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来世に期待とかいうレベルじゃなかった  作者: 猫宮蒼
三章 ある家族の話
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昔からあるけど解明されてない



 精霊学。

 読んで字のごとく。

 精霊について学ぶ学問といえばまぁ、そう。


 この世界の魔法って基本的に精霊ありきで存在してるわけで、そうなるとどうして魔法が使えるのか、だとかそういう部分に注目する奴が出てくるわけだ。

 大昔、それこそ世界ができたばかりだとかの頃はあまり気にされてなかったのではないだろうか、とは思うがまぁそこそこ文明が発展してくると、どうしてこういう現象が起きるのだろう? とかいう疑問を持つような事はあると思うわけで。


 前世だと何が近いだろうか……えーと、万有引力とかか?

 引力があるとか普段全く気にしてなくてむしろ当たり前すぎて全然気づいてなかったけど、改めてそういうのがあるっていう実感とか自覚? するとそれはそれで……みたいな?


 普段は当たり前のように認識してるけど、改めて考えると結構凄い事だよな、っていうのって考える機会がないとまず気付かないもんな。


「けど、わざわざ隠す事か?」


 精霊学と言われて、思わず俺の口から出たのはそんな言葉だった。


 遥か大昔、神話が当たり前のように身近にあったような時代だと精霊も普通に見えてただとかいう話があったような気がするんだよな。

 これはあれか、前世でいう日本神話で何か普通に神様と人間が同じところにいるみたいな。割と神様と人間の距離感が近しい感じか?

 実際に本当かどうか調べようにも流石に大昔すぎて文献とか資料が少なすぎとかいう以前に、ちょっと突拍子もない話すぎて流石に作り話やろ、って思われて本気にされてないやつ。

 仮に事実だったとしても俺だって信じないわ。むしろ事実である説を信じる要素が少なすぎて信じられない、とかそういう。


 本当にそうだったとしたら、みたいな浪漫ある考え方を否定はしないが、精々あったらいいね、くらいの感覚だ。半信半疑って言葉が疑った時点で半分どころか八割疑、みたいな言い分を前世何かの漫画で見たような気もするが、あったらいいねとか思ってる時点でないと思ってる裏付けでは? とか思うが、まぁそこはさておき。


 流石に世界ができた最初の頃から生きてるご長寿な種族は多分いないと思う。

 何千年単位で生きてるご長寿はいないわけじゃないけど、そのご長寿が産まれるよりも昔から世界はあったって話なので。

 いや、もしかしたらいるかもしれないけど、表向きそういった誰かが存在している証拠がなければいないも同然というべきか。


 ともあれ、そこそこの文明が発展して、今まで当たり前のように受け入れていたあれこれに理由をつけるようになってくると、どうして魔法が使えるの? とかそういう疑問が出てしまったわけだ。

 精霊の力を借りない魔術もあるし、昔はもっと色んな種族が魔法なのか魔術なのかわからないが多用していたようだしで、魔法と魔術の区別もついていなかったのだとか。


 精霊も、昔は普通に見えていたらしいし、そうなると今のように魔法が使える事で存在を感じる、なんてわけでもなく。


 ただ精霊自体にも寿命が存在しているらしいので、力のある精霊たちが一人、また一人と寿命を迎え新たな精霊たちが産まれるようになっていったものの、徐々に精霊たちの力が衰えてきたとかどうとか……ってのは昔どこかで聞いた気がする。たまたま訪れた別の種族の集落とかでの昔語りだったかもしれない。


 で、そこそこ小競り合いだとか争いだとかも増えた時期があったか何かで、魔法を多用どころか乱発しまくった時に、精霊が力の使い過ぎか何かで大半が消失したんだったか……?

 いかんせん自分で見たわけでもない伝聞なのでハッキリと覚えてないのは仕方ない。


 結構大規模に消滅したらしいとかで、そこから当たり前のように使えていた魔法が使えなくなって、そこで魔法を使う際に精霊が関わっていたと知る事になった……とかなんとか。


 多分この図書館のどこかにもそういった神話系の本とかあると思うんだけど、探して確かめるつもりまではない。かなりうろ覚えだけどまぁ大体合ってるはず。


 何か魔法の大部分が使えなくなって、魔力量多めの種族はどうにか使えたけどそれは魔法じゃなくて魔術だった、とかっていう話だったはず。

 消滅しなかった精霊の大半はその時点で姿を隠してしまったとかで、魔法が使えずとても不便な時期があったのだとか。

 前世の地球でいうなら氷河期がやってきたみたいな感じか?

