くなってるし、山にしろ洞窟にしろ暗くなってからとか足場が悪い。魔法で照らすにしても、その明かりを目印に魔物の大群がやってくるかもしれない事を考えると出発する時間が間違いなく悪いとしか思えない。


 ゲームでさぁ、レベル上げたいから手っ取り早く魔物の群れに突っ込むわ、みたいなやつならともかく現実として考えるとそんなのノーサンキューなんだわ。

 何で自分から死ぬ確率を上げようとするのか。


 えっ、ルフトって実はとても強いのか? 昼夜関係なく魔物の群れとか瞬殺できる実力をお持ちで?


 ……いや、そうは見えないんだよなぁ。

 確かにバトル物の少年漫画とかルフトくらいの世代が主人公とかラスボスだったりする事も多々あるけど。中学生から高校生くらいの年代の少年少女たちが世界の命運背負ったりする事とかよくあるけど。


「今から行くと目的地らしい場所に着くころには真っ暗になっちゃうからね。そうなるとこっちが色々と不利なのよ」

「そういうもの、ですか?」

「ルフトくん、キミ今まで魔物退治とかどうやってたのさ」

「どう、とは? とりあえず巣とかわかってたらそこに乗り込んで倒してましたけど」

「……ノープラン?」

「案外どうにかなるものだ」

「若さゆえの無謀ってやつ? こわ……」


 ルフトはきょとーんとしているが、えっ、それでホントに今までどうにかなってたって事か?

 それはハンスがこわ……とか言うのもわかる気がする。


 そんなその場のノリで行っていいものではない、魔物の巣とか。

 それと同じ事をハンスがやったら恐らく秒で死ぬ。

 俺は……まぁ生還はできると思うが魔物の巣の種類にもよるな……


「ルフトは一人でどうにでもできるかもしれないが、ハンスはそんな事したら普通に死ぬから。流石に囮だとかエサとして連れてくわけじゃないからそういうのは却下で」

「囮……餌、なるほどそういう使い方が……」

「閃かないで!!」


 何か思わぬ事を言われましたみたいな反応したルフトにハンスが切実な悲鳴を上げた。まぁ、そうだよな。そこ受け入れたらどこかでそういう扱いになるから最悪ハンスが死ぬもんな……


「それに今から行くにしても、疲れるだろ。今日は休んで明日にしよう」

「ボクは別に……いや、言われてみると疲れている、ような……?」


 そもそもケーネス村に来る前は眠そうだったわけだし、今は眠気が飛んだとしても移動中にまた疲れてきて一気に疲労感からくる眠気に襲われて途中で寝落ちしました、なんて事になられても困る。そうなったらルフトを誰が抱えて移動すると思ってるんだ。ハンスだぞ。


 正直ハンスだってそろそろ体力が落ち目になりつつある年齢に差し掛かってるんだから、無茶させてやるなよ。途中でルフトが寝落ちした場合、抱えて移動するのはハンスだろうしそうなった時にもしぎっくり腰にでもなったらどうするんだ。

 腰は一度やらかしたら癖になって中々治らないって前世親戚の叔母さんが嘆いていたんだからな。


 そんな状態でルフトとハンスが戦線離脱でもしようものなら俺一人で頑張らないといけなくなるだろ。

 えっ、じゃあもう最初から俺一人で行った方が良くないか?


「……何ならハンスは宿でそのまま休んでいてもいい」

「えっ、旦那? 一体どういう流れでそういう結論に至っちゃったの?」

「無理はするな」

「いやしてませんけど。まって、ホントどういう思考の流れ?」


「人は、脆いもんな……」


「いやあの否定はしませんけど。でもちょーっと待って旦那。何か変な誤解してない? ねぇ、今から魔物退治に行くのは流石にごめんだけど、別に明日出発ならちゃんとオレ参加できますけど??」

「そうか」

「あっ、これ絶対わかってない顔だ。旦那、ちょっと、人間種族についてもうちょっと相互理解を深めた方がいいんじゃないかとオレ薄々思ってたんで、ちょっと宿で語り合いましょうや」

「問題ない。人間に関しては把握している」


 何せ前世俺人間だったし。

 だというのにハンスは「いや、わかってません」とか言い切るし。何でだ。

 思わずルフトに視線を向けてみれば、彼は彼で何だか難しそうな雰囲気で、

「人間種族、相互理解……その知識は果たして必要だろうか……?」

 なんて呟いている。

 いや、俺より絶対こっちの方が必要な知識だろそれ。だというのにハンスはまずその知識を叩き込まねばならない相手を無視して俺を引きずって宿へと向かい始めた。


 え、これ俺が悪いの? 何で??

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