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(旧)天下一の向日葵  作者: 茶眼の竜
第二章 成り上がる向日葵
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六十七日目 土佐片岡村


菊之助(きくのすけ)殿、先程は慌てましたよ!」

「あはは、ごめんごめん」

「事前に言ってもらえれば、こちらにも言いようがあったのですが....」

「でも、助かったよ!ありがとう」


出雲(いずも)は少し照れているようだった。


「して、これからどこに向かわれるのですか?」

「殿から頂いた片岡村(かたおかむら)に行こうかと思う」

朝倉(あさくら)にあると言っていた...」

「そう、そこ。そういえば出雲はいつもどこに住んでるの?」

「某ですか?某は本山(もとやま)家に仕えている頃からの地をそのまま預かっております。いつもはそこで寝泊まりをしておりまする」

「そうか」


今更だけど、出雲は俺に仕えてるんだから本当だったら俺の土地を分け与えるべきなんだけど、今まで考えてなかったや。


「ごめんね。出雲」

「なんのことですか?」

「いや、なんでも!さ、行こうか!」

「はい!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


岡豊城(おこうじょう)から歩いて二刻程で着く場所にある土佐片岡村。殿の言っていた通り、森に囲まれた小さな村。

森というより山の谷間だな。

村の近くには少し大きめの川が流れていて、そこを除けばどことなく故郷の坂本村(さかもとむら)に似ていて居心地が良さそうだった。

村に着いた俺たちは村人から話を聞くために中心へと向かっていた。


「しかし、あんまり豊作とは言えないね」

「そうでごさいますね」


田には散乱して苗が植えられていたり、水路の水はチョロチョロとしか出ていない。それだけではなく、使われていない田や、荒れ果てた空き地が沢山あった。

うーん。これは酷い有様だな。


「よし、村人を全員集めてくれ!話が聞きたい」

「ははっ。」


少ししたら出雲が村長たる人を先頭に20人ぐらいの人を連れてきた。


「菊之助殿、連れてまいりました」

「き、菊之助様?!」


あれ、どこかで会ったことあったっけ?


「先の戦場ではありがとうございました!あれからお姿が見えませんでしたが、ご活躍されたと聞き、村の者一同歓喜に溢れておりました!」

「戦場?あ!!君たちはあの遊撃隊の!!」

「へい!そうでごさいます!!」


また会えるなんて何かの因果かな。何にせよ今の村の状態をどうにかしないと。


「あの、それで今日はなんの御用で?」

「ああ、実は殿からこの村を任されてね!今日から俺が統治させてもらうよ」

「おお、それはそれは有難い限りでございます!し、しかし、この村はこのような有様で前にも統治されていた方がいたのですが、諦めたのか、いつしか顔を出さなくなりました」


まぁこの有様だとそうなるね...。


「よし!じゃあ開拓して行こっか!!」

「ほ、本当ですか?!」

「ああ!せっかく殿から土地を頂いたんだ、有効活用しないと勿体ないでしょ!」

「菊之助様、ありがとうございます!」

「いいってことよ!って言ってもすぐ旅に出るんだけどね!」

「へ.....?」

「大丈夫!ここに出雲を残していくから!」

「き、菊之助殿?!某も旅のお供を....」

「「出雲様ぁぁ!!」」


出雲の足に縋り付く村人達。出雲は人気者だなぁ。


「お、お主たち?!」

「出雲様!どうか、どうかここにお残り下さい!」

「どうか、オラたちと...!」


出雲、村人にそこまで言われたら、引き下がったらダメだよ。


「菊之助殿、何をニコニコしているのですか?!」

「ま、そう言うことだ!頑張ってくれたまえ!」

「き、菊之助殿ぉぉぉ!!」

「大丈夫!方策は伝えるから!」

「「方策....?」」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おぇぇぇぇぇぇ」

「お、おい、弥三郎(やさぶろう)大丈夫か?!」

「船と言うものはこんなにも揺れるのか......うぷっ」


今、俺と弥三郎は堺に行くため瀬戸内を渡っている。船が出ているのが讃岐国からだったので三好領に入らなければならなかったが、特に何事もなく通ることが出来た。

三好家は万年ピリピリしているイメージだったが、西の方までは手を回していないようだった。まぁ東で随分暴れて居るみたいだしな。


「ここは瀬戸内だからまだ揺れていない方だよ」

「こ、これでか...」

「ほら水だよ」

「あ、ああ、すまな..おぇぇぇえ」

「おい!待て!俺の竹筒の中に吐くなぁぁぁ!!!」

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