 実際その時魔法が使えない事で生活の大半が機能しなくなった種族が滅んだとかって話もあったはずだし。


 そこから少しずつ魔法が使えるようになってきたらしく、徐々に復興していったとかどうとか。


 で、そのあたりから、魔法と精霊の関連性とかが調べられるようになったものの……その頃には既に精霊のほとんどは人の目に触れる事がなくなってしまった、と。


 とはいえ精霊の声が聞こえる者とか実際見る事ができる者とかもいたようだし、そういった相手越しに精霊の声を伝える者も一応いた。そこから魔法は精霊の力を借りている事が知られるようになってきたんだったっけか。


 昔は魔法を使う時にあまり細かい事は気にしなくても良かったようだけど、今は違う。

 今はちょっとした言葉の綾で自滅する事もあるので、魔法を使う際は注意が必要になっている。

 とはいえ魔力量的に人間種族はそう多くないから生活に関するものだけに使っているので、普段はそう滅多なことで事故は起こらない。そう、うっかり何か好奇心でおかしなことを実行しようとしない限りは。


 けれども魔力量がそれなりに多い種族で、しかもそういった過去のあれこれをあまり知らない無鉄砲というか過去の失敗とか自分には関係ないと思ってるタイプとかは割かしやらかす。

 そうしてやらかした相手が人知れずひっそり死んだりするならともかく、場合によっては周囲を巻き込んだりする事もあり、そしてそういった自滅した奴の数が増えてきた事によって魔法についての学問とかも少しずつではあるが増えてきたんだったかな……

 ここら辺長老から聞いた話なんであまり詳しくはない。


 まぁ、魔力量の少ない人間であってもね……たまに気が利かないというか、言葉そのままに受け取るタイプの精霊とかが力貸すとかの場合だとね……煙草に火をつけようとして「火」って言っただけで煙草にすんなりつけばいい方だけど火だるまになった、なんて事例があった、なんて聞かされたらね……

 煙草に火をつけて、と言えば問題なさそうだけどそれでも何年かに一度の割合で煙草から火柱が上がったとかいう話を聞くからね……


 精霊は人の目に触れない存在になってしまったけれど、それでも俺たちの隣人という立場である。

 その隣人と上手くやれるかどうかは……って話だけど、なるべくうまくやっていくために魔法学だとか精霊学だとかってのが生まれたわけだ。

 とはいえ、精霊の声を聞ける相手は少ないし、精霊の話もふわっとしてる場合それらを伝えるだけでも中々に大変だし、学問としては危険度合いを減らすために学びはするけど本当に役に立つかは……っていうなんともしょっぱいものだったりする。

 それ、意味ある? って言われそうな学問ではあるが、少なくとも知らないよりは知っておいた方が自分の身の安全を確保できるかもしれないわけで。


 ま、一部の連中からは机上の空論のようなもの、と言われているのも事実なんだけれども。


 それならそんな物騒な力を使わなければいい、という一派も確かに存在はした。

 ただ、そうなると生活がとても不便な事になる。俺が住んでた前世と比べると確かにこっち、魔法抜きで暮らせってなったら結構不便なんだよ。

 水道はある。あるけどその水だって飲めるところと飲むのにはちょっと……みたいな所とでそれなりに差がある。飲むには適さない所は飲める水を例えば汲んできたりだとか、それこそ魔法で用意するしかない。

 そういった所で暮らしてる奴がある日魔法を使わず生活しよう! とか言われたとして、できると思うか?

 体力に余裕があれば水を汲みにいくのはどうにかなるだろうけど、これがちょっと怪我をしてあまり足や腕に負担をかけられない、とかだと汲める水の量だって少なくなってしまう。でも足りないのであれば往復するしかない。けどそこまでの体力はない、となればどうしたって魔法に頼る流れになるだろう。


 実際俺が故郷を出てからあちこちふらふらしてた時に、そういうとこがあったんだよな。

 で、実際どうなったかっていうとだ。

 そういう事を言えるやつは基本的に生活に不便なわけでもない環境だから言えるだけで、だったらお前らがこっちで生活してみろと争いが起きた。

 不便なところは不便なりにそれでも生活してくしかないわけだし、そもそも魔法があればそこまで不便でもない。でも魔法を使う事を封じられたら。今まで何の問題もなく生活できていたのを他人の口出しでとっても不便な状況にさせられたとなれば、住人の怒りは着火剤に火をつけるが如く。


 考え無しにそんな事を言った連中はぼっこぼこにされた挙句、魔法を使うなというのであればその怪我を魔法で治す事なんて当然しないよなぁ!? と圧をかけられ……最終的にとっても小さくなって過ごしていたっけな。


 他人の生活に不用意に口を出してはいけない、っていうやつな。

 もしくは魔法を使うなというのであれば、使わなくても生活できるだけの基盤を用意してから言うべきだった。


「むしろ異種族について調べているというよりも、素直に精霊学について学んでいるので魔力の高い種族の話を聞きたい、と言われた方が余程話が通りやすかったんじゃないか?」


 魔力の少ない種族よりも魔力の多い種族の方が確かに色んな魔法を使う機会があるし、その分精霊とのやりとりに慣れている感はある。

 それに、最初からそう言われた方が話を持ち掛けられた種族も協力しやすいんじゃないかと思うんだよなぁ。

 それこそさっきみたいにルフトに絡んでた時の事を思い返すと、余計に。

 あの場で精霊学について、と言っていればルフトも普段あまり魔法使わないんで、と一言で終わったしあそこまでイライラするような事にもならなかったはずだ。


 何ていうか、無駄に敵を増やすような事をしていないだろうか。こいつ。

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