七日目 家族揃って
俺が特訓をし始めてから数日後。日が暮れて晩飯にしようという時に父、菊次郎が帰ってきた。父さんはとても筋肉があり、農民というより格闘家に見えた。切り傷が複数あったが、幸いにも大きな怪我はなく元気な声で言った。
「今帰ったぞ!!」
「ご苦労様でした、菊次郎さん。ご飯出来てますよ!」
「おお!鈴、今日も可愛ええのぉ!腹もだいぶ大きくなって!」
そう言って父さんは母さんのお腹に頬擦りをした。母さんは照れていた。
「もぉまだ子供が起きてるでしょ!」
それを聞いた父さんは俺の方に振り向いた。
「おお!菊吉と蘭、元気だったかー?!父さんはずっとお前たちの事を思っておったぞ!それに隣村のやつにもお前たちの可愛さを伝えてきた!」
『戦の中ずっと言いふらされる子供たちの気持ちになってみろ。想像しただけで恥ずかしくなる!』
「おかえりなさい。」
「んん?元気がないなー。せっかく遊んでやろうと思っていたのに。」
『いや、元気すぎでしょ!とても戦から帰ってきた人とは思えんぞ。』
「さぁさぁ、遊ぶのもいいけど先にご飯にしましょ!」
こうして俺が菊吉となって初めて家族全員でのご飯となった。父さんは帰ってきてから口を閉じることなく永遠と話し続けている。
「菊吉、俺のいない間母さんと蘭を守ってくれてありがとう。明日からは俺が母さんの手伝いをするから、ゆっくりしてるといい。」
「わかりました。」
『やったー!明日から特訓に集中出来る!でも父さんは仕事ないのかな?』
「父さん、仕事はどうするの?」
「今は灌漑してる所だが、俺が1人居なくたって大丈夫さ!それに手伝いが終われば行くことだし。なんとかなるだろう!」
そう言って父さんは口を開け、大きな声で笑っていた。翌朝、母さんの手伝いは父さんがやると言っていたので、すぐさま家を出ようとした。
「待って!父さんが帰ってきたからって水汲みはサボっちゃだめよ!」
『母さん、そこは見逃してくれよ...。』
そう思いつつもちゃんと水を汲みに行った。